国の借金が多いと聞いたら、まず「資産」を思い浮かべよう ――会計学で考える赤字国債の話

日本円と国債証書、住宅模型、天秤を配置した政府債務を象徴する写真
国の借金は負債だけでなく、同時に計上される資産とセットで考える必要がある

国の借金が増えていると聞くと、不安になる人は多い。不安を掻き立てるために、そうした言説が流布されているからだろう、
ニュースでは「国の借金○○兆円」「将来世代へのツケ」といった表現が繰り返され、
家計で借金が膨らむ状況を思い浮かべるのも無理はない。

しかし、会計学の視点に立つと、
借金だけが単独で増えるという現象は原理的に起こらない。
借入が行われた以上、それと同額の資産が同時に計上されているはずだからだ。

本記事では、住宅ローンの会計構造を手がかりに、
赤字国債を「善悪」ではなく、会計の問題として整理していく。


Contents

第1章|「国の借金が多い」と言われたら、それと同額の資産を国が保有していると考えよう

「国の借金が○○兆円ある」と聞くと、
その数字の大きさに圧倒されてしまいがちだ。
だが、この表現は会計的には片側しか見ていない

会計では、負債だけを切り出して評価することはしない。
借金が発生したということは、
その資金を使って何かを取得・整備したということであり、
対応する資産が必ず存在する

企業でも家計でも、
借金と資産は常にバランスシートの両側に並ぶ
国家財政も、この原理から外れることはない。

重要なのは、借金の額そのものではなく、
その借金に対応する資産が存在しているかどうかである。


第2章|住宅ローンによる持ち家取得は、会計学的にどういう現象か

この構造を最も分かりやすく示すのが、住宅ローンだ。

住宅ローンを組んで家を購入した瞬間、
会計上は次の二つが同時に発生する。

  • 負債:住宅ローン

  • 資産:住宅

ここでよくある誤解は、
「ローンを返し終えたあとに資産が残る」という理解である。
実際には、ローンを設定したその時点で、
借金と同額の資産がすでにバランスシートに立っている

話を分かりやすくするため、
本記事では住宅の価値を取得時簿価で考えることにする。
市場価値の上下や減価償却といった論点は、ここでは扱わない。

重要なのは、
借金だけが増えるのではなく、
借金と資産が同時に計上されるという会計構造そのものだ。


第3章|借金の善悪は、購入した資産が将来の効用を持つかどうかで決まる

同じ借金でも、評価が分かれる理由はここにある。

遊興費のための借金では、
会計上、対応する資産が計上されない。
借金だけが残り、将来の効用も生まれない。

一方、住宅や設備、インフラのための借金では、
会計上の資産が計上され、
長期間にわたって効用を生み続ける。

つまり、借金の善悪は倫理の問題ではなく、
構造の問題だと言える。
借金が問題になるのは、
資産に変換されず、将来効用を持たない場合である。


第4章|国家財政でも、会計の原理は変わらない

国家財政でも、この原理は同じだ。

国債は会計上の負債である。
一方、国債を原資として整備されたもの――

  • 道路や橋梁

  • 港湾や公共建築

  • 校舎や研究棟、研究設備

といったものは、会計上の資産として計上される。

国家もまた、
家計や企業と同様に、
バランスシートで動いている


第5章|国債に向く支出/向かない支出は、会計で決まる

会計学の立場から見れば、
国債の使い道は明確に線引きできる。

国債に向く支出とは、
会計上、資産として計上でき、
長期間利用され、
借入とバランスシート上で相殺できるものだ。

一方、
国債に向かない支出とは、
資産として計上されず、
消耗性が高く、
その場で価値が消えてしまう支出である。

ここでは、分野名ではなく、
会計上の性質だけで考える。


第6章|「財政破綻論」で語られる不安を、会計と制度で整理する

財政破綻をめぐっては、
次のような不安がよく語られる。

  • 利払い不能

  • 市場が国債を引き受けなくなる

  • 金利の急騰

しかし、これらは整理して考える必要がある。

まず、
金利の急騰による利払い額の増加は、
同時に国が保有する金融資産からの利息収入の増加によって相殺されうる

また、国債の償還は制度上、
新たな国債発行による借り換えが前提となっている。

さらに、日本国債は
円建てであり、
保有者の大半は国内である。

「市場が国債を引き受けなくなる」と言われるが、
そのためにどのような条件が必要なのかは、
具体的に示されることがほとんどない。


第7章|まとめ|赤字国債は「善悪」ではなく「会計の問題」である

赤字国債は、
それ自体が善でも悪でもない。

問題は、
何に使われたかであり、
資産として計上され、借入と相殺できるかである。

借金の額を見るのではなく、
借金の中身を見るあるいはそれに相当する資産を見る
会計学の視点に立てば、
赤字国債はそのように整理できる。

国債発行のより詳細な事情はなぜ財務省は「赤字国債」を過剰に怖がるのか|財政均衡という幻想の系譜を参照されたい。


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