現行選挙制度の“現実”を知ると、あなたも投票に行きたくなる

現行選挙制度の“現実”を知ると、あなたも投票に行きたくなる
現行選挙制度の“現実”を知ると、あなたも投票に行きたくなる

Contents

序章|民主主義は簡単に「誤作動」する

私たちは、「投票率が低いから政治が悪くなる」とよく言われます。けれど本当にそうでしょうか?
問題は“投票率”そのものではなく、どのような人達が投票しているかという投票者の「構造の偏り」にあります。

実際には、組織票や動員票を活用したノイジーマイノリティー(声の大きな少数派)が、投票率の低さを逆手にとって、投票者全体の中での相対的比率を引き上げ、政治を恣意的に動かしているのです。そして、彼らの民意にそぐわないアジェンダ設定や法案採決によって割を食っているのが、眼前の生活に直向きで、穏健で平和を愛するサイレントマジョリティー(静かな多数派)です。

本記事では、民主主義の“誤作動”の正体を明らかにし、それを修復する最も穏健で効果的な方法──すなわち「投票による是正」──について提案します。


第1章|現行選挙制度は「全有権者が投票する」ことを前提に設計されている

現行の選挙制度は、建前上「全ての有権者が投票すること」を前提に制度設計されています。
だからこそ「多数決」が民主主義の核として機能し、民意の集約として正統性が認められるわけです。

ところが現実の投票率は50%を下回ることも珍しくありません。つまり、制度設計上の理想と実際の参加率との間に、決定的な乖離があるのです。
この構造的ギャップが、現代の民主主義の“誤作動”を生み出す温床となっています。


第2章|ノイジーマイノリティーが制度を乗っ取る仕組み

ノイジーマイノリティーとは、特定の思想を持った集団、宗教団体、業界団体、労働組合、政治運動などに見られる「組織化された積極的少数派」のことです。

彼らは全有権者の中では少数であっても、結束と動員力を武器に選挙戦において実際以上に大きな政治的影響力を持ってしまいます。こうした集団が組織票によって候補者を擁立し、あるいは議員を支援することで、特定の利益を代弁する政策を押し通すことができるのです。

本来であれば社会全体で熟議されるべき議題が、彼らのアジェンダによって先回り的に決められ、穏健な市民の声は議会に届かないまま葬られていく。この構造が「民主主義の制度内ハイジャック」とも言える状況を生んでいます。


第3章|穏健なサイレントマジョリティーはなぜ沈黙するのか

多くの市民は、対立を好まず、過激な主張や無益な論争を避けます。穏健さゆえに、SNS上での論争や過激な言葉の応酬を避け、静かに日常を守ろうとする──それがサイレントマジョリティーの特徴です。

しかし、ノイジーマイノリティーの主張では、沈黙はしばしば「同意」とみなされます。特に選挙においては、投票しないという沈黙が、積極的に参加する少数派を相対的に強くしてしまうという構造的な罠があります。

穏健で良識ある多数派が声を発さない限り、政治は声の大きい一部の者たちに占有されてしまうのです。


第4章|投票率の低さがノイジーマイノリティーを過大評価させる

投票率が低ければ低いほど、少数派の票の「重み」は指数的に増していきます。なぜなら、投票率の低さとは無関係に、彼らは常に積極的に果敢に投票行動をとるからです。

たとえば投票率が30%の選挙で、ある団体が3%の支持を確保すれば、それは「有権者全体の3%」でしかなくても、「投票者全体の10%」に相当します。しかも、小選挙区制のような勝者総取り制度のもとでは、それだけで当選に至る可能性すらあるのです。

このようにして、ノイジーマイノリティーは現実の支持率をはるかに上回る議席数を獲得し、政策決定に実際の存在比率以上の不釣り合いな影響力を持つことになります。


第5章|ノイジーマイノリティーの議席数を、現実の支持比に見合った水準に戻すために

ノイジーマイノリティーによる過大な政治的影響力は、社会的にも放置できない深刻な問題です。

彼らは積極的な政治参加によって、本来サイレントマジョリティーが享受できていたはずの利益を削り取り、自分たちの利益のコストをサイレントマジョリティーに負担させてきました。
その結果、税制、社会保障、教育、労働環境などのあらゆる領域で、穏健な多数派の利益が後回しにされてきたのです。最近では、LGBT問題や家族内の姓の制度にまで、過剰な政治的影響力が及ぶようになっています。

投票率を上げることは、現行の選挙制度の前提である全有権者による民意の汲み上げに近づく行為であり、奪われた利益を取り戻し、押し付けられた負担を返上する最も穏健で平和的な手段です。

ノイジーマイノリティーには、マイノリティーにふさわしい議席数と政治力でいてもらわねばなりません。そのために必要なのは、穏やかな人々が静かに投票所へ向かうことなのです。


第6章|制度改革の可能性──ランダム抽出型・匿名義務投票制

私自身は、現行制度の根本的な問題を是正する制度として、「無作為に抽出された有権者1000人ほどによる匿名の義務投票制度」を提案しています。
これは統計学的代表性と、裁判員制度の実績を土台にすれば十分に実現可能な制度です。

ただしこの制度改革は中長期的なテーマであり、当面の対処としては、やはり現制度下においてサイレントマジョリティーが投票率を引き上げることが急務です。

※ 詳細はこちらの記事にて詳述 →
👉 『ダメな政治は国民のせいじゃない!選挙制度のせいだ!』をご参照ください。


終章|静かな良識が民主主義を修復する

読者皆さんや私、理屈コネ太郎のようなサイレントマジョリティーは争わない。他者を不用意に否定しない。煽らない。断定しない。ただただ平和的に生活するのが好きです。
それが強みである一方で、投票しないかぎり、現行制度ではその良識を“存在しないもの”として扱われてしまいます。

だからこそ、「投票に行く」という静かな行動が、民主主義にとって本来民意があるべき均衡に近づくことにつながるのです。
ノイジーマイノリティーの声が相対的に大きいのは、静かな人々がそれを許容していると彼らが誤解しているから。
ならば、静かに票を投じて、過大は声をマイノリティー相応に近づけましょう。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です