給付付き税額控除とは何か 日本は未実施の理由と制度の核心をわかりやすく解説

給付付き税額控除の仕組みを示すイメージイラスト。税金の計算書や電卓とともに、低所得の就労世帯に現金が支払われる様子を表現している。
税額控除の結果がマイナスになった場合に差額を給付するという、給付付き税額控除の核心を視覚化したイメージです。

給付付き税額控除とは、税額控除によって算出された税額がマイナスとなった場合、その差額を給付する制度です。

この説明は税制度の知識が前提となるため、直感的には分かりにくいかもしれません。

そこで分かりやすさを優先して単純化して言えば、
働いているものの所得が十分ではない人に対し、税金の計算の結果として国が現金を支払う仕組み…といえます。

米国などでは実施例がありますが、日本ではまだ導入されていません。現在の日本は、導入が決まっている段階ではなく、「仮に導入するとすればどのように設計すべきか」という議論が始まるかどうかの段階にあります。(2026年2月26日時点)

本記事では、この制度の核心、なぜ賛否が生まれるのか、日本で未実施である理由、そして今後の注目点を丁寧に整理します。


Contents

1|制度の核心

給付付き税額控除は、税制度の内部で所得移転を行う仕組みです。

通常の税額控除は、算出された税額をゼロまで減らします。しかし給付付き税額控除では、税額がゼロを下回った場合、その差額が現金として支払われます。

そのため、この制度は単なる減税とも、通常の福祉給付とも制度構造が異なります。税の計算過程から給付が発生する点が特徴です。


2|制度を設計する場合に決めるべきこと

この制度を導入するとすれば、いくつかの重要な点を政策として決定する必要があります。

  • どの所得を「就労」とみなすか

  • 対象となる所得水準をどこに設定するか

  • 最大給付額をいくらにするか

  • 所得が増えた場合にどの割合で給付を減らすか

これらは様々な立場の人の様々な意見がぶつかりあうポイントです。最終的には政策判断によって決まり、その内容が法律や計算式として具体化されます。

既存の税法上の所得区分を利用することは可能ですが、給付の増減構造は制度の目的に合わせて改めて設計されます。

現在の日本では、この「設計をどうするか」という議論が本格化しているとは言いにくく、制度理念と具体的設計の接続がこれからの課題といえます。


3|なぜ様々な議論が生まれるのか

この制度が議論の対象になる背景には、所得格差の拡大や税負担の逆進性の問題があります。

消費税は、所得が低い層ほど負担割合が高くなりやすい構造を持っています。そのため、低所得層への再分配を税制度の内部で実行する手段として、給付付き税額控除が注目されます。

一方で、無条件の給付は就労意欲に影響を与えるのではないかという懸念もあります。給付付き税額控除は、就労を条件に組み込むことで、再分配と就労インセンティブの両立を図ろうとする制度です。


4|諸外国の実施例

代表例としては、米国の
Earned Income Tax Credit が挙げられます。

この制度は、低所得の就労者に対して税を通じて給付を行う仕組みであり、長年にわたって運用されています。

英国でも類似の制度が導入されてきました。これらの国では、給付額が所得に応じて段階的に増減する設計が採られています。


5|日本で未実施の理由

記述した通り、日本では、給付付き税額控除は現在のところ導入されていません。

理由としては、いくつかの制度的課題が考えられます。

第一に、税と社会保障が分離して設計されている点です。税制度の内部で給付を行う構造に転換するには、制度の接合や再設計が必要になります。

第二に、所得把握の精度や迅速性の問題です。給付を行うには、正確でタイムリーな所得情報が前提となります。

第三に、行政コストや実務負担の問題があります。対象者の判定や給付処理には、相応の運用体制が求められます。

これらは現代の技術を用いれば解決可能なものが殆どですが、既存スキームから新規への移行はそれ自体が大きなコストとして実現の阻む大きな壁となるでしょう。

こうした課題が整理され、解決の目途た立たない限り、具体的な制度設計論に進むことは難しい状況です。


6|今後の注目点

今後の論点は、税と社会保障をどこまで統合的に設計できるかにあります。

そして、私たち国民が、この議論がどの程度の透明性を持って丁寧に進められるかを見届ける必要があります。

一部の人達による奥の院での秘密裡の決定は、今の時代では通用させない世論形成も大切です。

マイナンバー制度との連動や所得情報の迅速な把握、給付と課税の一体的な運用が進めば、制度導入の現実性は高まる可能性があります。

一方で、効果のない無駄な出費カットによる財源の確保や給付水準の決定は、最終的には政治的な選択に委ねられます。

給付付き税額控除は、理念だけでなく具体的な設計の議論が始まるかどうかが、日本における次の段階といえるでしょう。

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