Contents
はじめに|本稿の位置づけ
結婚制度と人間の欲求の不整合は、現代に固有の問題ではありません。
むしろ歴史的に一貫して存在し、各社会はそれを異なる方法で処理してきました。
本稿では、不倫を道徳や感情の問題としてではなく、
制度と欲求のズレに対する「処理方式」
として整理します。
第1章|前提整理
問題の構造は比較的単純です。
制度は固定と排他性を要求する
欲求は変動し、分散しうる
このズレに対して、社会は主に以下の方向で対処してきました。
制度側を緩める
欲求側を抑える
役割を分離する
違反コストで調整する
第2章|古代・前近代|役割分離による処理
多くの社会において、結婚は恋愛の制度ではありませんでした。
結婚=家・財産・血統の維持
恋愛・性愛=制度外で処理
具体的には、
側室制度
妾・愛人の容認
遊女・娼婦制度
などが存在し、
制度上は排他性を維持しながら、実態としては多元化する
構造が採用されていました。
この場合、ズレは隠されるのではなく、役割の分離によって処理されます。
第3章|宗教的規範社会|欲求の抑制
宗教的規範が強い社会では、別の処理が選択されます。
結婚の神聖化
姦通の禁止
制裁の強化
ここでは、
制度を強く固定し、欲求の側を抑える
ことで整合性を維持しようとします。
ただしこの方法では、
違反の不可視化
地下化
が生じやすく、ズレそのものが消えるわけではありません。
第4章|近代|統合モデルの成立
近代以降、構造は大きく変化します。
恋愛結婚の普及
個人主義の進展
家制度の弱体化
これにより、
結婚=恋愛+性+精神的結合
という統合モデルが成立します。
これは、
役割分離モデルの解体であり、
一人の相手に複数の機能を集約する構造
への転換と整理できます。
第5章|近代の問題|ズレの再発
統合モデルは一見整合的に見えますが、いくつかの前提を含んでいます。
感情の持続を前提としている
新奇性の変化を十分に織り込んでいない
承認欲求の外部性を制限している
そのため、
ズレは再び生じるが、従来の処理機構は弱まっている
状態になります。
第6章|現代|違反コストによる調整
現代社会では、次のような構造が見られます。
法的には排他性を維持する
社会的には一定の逸脱が観察される
離婚制度により関係の再編が可能
つまり、
完全な抑制でも分離でもなく、違反後のコストで調整する
方式です。
具体的には、
慰謝料
離婚
社会的評価の変化
などによって、ズレが事後的に処理されます。
第7章|整理|処理方式の比較
| 時代 | 処理方式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 古代・前近代 | 役割分離 | 制度内外で欲求を分散 |
| 宗教社会 | 抑制 | 制度を強化し欲求を制御 |
| 近代 | 統合 | 機能を一人に集約 |
| 現代 | コスト調整 | 違反後に損失で調整 |
第8章|結論
不倫は時代ごとに単純に善悪で扱われてきたわけではありません。
制度と欲求のズレをどのように処理するか
という問題に対して、各時代が異なる解法を採用してきたと整理できます。
現代は、
統合モデルを維持しつつ
ズレを事後的に処理する
という構造の上にあります。
なお、このような処理方式の差異とは別に、そもそも結婚制度自体が現在の欲求構造にどこまで適合しているのかという評価の問題が残ります。
この点については別稿で整理しています。
→ 結婚制度はどこまで現実に適合しているか|欲求との不整合を構造評価する
サイト内他の記事への移動は下記より