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トルコンATはショック吸収装置+直結変速機である
トルコンATは「滑る変速機」と思われることが多い。
そのためスポーツ走行には向かないという印象を持つ人も少なくない。
しかしGRヤリスのDATに代表される現在のトルコンATの構造を見ると、この理解は正確ではない。
現代のトルコンATは
ショック吸収装置+直結変速機
として成立している。
発進や低速域ではトルクコンバーターが流体結合によって駆動系ショックを吸収し、巡航や加速時にはロックアップクラッチによって機械的に直結する。
つまり
低速:トルコン
高速:直結
という二つの状態を使い分ける構造である。
この基本構造を理解すると、トルコンATが単なる快適装置ではなく、機械的にも合理的な変速機であることが見えてくる。
トルクコンバーターはトルク変動を滑らかにする装置
トルクコンバーターは流体を介して回転を伝える動力伝達装置である。
内部には
ポンプ
タービン
ステーター
という羽根車があり、作動油の流れによって動力を伝達する。
流体結合の特徴は
トルク変動や回転差を滑らかに吸収できること
である。
エンジンとトランスミッションの回転差が存在しても、流体がその差を吸収しながら動力を伝える。
この特性により
発進時のストール防止
トルク変動の緩衝
駆動系ショックの吸収
が可能になる。
つまりトルクコンバーターは
トルク変動を滑らかにする装置
として働く。
この特性は、強いトルク変化が発生する変速時において、ドライブラインに過大な衝撃が伝わることを防ぐ役割を持つ。
ロックアップ機構が直結変速機を成立させた
トルコンATの弱点として長く指摘されてきたのが、トルコンによる伝達ロスである。
しかし現代のATでは
ロックアップクラッチ
が広く使われている。
ロックアップクラッチが作動すると
エンジン
↓
クラッチ
↓
トランスミッション
という機械直結状態になる。
現代のATでは
早期ロックアップ
広範囲ロックアップ
微小スリップ制御
が実現しており、多くの走行状況でロックアップ状態が維持される。
つまり通常走行では
ほぼ直結変速機
として機能している。
そのため、かつて問題視されたトルコンによる伝達ロスは大きく低減されている。
遊星歯車機構の合理性
トルコンATの変速機構の中心は遊星歯車である。
遊星歯車は
サンギア
リングギア
キャリア
という三つの回転要素から構成される。
この三要素のうちどれを固定するかによって、異なるギア比を作り出すことができる。
遊星歯車機構の特徴は
歯車が常に噛み合っている構造
である。
ATの変速は歯車を入れ替える操作ではない。
遊星歯車の回転要素をAT内部のクラッチやブレーキによって固定することで、動力経路を切り替えている。
つまりATは
クラッチがない変速機ではなく、むしろ多数のクラッチを制御する変速機
なのである。
この構造には
高トルク対応
機械的安定性
多段変速の容易さ
という利点がある。
その結果、現代のATでは8速や10速といった多段変速が一般的になっている。
電子制御がATを別物にした
現代のATの性能を決定づけているのは電子制御である。
車速、スロットル開度、エンジン回転数などの情報をもとにコンピュータが変速タイミングを判断し、油圧制御によってクラッチやブレーキを精密に作動させる。
さらに
トルク制御
ロックアップ制御
シフト速度制御
などが統合されることで、変速は非常に高速かつ滑らかになった。
このように現代のATは
機械機構と電子制御の統合システム
として成立している。
まとめ
トルコンATは単なる快適装置ではない。
トルクコンバーターはトルク変動を滑らかにし、ロックアップ機構によって必要な場面では直結する。
遊星歯車機構は常時噛合構造によって安定した多段変速を可能にし、電子制御がそれらを精密に統合している。
つまり現代のトルコンATは
ショック吸収装置+直結変速機
として成立している。
その結果、トルコンATは
強い変速操作でもドライブラインに過大な衝撃を与えない変速機
となっている。
この特性こそが、トルコンATがスポーツ走行にも適した機構である理由の一つと言える。
