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はじめに
住宅ローンの繰り上げ返済と積立型保険は、
ファイナンスの基礎的な知識を持っている人であれば、
「要注意な選択肢だ」 とすぐに理解できると思います。
もし今、その意味がよく分からなくても大丈夫です。
この記事を読み進めることで、
繰り上げ返済や積立型保険は決して悪い選択ではない一方で、
場合によっては、より良い選択肢が存在するということを、
詳細な計算は別にして、概略として理解できるようになるはずです。
社会人として生活していくと、
多くの人がほぼ必ず通過するお金の意思決定がいくつかあります。
その代表例が、住宅ローンの返済と、積立型保険の購入です。
住宅ローンは、数十年にわたる返済義務を伴います。
いったん返済が始まると、
「少しでも早く返して楽になりたい」
「繰り上げ返済をした方が堅実なのではないか」
と考える人は少なくありません。
しかしそのとき、
余剰キャッシュを繰り上げ返済に回す以外の選択肢は、
本当に十分に検討されているでしょうか。
一方、家族が増えたり、将来が気になり始めると、
「保険もそろそろ必要かもしれない」
と考える場面が訪れます。
掛け捨てはもったいない気がして、
積立型保険を選ぶ人も多いでしょう。
しかしその判断は、
積立型保険と、積立型投資+掛け捨て保険という代替案を、
同じ条件で比較した結果でしょうか。
住宅ローン繰り上げ返済と積立型保険は、
理屈コネ太郎の見解では、市井にありふれた二大ファイナンス問題です。
共通しているのは、
本来は複数の選択肢が存在するにもかかわらず、
その代替オプションが検討の俎上に上ることがほとんどない
という点です。
そして仮に代替案が示されたとしても、
すべてのキャッシュの出入り、
内部コスト、
将来の選択肢への影響まで含めて整理したうえで、
「ここから先は価値観の問題だ」
というところまで、議論に付き合ってくれる人はほとんどいません。
では、どうするか。
自分でやるしかないのです。
本記事では、
住宅ローン繰り上げ返済と積立型保険という
二つのテーマについて、
それぞれの場面で
「本来どんな選択肢があり、
どのコストを支払い、
何を得て、何を失っているのか」
を、同じ解像度で整理していきます。
第1章|住宅ローン繰り上げ返済という選択問題
住宅ローンの繰り上げ返済は、
「利息を減らせる」「返済期間を短くできる」「精神的に楽になる」
といった理由から、堅実で合理的な選択肢として語られがちです。
しかし、繰り上げ返済を検討できるという事実は、
毎月の返済とは別に、一定の余剰キャッシュが手元にある
ことを意味しています。
この時点で、本来の選択肢は一つではありません。
同額のキャッシュを繰り上げ返済に回す
同額のキャッシュを、別の金融商品で成長させる
重要なのは、
どちらが「正しいか」ではありません。
同じ現金を投入したとき、長期的に何が起きやすいか
という点です。
ところが現実には、
繰り上げ返済は「当然やるもの」「やらないのは不真面目」
といった語られ方をしやすく、
他の選択肢が十分に並べられないまま、
意思決定が固定化されていきます。
第2章|住宅ローンという借入の性質を整理する
住宅ローンは、
他の個人向け借入と比べると、極めてローリスクに設計されています。
その理由は明確です。
第一に、不動産という物的担保があること。
返済不能に陥った場合でも、
物件を売却して現金化し、返済に充てることができます。
第二に、**団体信用生命保険(団信)**が付帯していること。
借り手が返済能力を喪失した場合でも、
残債は保険によって返済されます。
なお重要な点として、
団信の保険料は多くの場合、
別途支払うのではなく、住宅ローン金利の中に内包されています。
繰り上げ返済で得られるものは、主に次の二つです。
金利相当の確定的な支出削減
団信コスト(金利に内包されている)の支払い総額の減少
いずれも確定的で、結果が読みやすい効果です。
一方で、繰り上げ返済には明確なコストもあります。
手元の現金が減り、流動性を失う
繰り上げ返済手数料が発生する
住宅ローン控除による金利補助を失う可能性がある
これらを踏まえると、
繰り上げ返済は「当然やるべき行為」ではなく、
余剰キャッシュをどこに配分するかという選択問題
として捉える必要があります。
第3章|積立型保険という選択問題
学資保険、積立保険、終身保険といった積立型保険も、
多くの家庭が人生のどこかで直面する選択です。
これらは、
「保障もある」「貯蓄にもなる」
という分かりやすい説明で提示されます。
しかし、積立型保険の本質は
投資と保険の混合商品です。
投資とは、
将来のリターンを得るために、
自分が引き受けるリスクを分散する行為です。
一方、保険とは、
個人では支えきれない破滅的な損失を、
多人数で分担して軽くする仕組みです。
リスクを取りに行く行為と、
リスクを消す仕組み。
この二つは原理的に方向が異なります。
そのため、両者を一つの商品に混ぜると、
二重のコストが発生する
投資効率が低下する
保障も薄くなる
資金が拘束され、流動性が下がる
内部構造が分かりにくくなる
といった非効率が避けられません。
第4章|積立型保険の代替オプションが検討されない理由
積立型保険が選ばれやすい背景には、
「掛け捨ては損」「積立は得」
という直感的な理解があります。
また、
一つの商品で済むという点で、
認知負荷が低いことも理由の一つです。
しかし実際には、
積立型投資
掛け捨て保険
という明確な代替オプションが存在します。
この二つを分離して考えれば、
それぞれを目的に応じて最適化することが可能です。
にもかかわらず、
代替案が同じ条件で比較されることは稀であり、
利回り、コスト、流動性といった要素が、
十分に検討されないまま選択が行われています。
第5章|二つの問題に共通する構造
住宅ローン繰り上げ返済と積立型保険は、
理屈コネ太郎の見解では、市井にありふれた二大ファイナンス問題です。
共通する構造があります。
選択肢は存在する。
しかし、それらが十分に並べられない。
その結果、
キャッシュフロー
内部コスト
流動性
将来の選択肢
といった要素が計算されないまま、
意思決定が固定化されていきます。
そして、
「ここから先は価値観の問題だ」
という地点まで、
誰も連れて行ってくれません。
終章|結論:だから自分で計算するしかない
繰り上げ返済も、積立型保険も、
それ自体が悪い選択ではありません。
問題は、
代替案を知らないまま、
あるいは比較しないまま選ばれてしまうこと
にあります。
何を得て、何を失っているのか。
どのコストを支払い、
どの自由度を手放しているのか。
それを理解した上で選ぶことができれば、
その判断は、他人に委ねる必要はありません。
本記事が、
自分で計算し、自分で選ぶための
整理材料になれば幸いです。
