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職場に“自然に馴染む”ことは、求められることとは違う
同じ職場に長く在籍していると、自分の立ち位置や振る舞い方は自然に身につき、日々の業務もそつなくこなせるようになります。
しかし、それは必ずしも「職場に求められている人材」であることを意味しません。
『理屈コネ太郎』は、職場において真に求められる人材とは、次の2点に集約されると考えています。
① 組織に貢献すること
② 職場の雰囲気を和ませること
この2点を欠いた人材は、どれだけ業務に慣れていようとも、もはや“求められている”とは言えないのです。この点についての詳細は当サイト内の記事『職場に貢献して雰囲気を和ませる』に纏めてあります。
昔は“結果”さえ出せば認められた
平成の半ば頃までは、ハラスメントという概念が社会に浸透していませんでした。多少傍若無人であっても、成果を上げてさえいれば容認された時代が確かに存在しました。
たとえば、売上優秀な営業職員が、経理や総務の職員に対して「あの無駄飯食いの連中」や「給与泥棒」といった暴言を吐くことも、特に咎められることはありませんでした。
また、成果を出さず、周囲との関係を悪化させる職員がいても、かつては「あと数年で定年だから」と、同僚たちが我慢し、組織も見て見ぬふりをするという風潮があったのです。
どうせ退職すれば関係が終わる――そうした割り切りが、問題の長期化を許容していました。
今後は“居続ける人”の時代になる
しかし今後は違います。定年が55歳から60歳へ、さらに65歳へと引き上げられ、70歳までの雇用機会提供が努力義務とされた今、問題ある職員も長期間職場に留まり続ける時代になりました。
高齢者雇用安定法がもたらした構造変化
65歳までの雇用機会確保は【義務】
70歳までの雇用機会確保は【努力義務】(2021年4月~)
背景には、少子高齢化と社会保障制度維持という国策があります。就業年数を延長せざるを得ないという現実は、財政と人口動態の両面から見ても明らかです。
少ない人数で国の生産力を維持・向上させるには、働き続ける年齢層を広げるしかない――そのシンプルな発想に基づく政策です。
「変化しない人」が長く居続けることの危うさ
人間は長期間、同じ職場や環境に属していると、思考や行動のパターンが固定化されていきます。特に60代以降は、30~50代のように柔軟でイノベイティブな行動を取ることが難しくなっていくのが現実です。
要するに、人は長く同じ境遇にいると、劣化するのです。やがて、役に立たなくなるのです。
さらに悪いことに、そうした人材の中には、同僚に不快感を与えたり、若手に対してハラスメントまがいの行為をしたりする人もいます。
「昔の自分」を引きずって働き続けることの問題
「昔の自分」を引きずったまま定年を迎えると、変化に取り残されたまま、法の定めに従って“形式的に”雇用を継続されることになります。
つまり、会社にとって必要とされていないにもかかわらず、制度によって“残される”存在になってしまうのです。
22歳の新入社員と、制度によって継続雇用された60代とが、同じ価値観や評価軸で働けるはずがありません。
このギャップこそが、職場の摩擦と生産性低下の温床になっているのです。
定年後を見据えたリカレント教育の必要性
では、どうすれば求められる人材であり続けられるのか。
答えは、**定年前からの「リカレント教育」および「ブラッシュアップ教育」**にあります。
リカレント教育とは?
社会人が職業生活の途中で必要な学び直しを行い、時代や技術の変化に適応するための教育です。
特に50代からこの取り組みを始めることが望ましいでしょう。
何を学ぶべきか?
現代の収益構造とマネジメント構造
新しい業務ツールや技術(Web会議、クラウドツール等)
若手との建設的なコミュニケーション技法
ハラスメント防止に関する産業心理学的知識
自己中心的な業務分担・高圧的な態度を是正する視点
雰囲気を悪化させる“古株”への対応
職場の雰囲気を悪化させる職員――
大声で後輩を呼びつけたり、新技術に適応せず、業務を若手に丸投げしたり、叱責によって部下を退職に追い込んだりする“雑な古株職員”――
これらの存在を放置しては、若い人材が育ちません。
こうした職員にこそ、リカレント教育を通じて、自分の行動が職場にとって害悪であることを客観的に認識させる必要があります。
評価制度の透明化と第三者性が重要
では、誰がそうした職員を見極め、教育対象とするのでしょうか?
ここで必要なのは、科学的かつ客観性の高い評価方法です。
評価指標を明示すること
外部機関や第三者による査定を行うこと
フィードバックによる“自覚”を促すこと
そのうえでリカレント教育を実施すれば、多くの職員が「求められていない人材」であることに気づき、意識を改める契機となります。
「必要だから再雇用された人材」に変わるために
定年後の再雇用には、次の2パターンがあります。
制度に守られて形式的に雇われているだけの人材
能力・人間性の両面から必要とされて再雇用された人材
当然、後者には処遇の差を設けるべきです。
客観的合理性が説明できるなら、給与・賞与・労働条件の優遇も正当化されます。
なぜなら、「同一労働同一賃金」は、**“同じ労働ができない者にまで同じ賃金を払うべきではない”**という意味でもあるからです。
もう一度、自分に問いかけてほしい
ここまでお読みいただいたあなたに、改めて問い直します。
あなたは、現在、職場に必要とされている人材ですか?
これからも、求められる人材として成長し続けていますか?
人間は必ず年齢を重ね、心身ともに衰えます。
しかし、日々の努力と心構え次第では、高齢になっても十分に「求められる人材」でいられます。
そのためのリカレント教育、評価、そして自己認識――
今こそ、自らの「人材価値の更新」に真剣に取り組む時代なのです。