医師と歯科医師は、日本では別の国家資格です。
一般には
医師は身体全体を診療する
歯科医師は口腔内の診療をする
という理解が広く知られています。
しかし実際の医療現場では、この区分は必ずしも単純ではありません。
特に顎顔面口腔外科領域では、医師と歯科医師の診療領域が接近する場面が多く存在します。
この記事では、医師と歯科医師の制度上の違いと、その境界がどのように運用されているのかを整理します。
Contents
医師と歯科医師は別の免許制度
日本では
医師
歯科医師
はそれぞれ別の教育課程を修め、別の国家資格として制度化されています。
歯学部を卒業して医師にはなれませんし、
医学部を卒業して歯科医師にはなれません。
法律上は
医師は「医業」
歯科医師は「歯科医業」
を行うとされています。
この分業は
医師法
歯科医師法
によって成立しています。
つまり制度としては
医業と歯科医業という二つの免許制度
が独立して存在します。
しかし診療領域の境界は明確ではない
ただし、医業と歯科医業の境界が法律上明確に定義されているわけではありません。
実際の臨床では、両者の領域が部分的に重なる場面があります。
例えば
医師が口腔内切創を縫合する
歯科医師が歯科医療目的で全身麻酔を行う
といったケースです。
このように、制度上の分業は存在しますが、
診療領域の境界は必ずしも明確ではありません。
顎顔面口腔外科領域で境界は接近する
両者の領域が特に接近するのが
顎顔面口腔外科
です。
この領域では
顎骨骨折
顎骨腫瘍
口腔がん
などを扱います。
解剖学的には
口腔
顎
顔面
は耳鼻咽喉科や形成外科とも接する領域です。
そのため、医師と歯科医師の役割は単純には分けられません。
行政的な整理はあるが法的拘束力はない
平成8年には
「歯科口腔外科に関する検討会」
において医科と歯科の診療領域について意見整理が行われました。
しかし、この整理は
行政的な合意に過ぎず、法的拘束力はありません。
つまり制度上の境界が明確に確定されたわけではありません。
実際に問題となった事例
医科と歯科の領域をめぐっては、具体的な問題も生じています。
例えば
市立札幌病院医科研修問題
では、歯科医師の医科研修の扱いが議論となりました。
また厚生労働省の文書
「歯科医師の医科麻酔研修の現状・課題」
でも、歯科医師の医科領域研修について検討が行われています。
これらの事例は
医科と歯科の境界が単純ではない
ことを示しています。
医療現場での実際の役割分担
各地には
病院内歯科
歯科口腔外科
を併設する基幹医療機関が数多く存在します。そうした医療機関では口腔原発の悪性治療の例もあります。
口腔外科領域、特に口腔がん治療領域において、歯科医師が果たす役割は施設ごとによって異なるのが実情です。チームの種戦力として外科手術から欠損部の再建、補綴まで行う施設もあれば、外科領域は医師が行い咬合や補綴などの従事の場合もあります。
歯学部や歯科大学における口腔外科診療では、ほとんどの診療を歯科医師チームで実施することが多いようです。
一方で
抗がん剤の全身投与
がん転移の診断と治療
全身管理
などについては、院内の医科医師と協力して診療を行う体制が取られている場合が多いとされています。
まとめ
医師と歯科医師は
制度上は別の国家資格
ですが、
診療領域の境界は必ずしも明確ではありません。
特に顎顔面口腔外科領域では
解剖学的連続性
診療内容の重なり
のため、両者の役割が接近します。
実際の医療現場では
制度上の分業と専門性に基づく協力
によって診療が行われています。