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はじめに|検索エンジンの都合を考えたことはあるか
読者は、
私企業である Google や Microsoft(Bing)が提供する検索エンジンの都合――
つまり生存戦略やブランドマネジメントを、
検索エンジン自身の視点で考えたことがあるでしょうか。
私たちは日常的に検索エンジンを使い、
疑問があればとりあえず検索する、
という行為をほとんど無意識に行っています。
しかしその裏側で、検索エンジンは常に
「この検索ワードに対して、どのような記事を、どのような順番で掲載するか」
という選択を迫られてきました。
既に述べたように、検索エンジンは私企業が提供するサービスです。
収益が必要であり、利用者や広告主が離れれば存続できません。
同時に、情報流通の基盤として
きわめて大きな社会的影響力を持つ存在でもあります。
本記事では、検索エンジンの進化史を振り返りながら、
検索エンジンが何を問題視し、
それにどう対応してきたのかを時系列で整理します。
そしてその過程で、検索エンジンの重心が
「正解を当てること」から
「破綻しない答えを出し続けること」へと
なぜ、どのように移動していったのかを考えます。
第1章|検索エンジンの黎明期と、その役割
――「正解を検索結果に載せればよかった時代」
検索エンジンが登場した当初、その役割はきわめて素朴なものでした。
インターネット上の情報量が人間の処理能力を超え始めたとき、
「どこに何が書いてあるのか分からない」という問題を解決するための
索引装置として検索エンジンは生まれました。
この時代の検索は、
辞書や電話帳の延長線上にあります。
・用語を調べる
・公式情報にたどり着く
・正解がほぼ一つに定まる問いに答える
検索エンジンは、
「正しいページを、正しい順番で並べる」
ことができれば十分でした。
第2章|アルゴリズムという秩序と、SEOの誕生
――検索順位が価値を持った瞬間
やがて検索結果の上位に表示されることが、
単なる利便性を超えた価値を持ち始めます。
検索結果の上位には人が集まり、
人が集まれば影響力が生まれ、
影響力はやがて経済価値へと変わっていきます。
このとき自然に生まれたのが、
検索エンジンのアルゴリズムを推察し、
それに適応しようとする動きでした。
どのようなページが評価されるのか。
どんな条件を満たせば上位に表示されるのか。
こうした試行錯誤の中から生まれたのが、
SEO(Search Engine Optimization)です。
ここで重要なのは、
SEOそのものが必ずしも悪ではなかった、
という点です。
検索エンジンが一定の秩序を持つ以上、
その秩序を理解し、情報を整理して届けようとする行為は、
きわめて合理的でした。
第3章|中身のない記事が量産され始めた理由
――形式を満たすことと、価値を持つことの乖離
しかし、SEOが広く知られるようになるにつれ、
次第に歪みが生まれます。
検索エンジンが評価しているのは、
ページの内容そのものではなく、
アルゴリズムを通して観測できる指標でした。
その結果、
・キーワードが入っている
・体裁が整っている
・一定の文字数がある
といった形式だけを満たす記事が、
大量に作られるようになります。
人が読んで理解することや、
判断材料を得ることをほとんど想定していない記事であっても、
アルゴリズム上の条件を満たしていれば
検索結果に表示されてしまう。
こうして、SEOだけを目的とした
内容の空洞化した記事が、
検索結果を占めるようになっていきました。
第4章|検索エンジンが直面した最初の危機
――「役に立たない記事が検索結果に並ぶ」
この段階で、検索エンジンは明確な矛盾に直面します。
アルゴリズム的には正しい。
しかし、読んでも何も得られない。
判断の助けにもならない。
検索結果の上位に表示されているにもかかわらず、
役に立たない情報が並ぶ状態が続けば、
利用者は次第にこう感じ始めます。
「この検索エンジン、最近あまり役に立たないな」
検索エンジンにとって、
これは致命的な兆候でした。
第5章|粗造乱造記事との本格的な闘い
――Panda と Penguin(2011〜2014年頃)
2011年頃から、検索エンジンは
検索品質の低下を明確な問題として捉え、
本格的な対策に乗り出します。
2011年に導入された Panda は、
内容が薄い記事や焼き直しコンテンツを
まとめて評価対象から外す試みでした。
続く2012年頃の Penguin は、
不自然な被リンクや人為的な順位操作を問題視します。
これらのアップデートが意味していたのは、
単なる技術調整ではありません。
検索エンジンが
「攻略されやすいアルゴリズム」から
「利用者の信用を守るアルゴリズム」へと
性格を変え始めた合図でした。
第6章|それでも残った、より深い問題
Panda と Penguin によって、
明らかに過剰に攻略的な要素は排除されました。
しかし、
「質の高い検索結果とは何か」
という問いは、依然として残ります。
条件が違えば答えも変わる。
立場が違えば結論も変わる。
検索エンジンは、
ここで次の事実に直面します。
第7章|検索の大半は「過去に存在しない問い」だった
――決定的な気づき(2014〜2016年頃)
検索ログを分析する中で、
検索エンジンは次第に理解します。
検索されている問いの多くは、
過去に一度も見たことのない形をしている。
条件付き、文脈依存、状況限定。
二度と同じ形では現れない問いが、
検索の大半を占めていたのです。
バズる問いは目立ちます。
しかし、検索エンジンを日々使わせているのは、
再現不能な問いの洪水でした。
この事実こそが、
検索エンジンの戦略を根本から変える契機となりました。
第8章|RankBrainという転換点
――判断様式が変わった瞬間(2015年頃)
この問題に対応するため、
検索エンジンは新たな方向へ舵を切ります。
2015年頃に導入された RankBrain は、
未知の問いに対して、
過去の類似事例や文脈から
意味を推測する仕組みでした。
ここで検索エンジンは、
不確実性の下で仮説を立て、
利用者の反応を通じて
判断を更新し続けるという
ベイズ的な判断様式を、
検索ランキングの中核的かつ常時稼働のプロセスとして
本格的に組み込みます。
第9章|「正解」を競う時代の終わり
――評価軸が変わらざるを得なかった理由(2016〜2019年頃)
問いが多様化し、
正解が一つでなくなったとき、
検索エンジンにとって最大のリスクは
「検索者の意図を外した結果を返すこと」になりました。
極端な断定や、
文脈を無視した結論は、
誤解や事故を生みます。
その結果、検索エンジンの評価軸は
「正しさを強調する記事」よりも、
**「内容が破綻していない記事」**を
検索結果に載せる方向へと移動します。
70点でもいい。
しかし、致命的に間違えないこと。
誤解を生まないこと。
これが最優先事項になりました。
第10章|E-A-Tという評価思想の成立
――破綻を避けるための枠組み(2018〜2019年頃)
この流れの中で、検索エンジンは
E-A-T(専門性・権威性・信頼性)
という評価思想を明確にします。
E-A-Tは、
正解を保証する仕組みではありません。
むしろ、
不合理で妥当性の低い記事を排除し、
検索結果で事故を起こさないための枠組み
として機能してきました。
第11章|E-E-A-Tへ
――実体験が明示的に組み込まれた理由(2022年以降)
生成AIの進化により、
定義や要約、一般論は
機械でも容易に生成できるようになりました。
この状況で検索エンジンが直面したのは、
「どこに人間ならではの価値が残るのか」という問いです。
その答えとして、
E-A-Tに Experience(実体験) が加えられ、
E-E-A-T という整理が前面に出てきます。
これは新しい思想というより、
それまで暗黙に重視されてきた要素を
明文化したものと捉えるのが自然でしょう。
終章|検索エンジンは何を目指しているのか
検索エンジンは、
真理を決める装置ではありません。
それでも、
外さない。
誤解させない。
使い続けられる。
その体験を積み重ねることで、
社会の情報基盤として
機能し続けようとしています。
検索エンジンの進化史とは、
技術の物語である以前に、
信用を失わないための選択の連続だった――
そう捉えることができるでしょう。
本記事では検索エンジン黎明期から2022年頃のEEATという検索エンジンが記事を評価する基準について纏めました。この記事でも若干触れたように、コンテンツ制作者は検索結果に掲載される事、そしてユーザーにクリックされる事の二つ大きな関心毎です。また最近は、検索エンジンは検索ワードの組み合わせについての膨大な過去データから、検索ワードから検索者の意図をそれなりの精度で推定する事が出来るようになりました。
すると現在の問題は、検索エンジンが検索ワードから推定して検索意図に擬態したあまり内容が充実していない記事を、そう検索結果に載せないようにするか…という難問に検索エンジン企業は直面しています。この点については別記事検索意図に擬態する「コレじゃない」記事を、検索エンジンが排除したい理由に詳述しました。お時間とご興味があればお愉しみ下さい。
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