この医者は大丈夫?診療の問題を見極めるサインと対処法

胆嚢と胆管 MRCP
正常な胆嚢と胆管

診察を受けたあとに、「この医者で本当に大丈夫だろうか」と感じることがあります。

実際に、診療能力が十分でない医師や、患者の診療に真摯に向き合わない医師、患者や病状に全く興味を示さない医師は存在します。

また、患者に寄り添う姿勢や丁寧な対応によって、診療能力の不足が患者から見えにくくなっているケースもあります。

ただし、そのような医師であっても、自分の対応可能な範囲を超えていると判断し、別の医師や医療機関へ適切に紹介するのであれば、大きな問題に至らないこともあります。

一方、医療現場では、医師が1日に数十人以上の患者を診察することもあります。そのため、説明が簡潔になったりして、患者視点では対応がそっけなく見えたりすることも珍しくありません。

つまり、

  • 診療そのものに問題がある医師
  • 忙しいなかで効率的に診療している医師

は、区別して考える必要があります。

見分けるべきなのは、医師の印象ではなく、診療に必要な判断の過程です。

患者の症状や不安を医学的に整理しているか。検査や治療を選んだ理由を示しているか。結果や経過に応じて方針を見直しているか。

本記事では、診療に問題がある医師を見極めるためのサインと、違和感を覚えたときの現実的な対処法を整理します。

なお、診療能力と医師の態度を切り分けて考える方法については、別記事冷たい医者はダメなのか?態度と診療の質を見分ける判断基準で詳しく整理しています。

医療の質は「判断の過程」に現れる

医師を評価するとき、多くの人は、

  • 優しいか
  • 丁寧か
  • 話を聞いてくれるか

といった印象で判断しがちです。

しかし、医療の本質は、そうした印象だけでは判断できません。

重要なのは、その医師が患者の状態をどのように捉え、どのような根拠で判断しているかです。

臨床医の最初の仕事は、患者の訴えをそのまま受け取ることではありません。患者が語る症状を、診断や治療に利用できる医学的な情報へ再構成することにあります。

この「翻訳」の質は、診療の質を判断する重要な手がかりになります。

診療に問題がある医師を見極めるサイン

以下は、単なる忙しさや愛想の問題とは異なる、診療の判断過程に現れるサインです。

① 症状が医学的に再構成されない

例えば、「胃が痛い」という訴えは、医学的には曖昧です。患者が胃が痛いと言った場合に、胃の病気しか思い浮かばない医師は、あまり臨床能力が高いとは言えません。

どの部位が痛むのか、どのような痛みなのか、いつから続いているのか、食事や姿勢によって変化するのかによって、症状の意味は大きく変わります。

医師は必要な質問を行い、患者の訴えを医学的な情報として整理します。

この過程が不十分であれば、最初の前提がずれたまま診療が進む可能性があります。

患者が提示する情報が診察にどう影響するかについては、別記事医者はなぜいつもせっかち?不機嫌?で詳しく説明しています。

② 患者の不安が整理されない

患者の不安には、症状そのものへの不安だけでなく、重い病気ではないかという心配や、今後の生活への懸念などが含まれています。

医師は、その不安が医学的に何を意味するのか、何を確認すればよいのかを整理する必要があります。

単に「大丈夫です」と言うだけではなく、なぜ大丈夫と考えられるのか、あるいは何を調べる必要があるのかが説明されているかが重要です。

③ 判断の理由が示されない

検査を行う場合にも、行わない場合にも、そこには理由があります。

治療を始める場合にも、経過を見る場合にも、判断の根拠があるはずです。

説明が簡潔であっても、

  • 何を疑っているのか
  • なぜその検査が必要なのか
  • なぜ今は検査を行わないのか
  • なぜその治療を選ぶのか

が示されていれば、判断の過程をある程度確認できます。

結論だけを伝えられ、判断の理由がまったく共有されない場合は、診療の質を患者側から評価することが難しくなります。

なお、患者の不安に医学的な根拠がある場合でも、必ず検査を行うとは限りません。

検査によって得られる利益と、身体的負担、偽陽性、偶発的な所見、費用などの不利益を比較したうえで、検査の必要性が判断されます。

重要なのは、検査をするかどうかだけではなく、その理由が説明されていることです。

④ 経過に応じて判断が更新されない

医療は、一度の診察や判断で完結するとは限りません。

検査結果、治療への反応、症状の変化などによって、当初の判断が修正されることがあります。

同じ説明や同じ処方が漫然と続き、期待した効果が得られていないにもかかわらず方針の見直しが行われない場合は、注意が必要です。

ただし、新しい検査結果や経過によって、医師の説明が以前と変わること自体は問題ではありません。

重要なのは、

  • なぜ判断が変わったのか
  • 新しい情報をどのように評価したのか
  • 今後どのような方針を取るのか

が説明されていることです。

注意|優しい態度だけで診療の質を判断しない

丁寧で優しい対応は、患者に安心感を与えます。

医師と患者の信頼関係を築くうえでも、言葉遣いや態度は重要です。

しかし、優しいことと診療能力が高いことは同じではありません。

反対に、忙しく簡潔な対応であっても、症状が適切に整理され、判断の理由が示され、経過に応じた見直しが行われているのであれば、診療として問題がない場合もあります。

医師の印象だけでなく、判断の中身を見る必要があります。

違和感を覚えたときはどう行動すべきか

違和感があった場合でも、直ちに医療機関を変える必要があるとは限りません。

まずは、現在の診療の中で判断の過程を確認します。

① 検査や治療の目的を確認する

提案された検査や治療について、

  • 何を確認するためのものか
  • どのような効果が期待できるか
  • どのような負担や危険があるか
  • 実施しない場合に何が考えられるか

を確認します。

身体的な負担が比較的小さく、説明にも納得できる場合は、結果や経過を評価するために検査や治療を受けることも合理的です。

一方、身体への負担が大きい検査や治療、元の状態へ戻せない処置、重大な副作用を伴う治療については、開始前に十分な説明を受ける必要があります。

納得できない場合は、その場で決断せず、別の医師の意見を聞くことも選択肢です。

② 結果と経過を踏まえて判断する

医療は、検査結果や治療後の経過まで含めて評価するものです。

特に重要なのは、期待した効果が得られなかった場合や、新しい症状が現れた場合の対応です。

まずは、その医師にもう一度相談します。

その際には、次の点を確認します。

  • 検査や治療前の説明と、その後の説明に合理的なつながりがあるか
  • 新しい結果を踏まえて、診断や治療方針が見直されているか
  • 判断が変わった場合、その理由が説明されているか
  • 患者の不安や疑問に対して、必要な説明が行われているか

これらが満たされていれば、診療は経過に応じて適切に更新されていると考えられます。

一方で、

  • 以前の説明から変わった理由が示されない
  • 新しい検査結果や症状が方針に反映されない
  • 効果が得られなくても同じ治療が漫然と続く
  • 質問をしても必要な説明が得られない

といった場合は、判断過程に問題がある可能性があります。

この段階で、医師を変更するかどうかを検討してよいでしょう。

③ 必要に応じて医師を変更する

判断の過程に納得できない場合や、信頼関係を築けない場合は、医師の変更も選択肢です。

その際は、可能であれば紹介状、正式には診療情報提供書を用意してもらうと、これまでの検査結果や治療内容を次の医師へ伝えやすくなります。

紹介状を希望する場合は、現在の医師や医療機関の窓口へ相談します。

発行には費用がかかり、受け取りまでに日数を要する場合があります。

依頼する際には、

「別の医師の意見も聞きたい」
「別の医療機関で診療を受けたい」
「現在の診療に不安がある」

など、受診先を変えたい理由を率直に伝えて構いません。

紹介状に関する実務上の注意点

紹介状には通常、受診先の医療機関名や診療科などの宛先が記載されます。

受診先が決まっている場合は、医療機関名や診療科を指定して発行を依頼するのが確実です。

受診先がまだ決まっていない場合は、紹介状の宛先をどのように記載するか、現在の医療機関へ相談してください。

宛先が空欄の紹介状や、別の医療機関宛ての紹介状を受け付けるかどうかは、受診先によって異なる場合があります。

受診を予定している医療機関にも、紹介状の要件を事前に確認しておくと確実です。

補足|医師の態度に耐える必要はない

診療能力と、言葉遣いや態度は別の問題です。

診療内容に大きな問題がなくても、態度に強い不快感があり、必要な相談や質問ができないのであれば、信頼関係は成立しにくくなります。

「優秀な医師かもしれないから」と、耐え続ける必要はありません。

安心して相談できず、診療の継続が難しいと感じる場合には、医師を変更することも合理的な判断です。

補足|「寄り添う姿勢」と診療能力は一致しない

患者に寄り添う態度は大切です。

しかし、共感的で丁寧な対応だけで、診療能力の高さが保証されるわけではありません。

丁寧な態度によって安心感が生まれる一方、診療内容の問題が見えにくくなることもあります。

また、医師から別の医療機関への紹介を勧められる場合があります。

これは必ずしも診療能力の不足を意味しません。

  • 自分の対応可能な範囲を適切に見極めている
  • より専門的な診療が必要だと判断している
  • 無理に診療を継続しない選択をしている

という場合もあります。

紹介を受けた場合は、その理由を確認したうえで、次の診療へ進むことが合理的です。

まとめ

医療の質は、結論だけではなく、判断の過程に現れます。

特に重要なのは、次の3点です。

  • 症状や不安が医学的に整理されているか
  • 検査や治療を選んだ理由が示されているか
  • 結果や経過に応じて判断が更新されているか

この3点を軸にすれば、医師の忙しさや表面的な印象だけに惑わされず、診療の中身を判断しやすくなります。

違和感をそのままにせず、まず判断の過程を観察する。

説明を確認し、経過を見て、それでも納得できなければ医師を変更する。

これが、医療で大きな失敗を避けるための現実的な向き合い方です。


当サイト内他の記事への移動は

日本の医療現場 記事一覧【元医師の現場視点から】

▶ 当サイト内記事のトピック一覧ページ【最上位のページ】

▶筆者紹介は『理屈コネ太郎の知ったか自慢|35歳で医師となり定年後は趣味と学びに邁進』

作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です