問題職員の確認調査と指導・リカレント教育

問題職員の確認調査と指導・リカレント教育
問題社員のリカレント教育

Contents

はじめに

産業医としての経験から、職場における問題職員の確認調査と、その後の指導・リカレント教育について述べます。これが、同様の課題に直面している方々の参考になれば幸いです。

問題職員の定義

本記事で扱う「問題職員」とは、就業規則を遵守しているものの、以下のいずれかの行動をとる職員を指します。

  1. 業務を遂行しない

  2. 職場の雰囲気を悪化させる

これらの行動は、職場の士気を低下させ、定着率の低下や事業所の競争力の低下につながる可能性があります。

問題職員の確認の難しさ

問題職員の行動は、上司の目には見えにくいことが多いです。これは、彼らが就業規則を守りつつ、意図的に上司の目を避けて問題行動をとることに長けているためです。

また、上司が問題行動を確認し、直接指導を行った場合でも、問題職員は「上司の個人的な偏見によって問題視された」と感じ、被害者意識を抱くことがあります。

同僚からの視点の重要性

同じ職位の同僚からは、問題職員の職務怠慢や職場の雰囲気を悪化させる行動がよく見えています。したがって、問題職員の確認には、上司の評価とは別に、同職位の同僚からの厳格な手法で実施された360度評価的な調査方法が必要です。

厳格な調査方法の要点

効果的な調査を行うためには、以下のポイントを厳守する必要があります。

  • 調査方法の十分な事前説明

  • 調査実施者の第三者性

  • アンケート回答者の匿名性

  • 集計や評価計算方法の透明性

  • 調査結果の適切な公開

これらの要点を守ることで、調査の信頼性と公平性が確保されます。

調査の効果

厳格な調査を実施することで、以下の効果が期待できます。

  1. 調査の予告により、問題職員に一定のシグナルを送り、問題行動の変容を促す。

  2. 調査結果を「客観的事実」として問題職員に提示することで、上司の独断や偏見による判断ではないことを示し、被害者意識を回避できる。

  3. 問題職員が確認され、職務継続の希望がある場合、カウンセリング、指導、リカレント教育などを実施し、問題行動の少ない職員への変容を期待できる。

指導・リカレント教育の実施

指導やリカレント教育を実施する際には、問題職員の言い分をきちんと傾聴することが重要です。調査結果をもって一方的に改善や行動変容を求めるのではなく、共に改善していこうとする態度や気持ちが、指導・リカレント教育の実施者には求められます。

このような寄り添う気持ちを持った指導者の方が、そうでない指導者に比べて教育効果や指導効果が高いことが分かっています。

認知バイアスへの理解の重要性

問題職員が自らの行動を正当化し、指導を受け入れにくい背景には、認知バイアスが関与している可能性があります。例えば、以下のようなバイアスが考えられます。

  • 確証バイアス:自分の信念を支持する情報だけを集め、反する情報を無視する傾向。

  • 自己奉仕バイアス:成功は自分の能力、失敗は他人や環境のせいにする傾向。

これらのバイアスにより、問題職員は自らの問題行動を認識しにくくなります。認知バイアスについての詳細は、以下の記事をご参照ください。

おわりに

問題職員の行動に悩む担当者の方々にとって、適切な確認調査と指導・リカレント教育は、職場の健全性を保つための重要な手段です。共に改善を目指す姿勢と、認知バイアスへの理解を持って取り組むことが、効果的な対応につながります。


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この記事が、問題職員への対応に悩む方々の一助となれば幸いです。

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