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はじめに
「叱責(しっせき)」という言葉を、あなたはどのように捉えていますか?
辞書的には「過ちや失敗を強く非難すること」とされていますが、実際の職場で叱責が行われると、その影響は単なる言葉以上に大きくなります。
私は産業医として、数多くの相談現場に立ち会ってきました。そのなかで実感するのは、叱責は「指導」とは異なり、教育的な効果はほとんどなく、むしろ心理的な負担や職場環境の悪化につながるということです。
本記事では、叱責の定義から、指導との違い、職場での悪影響、そして代わりにどのような対応が必要かを、経験と現場感を交えて詳しく解説します。
👉関連記事:叱責と指導の違いとは?|怒りと未熟さが生む職場の危機
叱責の意味とは?叱る・叱咤との違い
まずは言葉の定義を整理しましょう。
叱責(しっせき)
相手の過ちや失敗を、怒りや不満を含めて強く非難すること。教育的というより、感情的な響きが強い。
例:会議中に「なぜこんな初歩的なミスをするんだ!」と大声で責める。叱る
注意や助言のニュアンスを含む。必ずしも怒鳴る必要はなく、相手の成長を願って行われることが多い。
例:「次からは報告をもう少し早めにしてくれると助かるよ。」叱咤(しった)
激しく叱りながら励ます。いわゆる「叱咤激励」で、鼓舞する意味合いが含まれる。
例:「もっとできるはずだ!諦めるな!」
このように、叱責=感情的非難、叱る=助言的注意、叱咤=励ましと整理できます。
👉関連記事:叱責とパワハラの心理|傲りと侮りをメタ認知で修正する
なぜ叱責は職場で問題になるのか?
産業医として感じるのは、叱責は「怒りの表現」であって「教育の方法」ではない、という点です。
教育効果が低い
叱責された人は「自分の至らなさ」を学ぶよりも、「怒られたショック」「萎縮感」に支配されます。その結果、次の行動が改善につながることは少なく、「どうやって怒られないか」に意識が向いてしまいます。
心理的安全性が損なわれる
「ミスを報告したら怒られる」と感じると、職場のホウレンソウ(報告・連絡・相談)は途絶えます。トラブルの早期発見が遅れ、組織全体のリスクはむしろ高まります。
人材の流出を招く
優秀な人材ほど、転職市場での選択肢を持っています。叱責を繰り返す職場では、意欲ある人材が真っ先に去り、「残った人だけでやりくりする組織」になってしまいます。
👉関連記事:叱責が人材を逃がす|育成と定着のマネジメント戦略
叱責と指導の違いをチェックする
「これは叱責なのか?それとも指導なのか?」。実際の現場では線引きが曖昧になることが少なくありません。
外形的に見分けるチェックリスト
声のトーンが大きく荒い → 叱責
改善点に焦点を当てて冷静に話す → 指導
相手が委縮し黙り込む → 叱責
相手が「やってみよう」と前向きになる → 指導
長時間ネチネチと続く → 叱責
短時間で具体的に終える → 指導
つまり、叱責は「する側の感情発散」、**指導は「される側の成長支援」**といえます。
👉関連記事:職場で叱責がNGな3つの理由|産業医の現場知
叱責が生まれる背景
では、なぜ叱責は起きるのでしょうか?私の経験では、以下の背景が多く見られます。
防衛反応
上司の「失望」「焦り」「恐れ」「不安」が言語化されず、怒りとして表出している。職場の構造的問題
小さなミスが大問題につながるプレッシャー
上位者の感情を下に押しつける文化
「黙って従え」が根強い縦社会
未熟な指導者の心理
自分の怒りを「正義」だと誤解し、叱責を本気の指導と錯覚してしまう。
👉関連記事:怒る上司の心理とは?|叱責の裏にある未熟さと防衛反応
代わりに必要なのは「真の指導」
叱責は職場に悪影響をもたらすだけです。代わりに必要なのは、改善を促すための建設的な指導です。
真の指導のポイント
具体的に伝える:「次回からは報告を15時までに出してほしい」
短く端的に:長時間の説教ではなく、要点を整理して伝える
仕組み改善に目を向ける:「報告が遅れやすい流れを一緒に見直そう」
フォローを忘れない:「前回お願いした件、今回はうまくできていたね」
このような指導が、組織の成長と人材の定着につながります。
👉関連記事:叱責と指導の違いとは?|怒りと未熟さが生む職場の危機
まとめ|叱責は指導ではない
叱責=感情的な非難、教育効果はほぼゼロ
指導=相手を成長させるための改善提案
叱責が続く職場は心理的安全性を失い、人材が流出する
もしあなたが「叱責される側」なら、怒りの背景を読むことで自分を守ることができます。
もしあなたが「叱責する側」なら、怒りを抑えて指導に変えることが、組織を強くする第一歩です。
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筆者紹介は『理屈コネ太郎|35歳で医者になり定年後は趣味と学びに邁進中』です。