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はじめに|本記事のスタンスと筆者の経験
本記事では、28フィートのモーターボート(以下ボート)と、31フィートのヨット(以下ヨット)の両方を運用する筆者“理屈コネ太郎”が、実体験を通して感じた両者の違いや、それぞれの魅力、そして初心者が最初の船にどちらを選ぶべきかについて私見を述べます。(ヨットやボートなどのテクニカルな意味については『船の種類と呼び方|ボートとヨットのテクニカルな意味』に詳述しています。)
本ページを記載時点(2023年12月)で、理屈コネ太郎の経験値を述べると、ボート歴は1年でエンジンアワーでは約160時間、ヨットは2023年5月に乗り始め、ソロでメインとジブのほかにジェネカーを何とか上げ下げして、気持ちの良い風なら物理的に可能な角度でセイリングできる程度。
この程度の経験から得られるのは、じつにちっぽけな見識である。その点をご納得のうえ以下読み進めていただきたい。また、ボートやヨットの用語や名称に関する実践的なガイドをココとココに掲載しているので、クリックして参考にして頂ければ幸甚である。
ボートとヨットの設計思想はまったく異なる
ボートは移動した先で何かをするための船で、ヨットはセイリングという行為を実践するための船。そして、このふたつの良いところ取りは、35Ft未満サイズの艇体では極めて困難であり、そういう船は基本的に存在しないと思っていただきたい。故に、どちらかを選ぶ必要があるわけだ。
筆者は2艇持ちという選択をした
2艇を並べて係留する生活
理屈コネ太郎は、短い健康寿命を鑑みて、同時にボートとヨットの2艇持ちを選んだ。ボートはボートで、ヨットはヨットで、割り切って、振り切って楽しむのが吉だ…と考えたから。
因みに、幸運なことにボートとヨットはマリーナに2艇並べて係留している。

ボートの特徴と魅力
右側のボートはホンダ250馬力船外機の2機掛けなので、割と速い船だと思う。海況が整っていれば35ノットくらいすぐに出る。
陸電つなげばエアコンばバッチリ効くし、オフグリッドでも日差しや換気を工夫すればキャビンのなかはほぼ快適。
GPSもレーダーもソナーもオートパイロットも装着しているし、脚を伸ばして横になれる部屋が2つ、シャワー付きの個室トイレもある。
ボートの操縦行為そのものは、じつはあまり楽しくない。特にオートパイロットを使った場合、ややもすれば退屈ですらある。
ヨットの特徴と奥深さ
左側のヨット(ヤマハフェスタ31)は一方、初進水から20年は経過した中古艇で、陸電で稼働させるような機械は一切積んでいない。積んでいるエンジンはヤンマーのディーゼル、たしか9馬力である。
故に機走は4~5ノット程度のノロノロ移動である。エンジン出力が低いと、セイリングを愉しめる海域まで移動するのに時間がかかるのが、じれったくはある。
船体は白く、乾舷は低く、ドッグハウスも緩く盛り上がっている程度。ボートの乾舷がヨットのドッグハウスとちょうど同じくらいの高さである。
艇内はがらんどうな空間で薄暗く質実一徹、キラキラした雰囲気の演出はまるでない。
両者の美しさと安心感は対照的
ボートで1日遊んで寄港してからヨットを見ると、その無駄を切り削がれたシンプルな姿に惚れ惚れするほどの美しさとカッコよさに魅了される。まるで、低く構えたスポーツカーを見たときのような気分だ。
逆に、ヨットで悪戦苦闘して体力消耗して寄港すると、隣に係留してある我がボートが醸し出す力強さに安堵感を感じる。それは、ちょうど仕事に疲れた体を引きづってマイホームに辿り着いたときのよう。
そう、ボートがあるからヨットの素晴らしさが、ヨットがあるからボートの素晴らしさが、互いを補完するように在るのが理屈コネ太郎にはわかるのだ。
完璧な艇を夢見て観察と妄想を続ける日々
理屈コネ太郎は時間があればマリーナにある全ての艇の、外から観察できるありとあらゆる箇所を凝視して研究を続けている。特にハルの形状、エンジンの積載位置、ロープの操作系などをガン見している。
しかし、シングルハンド前提で、ボートとヨットの両方の良いとこ取りの艇体は、既存の技術・素材・様式では極めて不可能に近いと思い至り、妄想から覚めるのが毎回の常。
両者の本質的な違いを改めて確認する
ボートとは
ボートという乗り物はエンジンと電子機器を駆使して目的地に楽に到達して、そこで何かをするための手段と捉えると実態と近いと思う。
ヨットとは
ヨットはロープ類の操作を通してセイルを上げたり下ろしたり、また舵を操作したりして、所与の条件下で少しでも風から推力を得ようとするゲームを楽しむ乗り物だ。小さなディンギーと呼ばれるヨットはエンジンを持たないが、普通のヨットは小さいがエンジンを持っているので、セイラーが集中力を切らしてもエンジンで帰って来られる。
ヨットで目的地に行けるか?という話
理屈コネ太郎には、ヨットで目的地に行こうとは到底考えられない。そもそも目的地に着く自信がない。もちろん、エンジン使って機走を主に走れば、やたら時間はかかるが目的地に到着できるだろう。
たとえてみれば、クルマで渋滞路を回避しまくって快適に走れる道ばかりを選んでいても、目的地にはつかないのと同じである。
大洋横断という極限状況での違い
ヨットなら絶海で荒れ狂う海況でも、水中の重たいキールのおかげで海面の多様な曲面に船艇が接線を保ちつつ揺蕩って危機をやり過ごす事もできようが、ボートでは転覆してしまうだろう。
操船特性と設計思想の違い
ボートではバウが凌波することが求められるが、ヨットはバウが波を切り裂いて水中に突入する。
ボートでは「デッドライズ」という数値が意味を持つが、ヨットでは話題にならない。
ボートはバウ中心気味に旋回し、ヨットはキール付近を中心に回頭する。
ボートは風に流されやすいが、ヨットはセイルをたたんだ状態では風に強い。
ボートはキャビン内から操船可能だが、ヨットは基本的にキャビンの外で操船する。
初心者へのアドバイス
ボートを選ぶべき人
釣りとか、上陸とか、パーティーとか、なにか目的があるのなら、手段としてのボートをおススメする。
最初のマイボートの選び方については『初めてのマイボートの選び方|全体的な事柄』と『初めてのボート選び|船外機・船内機・船内外機の違いとメリット比較ガイド』に、購入場所についてはついては『初めてのマイボートはどこで買う?失敗しない選び方』に詳述しています。
ヨットを選ぶべき人
セイリングという連綿と継続発展してきた至宝の技術体系と手技を教養として勉強してみたいという人にはもちろんヨットがおススメ。
気持ちよく帆走できるときは本当に気持ちいいし、可能性として接続している海ならばどこでも行く事が出来る。
また最初のマイヨットの選び方と買い方については『独学セイラーの初マイヨット選び|サイズと扱いやすさのバランス』に詳述しています。
その他の選択肢と現実的な妥協
ウインドサーフィンという選択
ただ素朴にセイリングという体験をしたいなら、ヨットよりもウインドサーフィンが手軽で良いかも。ウインドサーフィンが出来る人なら、ヨットの理屈や操作も簡単に習得できるだろう。ただし、ウインドサーフィンはエンジンがないので、ライダーの集中力が切れた場合、風に流されて帰ってこられないリスクがあるので注意が必要。
モーターセイラーという選択について
よくわからないけど、とにかく船が欲しいという人には、モーターセイラーを選ぶよりも、サイズを2つくらい落としてボートとヨットの2艇持ちをおススメする。
2艇を隣同士で係留すれば、バース2艇分の面積を占有できてパーティーにも対応可能。
2艇持ちの利点と実情
目的地への移動がしたいならボートに乗って、セイリングの腕を磨きたいならヨットに乗る。2艇持ちの場合、係留代が2倍かかるが、それを補ってあまりあるメリットがある。
モーターセイラーの独自性と課題
ボートとヨットの両方の良いところ取りを目指した艇は、面白くないかといえばそんなことはない。
ただし、モーターセイラーはサイズが大きくなりがちで、出航にクルーが必要なため、出航率は下がりやすい。
おわりに|違いを知って選択を
大変な長文になってしまったが、ボートとヨットの違いがお分かりいただけただろうか。
もし本頁を読んで、皆様の御役に少しでも立てたのなら幸甚これに勝るものはない。
ただし、繰り返すが、本頁で記載された内容は理屈コネ太郎の管見内での独断と偏見である旨はご了解いただきたい。
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