職場で叱責がNGな3つの理由|産業医の現場知

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はじめに

「叱責は教育の一環」「厳しく怒られることで人は伸びる」──そう考える管理職は、いまだに少なくありません。
しかし私は産業医として多くの職場を見てきましたが、叱責を日常的に行う組織が健全に発展することはほとんどありません。

本記事では、職場で叱責がNGな3つの理由を整理し、なぜ叱責が組織の成長を妨げるのかを解説します。これはあくまで個人的な経験に基づくものですが、多くの現場に共通する課題です。

👉関連記事:叱責と指導の違いとは?|怒りと未熟さが生む職場の危機


1. 怒りの感情が目立ちすぎる

叱責は「指導」ではなく、上司の怒りの感情表現になりやすい行為です。

怒る側の心理

叱責をする人は、その瞬間に怒りを発散し、スッキリするかもしれません。
しかし、叱責された側は「怒られた」という記憶しか残らず、改善点を学ぶ余地がほとんどなくなるのです。

職場への悪影響

  • 周囲の人も委縮し、自由に意見を言えなくなる

  • チーム全体の雰囲気が悪化する

  • 怒りが連鎖し、部下からさらに下へと感情が流れる

つまり、叱責は「教育」ではなく「恐怖の伝播装置」となり、組織全体の活力を奪います。


2. 教育効果が極めて低い

叱責の目的は「ミスの再発防止」や「成長の促進」であるはずです。ところが、実際には逆効果になるケースが圧倒的に多いのです。

叱責された人の反応

  • 強いストレスで頭が真っ白になる

  • 反論や説明の余地がなく、萎縮する

  • 「次はどうすればよいか」ではなく「次は怒られないように隠そう」と考えてしまう

結果として、問題点を共有しなくなり、隠蔽や回避行動が増えていきます。

教育に必要なのは「安全な対話」

本来、教育的な指導には以下が必要です。

  • 具体的な改善点を提示すること

  • 質問や意見を受け付ける余地を持つこと

  • 繰り返し確認すること

叱責はこれらをすべて阻害し、教育効果をほぼゼロにしてしまいます。

👉関連記事:叱責が人材を逃がす|育成と定着のマネジメント戦略


3. 職場における怒りの表現は不適切

職場は公的な場であり、組織全体で成果を出すために協力する場です。その中で「怒り」をむき出しにする行為は、信頼関係を破壊する毒素になります。

公の場での叱責がもたらすもの

  • 人前で責められた部下は、屈辱感を抱きやすい

  • 同僚は「次は自分かもしれない」と不安になる

  • 上司への信頼は急速に低下する

怒りを抑えることは、管理職としての基本的な責任です。怒りに任せて叱責を繰り返す人は、**チームのリーダーではなく「恐怖の源泉」**になってしまいます。


成長しない組織の特徴

叱責を許容する職場では、組織全体が停滞します。特に以下のようなケースは要注意です。

  • 入職年数だけで叱責を正当化する文化
    「俺も昔は怒られたから、お前も当然だ」という発想。

  • 実務能力の低い人が叱責で威厳を保とうとする
    スキル不足を「声の大きさ」で隠す行動。

こうした風土では、優秀な人材が早々に離職し、残るのは言われたことだけをこなす人材になります。長期的には、組織の競争力を大きく損ないます。


稀なケースでの例外

叱責が有効に働くケースは全くないわけではありません。
それは、上司と部下の間に深い信頼関係がある場合に限られます。

  • 普段から部下を気にかけている

  • 日常的に建設的な指導をしている

  • 怒りが「本気の叱咤激励」として伝わる関係性がある

しかし、これは非常に稀です。一般的な職場で日常的に叱責を行うことは、やはり不適切と言えます。


まとめ

  • 叱責は「怒りの発散」に過ぎず、職場の雰囲気を悪化させる

  • 教育効果はほとんどなく、むしろ問題を隠す行動を助長する

  • 公の場で怒りを表現することは、信頼関係を壊し、チームを停滞させる

  • 組織が成長するためには、叱責ではなく建設的な対話が必要

「厳しく怒ることで人は伸びる」という考え方は、時代遅れです。これからの職場に必要なのは、心理的安全性を確保し、成長を促す対話型の指導です。

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筆者紹介は『理屈コネ太郎|35歳で医者になり定年後は趣味と学びに邁進中』です。

 

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