初めてのボート選び|モノハルとカタマランのメリットとデメリット

Contents

はじめに:カタマラン(双胴船)も視野に入れよう

本来、船(ボートもヨットも)選びにおいて最初に検討すべきなのが、「船体の構造」です。何故なら、船体の構造は、購入後にどんなに改造やカスタムを施してもどうにもならない領域だからです。

とはいえ、なかなか初めてのマイボート検討段階では艇体に関する情報も十分とは言えないので、今回は船の根本である船体の形状について説明します。

船には大きく分けて、**モノハル(単胴艇)とマルチハルの2つの形式があり、後者のは圧倒的にカタマラン(双胴船)が殆どです。トリマランもあり得ますが、日本ではまず見かけません。この記事では、モノハルとカタマランの比較になります。

それぞれに長所と短所があります。世界的にみればモノハルの方が圧倒的に多いですが、カタマランにも根強いファンも少なくありません。船の汎用性とか凌波性に関しては恐らくモノハルに軍配が上がりますが、カタマランもその特性を知り抜いた人には抗えない魅力があるようです。

ちなみに、カタマラン(catamaran)の綴りから、”Cat”と略して呼ばれたりします。

この記事では、エンジン付きプレジャーボート(パワーボート)を前提に、両者のメリットとデメリットをわかりやすくご紹介します。


モノハル(単胴艇)の特徴

モノハルは、その名の通りハルがモノであるような、私たちが船と言った時に想像する船のカタチをしています。

船首方向からみたモノハル艇
写真1 船首方向からみたモノハル艇。波を左右に切り分けて進むのが想像できる。筆者撮影

メリット

  • 波切り性能が高い
     V字型の船底が波を切りながら進むため、荒れた海況にも比較的強く、凌波性に優れています。

  • 運動性能が自然
     旋回時に内側に傾くため、自動車やバイクに近い感覚で操船できます。

  • 船体重量が軽く、トレーラブルも多い
     全幅が狭いため、ン本ではあまり見かけませんが、トレーラーで運べるサイズのモデルも多く、保管や移動が容易です。

  • 価格帯が広い
     艇数が多く中古市場も活発で、価格の選択肢が豊富です。

デメリット

  • 停船中の揺れ(ロール)が大きい
     波や人の移動に対して左右に揺れやすく、酔いやすいと感じる人もいます。しかし最近は、ジャイロと呼ばれる製品が登場し、モノハルのこの弱点は克服されつつあります。

  • 室内スペースに制限がある
     全幅が狭いため、デッキやキャビンがやや窮屈に感じられることもあります。同じ全長で室内スペースを多く取ると、どうしても船の形態が高速走行に苦手なものになり、そのため大出力エンジンを2機掛けしたりします。


カタマラン(双胴艇)の特徴

船首方向から見たカタマラン艇
写真2 船首方向から見たカタマラン艇 筆者撮影

メリット

  • 停泊中の抜群の安定性
     幅広の双胴構造により、停泊中のロールが極めて少なく、食事や休息中もモノハル艇より快適です。

  • 広大なデッキスペース
     中央部に広いフラットスペースを確保できるため、居住性や作業性が非常に高くなります。下の写真はネットから拝借したもの。広い出来いのお様子がうかがえる。下の写真はネットから拝借しました。同じていどの全長のボートに比べるとデッキが広いのが分かります。Center console catamaran - 240 GFX - Twin Vee Catamarans, Inc ...

  • 喫水が浅い
     浅瀬へのアクセスが容易で、サンドバーや干潟などの遊びにも適しています。またビーチングなどの途中で干潮になっても、砂地の上で艇体が傾かないのもメリットかも知れません。

  • 走行中の船体バランスが優れる
     波の低い海況に限りますが、一般にモノハルよりもカタマランの方が水の抵抗が少なく、そのため速度が出ます。小さなエンジンでも十分な速度でポイントに行くことができます。

デメリット

  • 旋回時に外側に傾く
     モノハルとは異なり、旋回時に外側に傾斜するため、慣れるまでは違和感があるかもしれません。モノハル艇では、内側に傾斜するので、進行方向へ視線が向けやすいのですが、カタマランではそれが出来ません。カタマランの場合、安全を優先するのであれば、やや速度を落として旋回するのが良いでしょう。

  • 荒天時の凌波性にやや劣る
     波を「切る」というより「乗り越える」性質が強く、センタースパン(胴体間)に波が打ちつけられると不快な衝撃がある場合もあります。そのため、下の写真(ネットより拝借)のように外洋の帆走を前提とする大型のカタマランヨットは、応力がかからない左右連結部分(人々がくつろいでいるところ)を弾性のあるメッシュを展開して人が歩けるスペースを作りつつ波の力を逃がす工夫をしています。左右のハルを連結する部分のうち、応力のかからない箇所をメッシュにして波の力を逃す工夫がみられる。

  • 価格が高めで、選択肢が少ない
     構造が複雑な分、建造コストが高く、国内の中古市場では流通数が限られます。とは言え、日本にはニュージャパンマリンという歴史と技術のある会社が良いカタマランボートを適切な価格で製造販売しています。

  • 係留・保管に制限がある
     デッキ面積が広い事の引き換えに、全幅が広いため、通常の係留バースに収まらないこともあります。これは悩みの種かもしれません。

  • スラスター装着が困難かも?
     理屈コネ太郎の管見では、バウスラスターを装着しているカタマラン艇を見た事がない。もしかすると、離接岸に難点があるかも知れないが、操船技術でカバーできると思う。

どちらを選ぶべき?|選択の目安

あなたの優先事項向いている構造
波の中でも遠くに出たいモノハル
停泊中も快適に過ごしたいカタマラン
限られたマリーナや保管施設を使いたいモノハル
家族や友人と船上でゆったり過ごしたいカタマラン
コストパフォーマンス重視モノハル
浅瀬やサンドバーで遊びたいカタマラン

理屈コネ太郎も購入を検討した

じつはわたし、理屈コネ太郎も最初のボートとしてカタマラン艇をかなり真剣に考えました。理屈コネ太郎が考えたのは以下のボートです。

ニュージャパンマリン㈱のNSC265
写真3 ニュージャパンマリン㈱のNSC265 写真はNJMのHPより拝借

詳細はメーカーのサイトでご覧いただくとして、理屈コネ太郎が魅かれたのは、とにかくこのボートがカッコイイという点。そして、日本製の艇なので信頼性も高い。

しかし最終的に、『愛艇紹介 Jeanneau社製 Merry Fisher 895 Sport』での述べたような自分が求める諸条件に合わないので、購入には至らなかった。

しかしNSC265は、どのマリーナに行っても必ず数艇はあるし、ニーズと合うオーナーを満足させるボートなのだと思う。

理屈コネ太郎のマリーナにも、数艇はあるし、最近は新たに純白のカッコいい個体が陸置きされているのを目にするようになった。

NSC265
純白のNSC265。いやあ、カッコイイ!

まとめ:ボート選びは「使い方次第」

モノハルとカタマラン、どちらにも魅力があり、優劣は一概には言えません。
それぞれの特性と自分の目的(すでに明確であるなら)を照らし合わせることが、後悔しないボート選びの第一歩になります。

モノハルを購入した後にカタマランという選択肢に気づいたりするのは、ちょっと悲しいです。

あなたが重視したいのは「荒波への強さ」なのか、「停泊時の快適性」なのか、「デッキの広さ」なのか――それを明確にしてから選びましょう。


「初めてのボート選び」に関する他の記事へは


当サイト内他の記事への移動は

ヨット関連記事一覧
独学でソロセーリング|ビギナーに役立つヨット操船・維持管理の記事一覧

ボート関連記事一覧
独学で楽しむマイボート|初心者に役立つ記事一覧

当サイト内の全記事一覧(最上位ページ)
当サイト内記事のトピック一覧ページ

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です