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叱責とは何か?意味と定義を簡単に解説
叱責とは、主に感情的な怒りを隠さずに相手の過失を責める行為です。怒りを隠さないところに叱責の問題点はあります。一方で指導とは、相手の成長を促す意図のもと、理性的に改善点を伝える行為です。本記事では、この違いを具体例を交えて解説します。
なぜ叱責と指導の境界は曖昧になるのか?|日本型縦社会の構造
日本型の縦社会では、「指導」と「叱責」の違いを正しく理解しないまま、上位者がその境界を越えてしまう場面が多く見られます。
この線引きが曖昧なまま指導のつもりの叱責を行うと、組織の活力や生産性は低下し、最悪の場合はパワーハラスメントと認定され、訴訟に発展するリスクすらあります。
叱責が生まれる背景とは?|未成熟な指導者の心理構造
この「叱責と指導の違い」については、続編記事『叱責とパワハラを生む心理|傲りと侮りの罠』でも詳述していますが、ここでもその本質に触れておきます。叱責とは、「怒り」を職場の序列下位の者にぶつける行為であり、ぶつけられた人は「怒られている」という印象しかもたず、指導された…とはまず思われません。
職場で叱責をする人の持つ本質的な原因は、精神的未成熟とメタ認知能力の欠如です。メタ認知については『「認知の歪み」は人間理解のカギ|人との付き合い方が変わる心理学的視点』に詳述したので、興味ある読者は参考にしてください。
しかし現実では、上司や先輩側の未熟さではなく、部下や後輩の「受け取り方」の問題とされてしまうケースが後を絶ちません。
「自分を棚に上げる」構造と特権意識の危うさ
なぜなら、指導者は組織内の上位者であり、「自分の言動を省みる必要がない」と思い込みがちです。
この誤った特権意識が、「自分を棚に上げた指導者」を量産しやすい土壌を生んでいます。
さらに、「それは叱責では?」というフィードバックを周囲から受ける機会が少なく、仮にあっても軽視・無視する傾向が強い。
一方で、自分より上位の立場の人に対しては大変に丁寧な態度に変えるという典型例も少なくありません。
上位者は何を言っても許される?|組織風土に潜む危機
日本的な上司・部下、先輩・後輩の関係には、「上位者は何を言っても許される」という誤解が潜んでいます。
「俺は先輩(上司)だから、こういう言い方をしても構わない」という身勝手な論理が横行しており、これが健全な指導関係を阻害しています。
本来であれば、上司や先輩こそが「指導スキル」を磨く責任を負っているはずです。しかし現実には、部下や後輩の未熟さばかりを責め、自らの成長を怠る上位者が多いのが実情です。
叱責と指導の違いとは?|外見で見分けるチェックリスト
このような「自分を棚に上げる指導者」が行う叱責と、本来あるべき「指導」には、外形的にも明確な違いがあります。以下に具体的な比較をまとめます。
叱責と指導の外形的違いリスト
叱責は下手な事情聴取、指導は上手な改善策提示
叱責は過ちに焦点をあてる、指導は改善点に焦点をあてる
叱責は向上心を摘み取る、指導は向上心を育てる
叱責は礼節に欠ける、指導は礼節を前提にする
叱責された人は傷つく、指導された人は勇気づけられる
叱責はだいたい大声&高キー、指導は普通の声
叱責は人望とヤル気を奪い、指導はその反対
叱責はだいたい早口、指導はだいたいゆっくり口調
叱責は時に恫喝的口調、指導は通常の口調
叱責は時に長時間、指導は短時間
叱責は相手の反応をみない、指導は反応をみながら
叱責された人は萎縮する、指導された人は成長する
叱責は一種のマウントとり、指導は通常業務
叱責は「する方」が主人公、指導は「される方」が主人公
叱責は職員退職の原因、指導は職員定着の動機
叱責は「している人」が気持ちいい、指導は「された人」が気持ちいい
叱責は非生産的、指導は生産的
叱責は部下・後輩を消極的にする、指導は部下・後輩を積極的にする
叱責は出来なかった原因を責める、指導はやるべき事を素朴に伝える
叱責は責任回避を生む、指導は責任感を生む
叱責は責める、指導は導く
叱責は個人への怒り、指導は組織への愛
叱責は人をフテクサせる、指導は人をキラキラさせる
叱責は怒りのはけ口、指導は受容
叱責は怒り先行、指導は理性先行
叱責する人は指導を名目にしている、指導する人は組織成長を目指している
叱責する人は組織内の(ある意味で)敵、指導する人は常に仲間
叱責は自らの進歩を放棄した指導者が行う、指導は自らも進歩しようとする指導者が行う
叱責はホウレンソウを骨抜きにする、指導はホウレンソウを機能させる
叱責は「どうしてそんな事も出来ないのか」を責める、指導は「どうしたら出来るか」を説く
まとめ|叱責は人材を失い、指導は人材を育てる
以上のように並べると、「叱責」は組織の生産性を下げ、部下や後輩のモチベーションを削ぐ行為であることが明白です。
せっかく迎え入れた戦力人材が、自らの指導ミスで退職してしまうのは、組織にとっても痛手でしかありません。
この問題の根本には、指導者自身の精神的未成熟と発言・行動の自己矛盾への無自覚があります。メタ認知能力が欠如していると判断できる所以です。
未熟な上長ほど、自分が部下に求める行動と、自分の振る舞いが矛盾していることに気づかない。
それどころか「言ってることとやってることが違う」という指摘を受けると逆ギレするケースすらあります。
こうした構造のまま叱責が続くと、部下や後輩は組織に対する信頼を失い、最終的には退職につながります。
加えて、状況によってはハラスメント訴訟に発展し、組織全体の管理責任が問われる可能性も出てくるのです。
「叱責と指導の違い」という職場における決定的な差に、ぜひご留意ください。