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「お客様は神様です」の原点
「お客様は神様です」という言葉の本当の意味を、あらためて丁寧に紐解いてみたいと思います。
この言葉を広く知らしめたのは、昭和を代表する国民的歌手・**三波春夫(みなみ はるお)**です。
三波は、戦後の日本を励まし、祝い、勇気づけるような数々のヒット曲を世に送り出しました。紅白歌合戦にも長年出場し、「日本の心」を歌い上げる存在として、多くの人に親しまれていました。
そんな彼が「お客様は神様です」と語ったとき、その背後には深い精神性と、舞台に立つ者としての覚悟が込められていたのです。
三波春夫の「真意」とは
三波春夫の意図は、単なる接客用語や顧客優先主義を説いたものではありませんでした。彼は、次のような趣旨でこの言葉を用いていたとされています。
「私の歌を聞くために会場に足を運んでくださるお客様は、まるで神様のように私のすべてを見通す存在だ。だから私は、ひとつの曇りもない“まことの心”で、全身全霊を込めて歌を届けるのだ」
つまり、「神様」のような高位の存在としてお客様を扱うというよりも、「自らを律し、真摯に向き合う対象」としての比喩だったのです。
和歌に通じる精神性
三波の言葉の背景には、古くから日本人に息づく「神に対して恥じぬ誠実さ」という価値観があると考えられます。
例えば、**明治天皇の御製(ぎょせい/和歌)**には、次のような歌があります。
『目に見えぬ 神に向かいて恥じざるは 人の心のまことなりけり』
この歌が示すように、「神様」とは人知を超えた存在であり、その存在に対して恥じることのない“まこと”こそが人のあるべき姿だとされてきました。
理屈コネ太郎の私見ではありますが、三波春夫もこの和歌を知っていた可能性が高く、それゆえに「神様に歌を捧げるように、誠の心で歌いたい」という思いを「お客様は神様です」の言葉に込めたのではないかと感じています。
誤解されてしまった「お客様は神様」
しかし現代では、この言葉の解釈が大きく歪められて流通しています。
「お金を払っているのだから、客の方が上の立場である」
「店や演者は、客に対して頭を下げるのが当然である」
「横柄な態度も“神様”だから許される」…など
こうした顧客至上主義やサービス過剰の象徴として、この言葉が都合よく使われているのは残念なことです。
「お客様=神様」という構図が、実際の現場での無理難題やクレームの正当化につながっているのであれば、それは本来の意義とは真逆の使われ方だといえるでしょう。
三波春夫の声を直接聞いてみよう
三波春夫はすでに鬼籍に入っていますが、彼の言葉、歌、精神は現在も彼の公式Webサイトに受け継がれています。
「お客様は神様です」の真意を、文字や解釈ではなく、本人の語りや舞台姿から直接体験してみるのが何よりです。
理屈コネ太郎のこの記事も個人の解釈を含んでいますので、興味のある方はぜひ一度ご自身で確認してみてください。