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■ はじめに
このブログの「資産形成」カテゴリーでは、
「どうやって個人のお金を増やすか」だけでなく、
その前提として “国の経済政策がどちらを向いているか” にも注目しています。
なぜか。
どれだけ節約しても、
どれだけ合理的に投資しても、
どれだけ長期複利を信じても、
国全体のお金の流れが弱ければ、
資産形成そのものが伸びにくいからです。
資産形成とは、
経済という大きな流れに “自分のお金を乗せる行為” でもあります。
本記事では、専門用語をできるだけ避けながら、
国の政策が私たちの資産形成にどう影響するのかを
「保留中の欲望」 というキーワードで説明したいと思います。
良い経済政策とは何か。一言でいえば、
人々が“本当はやりたいのに我慢していること”を
自然に実行できるよう背中を押す政策
です。
■ 第1章 “保留中の欲望”とは何か
世の中には、こんな気持ちを抱える人がたくさんいます。
本当は旅行に行きたい
家電をそろそろ買い替えたい
子どもの習い事を増やしたい
外食の回数を少しだけ増やしたい
車を替えたい
しかし多くの人は、心の中でこう言い聞かせています。
「本当はしたい。でも、今の財布事情ではやめておこう」
この「やりたいけれど、保留している気持ち」を
ここでは “保留中の欲望” と呼びます。
欲望が消えたわけではありません。
ただ、収入や税負担を考えると、自分でブレーキをかけているだけです。
国の経済政策が本来やるべきことは、
人々の中にある“保留中の欲望”を
「よし、やってみようか」と思えるところまで後押しすること。
これこそが「経済を温める」政策の本質です。
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■ 第2章 どうすれば欲望は動き出すのか
人々の“保留中の欲望”を動かすために必要なのは、実はとてもシンプルです。
お財布の中のお金を、ほんの少し増やすこと。
例えば次のような政策があります。
公共事業(インフラ整備など)
減税(所得税・消費税など)
給付金(現金を配る)
国債を発行してお金を国内に巡らせる仕組み
ここで大切なのは、
「お札を刷ればいい」という話ではない
という点です。
お金が世の中を巡る仕組みの中心にあるのは “信用” です。
信用とは、
「あなたなら支払えるだろう」という社会の信頼の力。
この信用があるからこそ、日本円という“ポイント”は
銀行・企業・個人の間をスムーズに巡ります。
どんな政策でも、
保留中の欲望が実行に移されやすくなる方向に働くなら
それは“経済を刺激する政策” と呼べる
ということです。
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■ 第3章 減税は、欲望と産業を同時に動かす
給付金も効果がありますが、一回きりです。
一方、減税は じわじわ効き続ける という強みがあります。
減税とは、
国が取るお金を少し減らし、そのぶんを国民の手元に残す政策。
この政策には二つの大きな効果があります。
① “保留中の欲望”が静かに動き出す
手取りが少し増えるだけで、人は自然にこう考えます。
「じゃあ外食を月1回増やそうか」
「子どもの習い事、始めてもいいかも」
「我慢していた修理をやってしまおう」
誰にも命令はされていません。
財布に少し余裕ができたことで、心のブレーキが弱まっただけです。
これが「需要が喚起される」という現象です。
② 欲望が動けば、新しい仕事や産業が生まれる
人々がやりたかったことを実行し始めると
それを支える仕事が必要になります。
飲食店がにぎわう
サービス業に需要が増える
新商品や新サービスの開発に投資が回る
教育や趣味のマーケットが広がる
欲望が動けば仕事が生まれ、
仕事が増えればお金の流れも増えます。
これこそが、
「経済のパイが大きくなる」ということの意味。
しかし残念ながら、日本には
“経済のパイを大きくすること” を主務とする官庁が存在しません。
これは構造的な悲劇と言わざるを得ません。
■ 第5章 理想は年率2~4%のインフレ
インフレとは、
お金が気持ちよく回ることで、お金の価値がゆっくり下がる現象。
日本では長い間「インフレ=悪いこと」と刷り込まれてきましたが、
それは誤解です。
ハイパーインフレは確かに恐ろしい。
しかし日本の構造を見れば、
ハイパーインフレは“ほぼ起こり得ない”
と断言できます。
日本は世界でもトップクラスに
ハイパーインフレが起きにくい国 です。
● では、なぜ“ハイパーインフレが来る”と言う人がいるのか?
答えは簡単です。
もし経済の基本を理解しているのにそれを言うなら、
それは 完全なポジショントーク です。
政治家や一部の評論家が危機を煽るのは、
財政出動を止めたい
小さな政府を維持したい
自分の支持層に恐怖を訴えたい
既得権を守りたい
など、自分の立場にとって都合が良い からです。
つまり、彼らは「日本が本当に危険だから」言っているのではありません。
危機を語ることが自分の利益になるから 言っているのです。
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● 日本でハイパーインフレが起きにくい理由
ハイパーインフレとは、
通貨への信用が一気に壊れ、人々が“その通貨を避ける”状態。
日本は、
国有資産が多い
外貨準備が厚い
国債はほぼすべて円建て
買い手は日本の銀行・保険・年金・個人
という特殊構造を持っています。
つまり、
「外貨で返せ!」と合理的に迫る国がほぼ存在しない。
だから、
景気が悪化しても、通貨そのものが崩壊する“恐慌型ハイパーインフレ”にはならない。
外貨不足も、対外債務危機も、日本の構造では起きにくいのです。
● インフレが「まったく起きない」状態も危険
一方で、物価が上がらない状況は深刻です。
企業が値上げできない → 利益が出ない
給料が上がりにくい
投資や挑戦が生まれない
これは経済が止まっているサインです。
歴史的に健全だったのは、
年2~4%のインフレが続いているとき。
この環境では、
人々の欲望が少し動き
企業は償却を上回る利益を出し
賃金もゆっくり伸び
株価も将来の成長期待で上がる
という“理想的な循環”が生まれます。
だから、
年2~4%のインフレは、資産形成にとても有利なのです。
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■ 結び
資産形成というと
「どの投資信託が良いか」「どの銘柄を買うべきか」に目が向きがちです。
もちろんそれも大事です。
しかし同じくらい大切なのは、
自分が暮らす国の経済政策が、
“保留中の欲望を動かす方向” にあるかどうか。
年2~4%のインフレが続き、
財布に少し余裕が生まれ、
人々が「本当はやりたかったこと」を動かし始める国。
そんな国では、
企業も家計も投資も、自然な形で伸びていきます。
経済とは数字の話であると同時に、
「本当は〇〇したい」という気持ちが
どれだけ現実になっていくかの物語 です。
資産形成とは、その物語の中で、
自分のお金をどこにどう乗せるかを選ぶ行為。
そして、
政策を見抜く眼があるかないかで、
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筆者紹介は理屈コネ太郎の知ったか自慢|35歳で医師となり定年後は趣味と学びに邁進中
