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はじめに
職場で起こる叱責とパワーハラスメント(以下パワハラ)。
両者はしばしば混同されますが、本質的には違いがあります。叱責は感情的な非難であり、パワハラは「立場の優位性を背景に繰り返される不適切な言動」です。
私は産業医として多くの相談を受けてきましたが、叱責やパワハラの根底には共通する心理が存在します。
それは、「自分は上位だから許される」という傲り(おごり)と、「下位の相手を軽んじてよい」という侮り(あなどり)です。
この記事では、叱責やパワハラを生む心理の構造を解説し、それを修正する方法として「メタ認知」を紹介します。
👉関連記事:叱責と指導の違いとは?|怒りと未熟さが生む職場の危機
叱責とパワハラの違い
まず、言葉の整理をしておきましょう。
叱責:過ちを強く非難すること。怒りを伴うが、一時的な感情発露のケースもある。
パワハラ:職場での優位性を背景に、継続的または執拗に繰り返される言動。人格否定や業務外の領域に踏み込むことも多い。
叱責が繰り返され、常態化したとき、それはパワハラに発展します。
なぜ叱責やパワハラは起こるのか?
結論から言えば、**「傲り」と「侮り」**が原因です。
傲り(おごり)
「自分は上司だから怒ってもよい」「部下に感情をぶつけても許される」という誤解。立場の優位性を免罪符にしてしまう思考です。
侮り(あなどり)
「相手は下位者だから強く言っても大丈夫」「反論できないはず」という軽視。これは相手を対等な存在として扱わない態度です。
選択的な社会性
興味深いのは、これらを持つ人が必ずしも「社会性がない」わけではないことです。上位者には丁寧に接するのに、下位者には尊重を示さない──社会性を選択的に使い分けているのです。
怒りや不快そのものは問題ではない
ここで誤解してはいけないのは、怒りや不快という感情自体は自然なものだということです。
問題は、それを「下位者にはぶつけても構わない」と考える歪んだ認知です。
良識ある社会人であれば、感情をどの立場の相手に対しても適切にコントロールするものです。
👉関連記事:職場で叱責がNGな3つの理由|産業医の現場知
メタ認知で修正する
叱責やパワハラを防ぐために有効なのが、メタ認知です。
メタ認知とは?
自分の思考や感情を客観的にとらえる力です。
「自分はいま怒っている」「なぜこの場面で苛立ったのか」を一歩引いて考えられる能力です。
修正のプロセス
感情が高まった瞬間に立ち止まる
「これは怒る場面なのか?」「指導に必要なことなのか?」と問い直す
攻撃的な言葉を避け、改善点に焦点を移す
こうした習慣化によって、「傲り」や「侮り」に基づく誤った行動を修正できます。
組織に求められる取り組み
個人の努力だけでは限界があります。組織全体で叱責・パワハラを防止する仕組みが必要です。
経営層が明確な方針を示す:「叱責は指導ではない」と全社に伝える
研修や教育:管理職向けにメタ認知を鍛えるプログラムを導入する
相談窓口の整備:被害を声に出せる仕組みをつくる
評価制度の見直し:成果だけでなく、指導方法も評価対象にする
こうした仕組みがなければ、個人の意識改革も一過性で終わってしまいます。
まとめ
叱責とパワハラは違うが、叱責が常態化するとパワハラに発展する
背景にあるのは「傲り」と「侮り」、そして選択的に歪んだ社会性
感情そのものは自然だが、「下位者にはぶつけてもよい」という認知が問題
メタ認知を鍛えることで、誤った行動を修正できる
組織全体でハラスメント防止に取り組むことが不可欠
叱責やパワハラをなくすには、「怒らないこと」ではなく、感情を自覚し、適切に扱う力が必要です。
そしてその力は、管理職だけでなく職場で働く全ての人にとって大切なスキルなのです。
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筆者紹介は『理屈コネ太郎|35歳で医者になり定年後は趣味と学びに邁進中』です。