米国ワシントン州ブレマートンを拠点とする Life Proof Boats は、一般的なプレジャーボートメーカーというより、商用・官公庁向けの安全思想をレクリエーション艇にも持ち込んだアルミボートブランドである。運営母体は Inventech Marine Solutions, LLC。同社は Life Proof Boats と、フォームカラー製造ブランドの FAST Collars を展開しており、公式サイト上でも Life Proof Boats は Inventech Marine Solutions のブランドとして位置づけられている。
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発祥――SAFE Boatsの系譜と、Inventech Marine Solutionsからのブランド化
Life Proof Boats の発祥を語るうえで外せないのが、同じブレマートンで発展した特殊用途ボート産業の流れである。Professional BoatBuilder は、SAFE Boats International の共同創業者の一人である Bill Hansen が同社を離れ、その後、同じビジネスパーク内で Life Proof Boats を始めたと説明している。つまり Life Proof Boats は、軍・沿岸警備隊・警察・消防などに使われる高耐久アルミ艇の系譜を受け継ぐブランドと見ることができる。
会社としての起点は、2014年に設立された Inventech Marine Solutions にある。Soundings は、Micah Bowers が2014年に Inventech Marine Solutions に加わり、同社が2016年に Life Proof ブランドを立ち上げたと報じている。当初はプロトタイプやデモ艇を作る色合いが強かったが、顧客から「この船を作ってほしい」という需要が生まれ、レクリエーション艇、警察艇、商用艇へと広がっていった。
ブランド名の “Life Proof” は、単なるマーケティング上の言葉ではない。Life Proof Boats の基本思想は、過酷な海況でも人命と任務を守ることにある。フォームカラー、自己排水デッキ、予備浮力、厚いアルミ構造、ショック軽減シートなど、プロフェッショナル艇の要素をプレジャー用途にも展開している点が、同社の個性になっている。
ボートの特徴――アルミ船体、フォームカラー、自己排水構造
Life Proof Boats の最大の特徴は、商用グレードのアルミ船体とフォームカラーの組み合わせである。同社は船体素材として 5086 H116 グレードのアルミプレートを使うと説明しており、溶接後の強度や耐食性を重視した構造を採っている。船体はCNCで切り出された部材を組み、内部には“エッグクレート”状の連結構造や、船体中央部を強くするIビーム的な構造を取り入れている。

外観上もっとも目を引くのは、船体側面を囲う太いフォームカラーだ。これは一般的な空気式チューブではなく、フォームを使った浮力・安定性確保の仕組みである。Inventech Marine Solutions は、Life Proof Boats の特徴として「buoyancy collars」による安定性と冗長浮力を挙げており、同時に自己排水デッキ、ショック軽減シート、折り畳み式バウドア、ウォークスルー式カディなどを特徴として紹介している。
安全性へのこだわりは、浮力だけではない。同社の説明では、船体の空洞部には閉鎖気泡フォームを入れたバッグを配置し、フォームカラーと合わせて予備浮力を確保する。デッキは自己排水式で、水をかぶっても短時間で排水できる構造を売りにしている。荒天、着岸、ダイビング、警備、救助など、船が水をかぶる状況を前提にした設計思想である。
ラインアップは幅広い。公式サイトでは、レクリエーション向けの Pleasure Craft、高級志向の Yachtline、官公庁・商用向けの Professionals が大きな柱として示されている。プレジャー艇では27フィート級から50フィート級までのキャビン艇、ランナバウト、ウォークアラウンド、GT Coupe などがあり、Yachtline では33〜50フィート級のキャビン艇やテンダー艇が展開されている。
資本構成――非上場の民間LLC、詳細な持分比率は非公開
資本構成については、上場企業のような株主構成、出資比率、売上高、利益、借入残高は公開されていない。公開情報から整理できるのは、Life Proof Boats が Inventech Marine Solutions, LLC のブランド、またはDBAとして使われていること、そして Inventech Marine Solutions がワシントン州の有限責任会社として登録されていることだ。Mercer Island 市の調達資料でも、契約先は “Inventech Marine Solutions LLC, DBA Life Proof Boats” と記載されている。
州登記情報をまとめた公開データベースでは、Inventech Marine Solutions, LLC はワシントン州の営利LLCで、ステータスは Active、設立日は2014年3月3日とされている。また、役員・ガバナーとして Gary Seibert、Jenson Charnell、Micah Bowers、William M. Hansen の名前が掲載されている。ただし、これは持分比率や議決権割合を示すものではない。
経営陣については、公式サイトで Micah Bowers が CEO、JensOn Charnell が President と紹介されている。Inventech Marine Solutions のLinkedInページでは同社は “Privately Held”、Life Proof Boats のLinkedInページでは “Self-Owned” と表示され、会社規模はいずれも51〜200名規模とされている。したがって、公開情報ベースでは「創業者・経営陣中心の非上場LLC」と捉えるのが妥当だが、正確な出資者構成や資本政策は外部からは確認できない。
現在の経営状態――受注残と設備拡張が目立つ成長局面
Inventech Marine Solutions / Life Proof Boats の現在の経営状態は、公開された財務諸表がないため、売上・利益・キャッシュフローから直接評価することはできない。しかし、官公庁契約、補助金、設備拡張、採用・研修情報を見る限り、縮小局面というより 生産能力を増やしながら受注を消化している成長局面と見るのが自然である。
大きな材料は、米国沿岸警備隊向けの CB-OTH V 契約である。WorkBoat は2022年、Inventech Marine Solutions が最大200隻、潜在的な10年契約、総額1億360万ドルの契約を獲得したと報じた。米沿岸警備隊の2024年資料でも、CB-OTH V は Inventech Marine Solutions が担当し、4隻納入済み、28隻発注済み、最大200隻という枠組みが示されている。
州の経済開発資料からも、拡張基調が読み取れる。ワシントン州商務省は、2024年に Inventech Marine Solutions へ20万ドルの Evergreen Manufacturing Growth Grant を交付し、Kitsap Economic Development Alliance を通じて同社の製造スペース倍増を支援したと説明している。2026年の州記事では、この支援により製造スペースが9万平方フィートへ拡大し、より大型の船を造り、生産を効率化し、雇用を生み出せるようになったという Micah Bowers のコメントが紹介されている。
人材面でも、受注拡大に対応する動きが見える。ワシントン州の職業訓練関連資料では、Inventech Marine Solutions が Life Proof Boats と FAST Collars を展開し、沿岸警備隊向けの大型契約を受けて大幅な拡張が必要になっていること、さらにNYPDを含む顧客向けの3年分の受注残があることが説明されている。同資料では、同社が従業員研修を進め、5名を新規採用し、3名を管理職に昇格させたことも記載されている。
地方自治体向けの案件も続いている。Mercer Island 市の資料では、同市が Inventech Marine Solutions LLC, DBA Life Proof Boats に新しいマリンパトロール艇の建造・納入を委託する方針が示され、総費用は約66万ドル、2026年6月1日までの納入予定とされている。こうした案件は、同社が連邦政府向けだけでなく、州・市・警察・消防などの実務用途でも受注基盤を持っていることを示す。
技術面では、AI航行支援システムとの連携も進めている。2025年には LOOKOUT が Inventech Marine Solutions / Life Proof Boats との提携を発表し、Life Proof の商用・レクリエーション艇でAIを使った物標検知・航行支援システムをオプション提供できると説明した。高耐久アルミ艇に加えて、センサー、ディスプレイ、航行支援を組み合わせる方向は、同社が単なる船体メーカーからミッション対応プラットフォームメーカーへ広がろうとしていることを示している。
一方で、成長局面には課題もある。非上場企業であるため財務健全性は外部から検証しにくく、大型政府契約への対応、熟練溶接工の確保、品質管理、納期管理、労働安全衛生などが経営上の重要テーマになる。2026年のOSHA関連公開記録には Inventech Marine Solutions の検査案件が掲載されており、製造現場の管理体制も継続的な注意点といえる。これは経営危機を示すものではないが、急成長する製造業企業としてオペレーション管理の重みが増していることは確かだ。
総評
Life Proof Boats は、見た目の迫力だけで売るボートブランドではない。背景には、ブレマートンの特殊用途ボート産業、フォームカラー技術、5086アルミ船体、官公庁向けの安全要件がある。レクリエーション艇であっても、思想は「遊びの船」より「任務に耐える船」に近い。
資本構成は非公開部分が多いものの、公開情報からは Inventech Marine Solutions, LLC が運営する非上場・民間のLLCブランドであり、Micah Bowers を中心とする経営体制のもと、政府契約と民間販売の両方で成長している企業と整理できる。現在の経営状態については、売上や利益こそ確認できないが、沿岸警備隊向け大型契約、3年分の受注残、製造スペース拡張、自治体向け納入案件を見る限り、Life Proof Boats は拡張フェーズにある。課題は、その成長を品質・納期・人材・安全管理の面でどこまで安定的に支えられるかにある。
