はじめに|3つの設定が写真に与える影響
写真の基本用語である絞り、シャッター速度、ISOについては、次の記事で解説しました。
▶ 初心者向け一眼カメラ用語解説|絞り・シャッター速度・ISOを一気に理解
本記事では、これらの用語の関係性を考えます。
中心となるのは、次の3つの段階です。
- 撮影者が設定する条件
- その条件によって決まる露光量
- 露光量と感度によって得られる画像
これらを因果関係として整理すると、なぜ異なる設定でも同じ明るさの写真が撮れるのかが理解できます。
本記事では、被写体の明るさやレンズの光の透過率など、絞り値とシャッター速度以外の光学条件を一定として考えます。
1.露光量は絞り値とシャッター速度によって決まる
最初に結論を示します。
被写体の明るさなどの条件が一定であるとき、露光量は、絞り値の逆数の二乗と露光時間の積に比例します。
数式では次のように表せます。
露光量 ∝ (1 / F値)² × 露光時間
この式には、ISO感度が含まれていません。
ISOは、一定の明るさの画像を得るために必要な露光量と関係する指標であり、露光量そのものを決定する要素とは役割が異なります。
では、なぜこの関係式になるのでしょうか。
2.露光量とは何か
露光量とは、フィルムや撮像素子の単位面積あたりに与えられた光の積算量です。
光を受け取る面の明るさと、その光を受け取る時間によって決まります。
光学的には、次のように表せます。
露光量 = 撮像面の照度 × 露光時間
照度とは、単位面積あたりに入射する光の強さを表す量です。
照度が一定であれば、露光時間が2倍になると露光量も2倍になります。
同様に、露光時間が一定であれば、撮像面の照度が2倍になると露光量も2倍になります。
この関係が、露光量を理解する出発点です。
3.絞り値と光の量の関係
F値とは何か
F値は、次の式で定義されます。
F値 = レンズの焦点距離 ÷ 入射瞳径
入射瞳径とは、レンズを正面から見たときの絞りの開口部の見かけの直径です。
つまり、F値は焦点距離に対して光の通り道がどれだけ大きいかを表しています。
ここで、F値の大小と光の量が逆になる理由が分かります。
F値が小さいほど、焦点距離に対して光の通り道が大きくなり、撮像面に届く光が増えます。
なぜ逆数の二乗になるのか
光は、絞りの開口部を通過します。
開口部の面積は、円に近い形として考えると、その直径の二乗に比例します。
一方、F値は焦点距離を入射瞳径で割った数値です。
この関係から、被写体の明るさなどの条件が同じであれば、撮像面の照度はF値の逆数の二乗にほぼ比例します。
撮像面の照度 ∝ (1 / F値)²
したがって、F値が2倍になると、撮像面の照度は約1/4になります。
逆にF値が半分になると、照度は約4倍になります。
これが「F値の逆数の二乗」が現れる理由です。
4.F値が√2倍刻みになる理由
カメラのF値には、次のような数値が並んでいます。
F1.4、F2、F2.8、F4、F5.6、F8、F11、F16
一見すると不規則な数列ですが、これには明確な理由があります。
絞りによって撮像面の照度を半分にするには、F値を√2倍にすればよいからです。
例えば、F4からF5.6に変えると、F値は約1.4倍になります。
その二乗は約2です。
したがって、撮像面の照度は約半分になります。
この変化を写真では**1段(1ストップ)**と呼びます。
F値が√2倍刻みになっているのは、光の量を段階的に半分、あるいは2倍にするためです。
5.シャッター速度と露光量の関係
シャッター速度は、光を受け取る時間を決めます。
撮像面の照度が一定であれば、露光量は露光時間に比例します。
例えば、
- 1/250秒から1/125秒に変更すると、露光量は2倍
- 1/125秒から1/250秒に変更すると、露光量は1/2
になります。
こちらも露光量を2倍、あるいは半分にする変化が1段に相当します。
つまり、絞りは撮像面に届く光の強さを、シャッター速度はその光を受け取る時間を調整するという関係です。
6.異なる設定でも同じ露光量になる理由
ここまでで、露光量を決める二つの要素が分かりました。
絞りを1段絞れば、撮像面の照度は半分になります。
一方、シャッター速度を1段遅くすれば、露光時間は2倍になります。
両者を組み合わせれば、露光量をほぼ一定に保つことができます。
例えば、次の組み合わせです。
| F値 | シャッター速度 | 相対露光量 |
|---|---|---|
| F2.8 | 1/250秒 | 0.000510 |
| F4 | 1/125秒 | 0.000500 |
| F5.6 | 1/60秒 | 0.000531 |
| F8 | 1/30秒 | 0.000521 |
| F11 | 1/15秒 | 0.000551 |
相対露光量は、各設定について「1 / F値² × 露光時間」を計算した値です。
実際の数値には多少の差があります。これはF値やシャッター速度に実用上の丸めがあるためです。
これらは、おおむね同じ露光量を与える組み合わせです。
ここに、写真の設定に自由度が生まれる理由があります。
露光量を保ったまま絞りを変えたり、シャッター速度を変えたりできるのです。
ただし、絞りは被写界深度にも、シャッター速度は被写体の動きの写り方にも影響します。
同じ露光量であっても、写真としての表現は変わります。
7.ISO感度はどこに位置づくのか
ISO感度は、露光量と画像の明るさを結びつける指標です。
感度が高いほど、一定の明るさの画像を得るために必要な露光量は少なくなります。
フィルムでは、感光材料の特性によって感度が決まります。
デジタルカメラでは、撮像素子から得られた信号の増幅や画像出力の調整によって、ISO設定が機能します。
例えば、デジタルカメラでF値とシャッター速度を固定し、ISO100からISO200へ変更すると、通常、記録される画像は明るくなります。
露光量を一定にしたまま、画像の明るさを変えられるわけです。
反対に、ISOを上げることで、同程度の明るさの画像を、より短い露光時間や大きなF値で撮影することもできます。
ここでは、次の二つを区別することが重要です。
- 露光量:撮像面に与えられる光の積算量
- ISO感度:一定の明るさの画像を得るために必要な露光量に関係する指標
この区別によって、露光量の式にISOが含まれない理由が明確になります。
8.露出と適正露出
ここで「露出」という用語を整理します。
写真における露出とは、フィルムや撮像素子に光を当てること、あるいは光の量や撮影条件を表す用語です。
日常的な撮影では、絞り・シャッター速度・ISOの組み合わせを含めて「露出を設定する」と表現することもあります。
一方、適正露出とは、撮影目的に照らして適切と判断される露出を意味します。
例えば、逆光で人物の顔を明るく写したい場合と、夕景の暗さを生かしたい場合では、望ましい明るさが異なります。
撮影者が何を表現したいかによって、適切な露出は変わります。
したがって、露光量を求める物理的な計算と、適正露出を選ぶ写真表現上の判断は、異なる段階に位置づけられます。
9.まとめ|写真の明るさを決める因果関係
ここまでの関係を、改めて整理します。
第1段階:撮影条件
絞り値とシャッター速度を設定します。
第2段階:露光量
被写体の明るさなどの条件が一定であれば、露光量は次の式に従います。
露光量 ∝ (1 / F値)² × 露光時間
第3段階:画像の明るさ
得られた露光量に対して、フィルムの感度やデジタルカメラのISO設定、現像・画像処理などが関わり、画像の明るさが決まります。
第4段階:適正露出の判断
出来上がる画像の明るさを、被写体や撮影意図に照らして判断します。
おわりに|写真を設定の暗記から因果の理解へ
写真の設定には、多くの数値が登場します。
しかし、数値同士の関係は、ここまで見てきたように単純な物理法則で説明できます。
絞りが光の強さを調整し、シャッター速度が時間を決め、その積によって露光量が決まります。
感度は露光量と画像の明るさを結びつけ、撮影者は得られる画像を意図に照らして評価します。
この構造が理解できれば、撮影設定を個別に暗記する必要は大きく減ります。
写真の設定を、一つの因果関係として考えられるようになるからです。
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