FIREについての理屈コネ太郎の私見──自由の“質”を決めるのは50〜60代

中高年の人物が高い山の頂点に立って遠景を見渡し、 そのはるか下の別の峰の頂点では、若い人物が両手を上げて「FIRE達成」と叫んでいる構図の白地×黒線風デジタルイラスト。 二人の視界の違いと“自由の質”の差が象徴的に描かれている。
IREについての理屈コネ太郎の私見

Contents

■ はじめに

FIRE(早期リタイア)は、若くして生活に困らないだけの資産形成を達成した人が口にする言葉である。
この功績それ自体は素晴らしい。
相応の知性、判断力、努力、そして運がなければ到達できない領域であり、誰よりも誇ってよい成果だ。

しかし、FIREが“人生の完成形”だとは限らない。
その後の人生をどれだけ豊かにできるかは、
リタイアした年齢よりも、50〜60代にどこまで成熟しているか によって決まる。

人間の自由には、「自由に行動できる期間」という限界がある。
男性であればおよそ75歳まで、女性であればおよそ80歳までが、身体的にも社会的にも自由が最大化する時期だ。
この限られた“自由の時間”を最も豊かに使い切るためには、若くして負荷から離れるよりも、むしろ負荷に身を置く時期が必要になる。


■ 第1章 若くしてのFIREは“成果”であって“完成”ではない

FIREできるほどの資産形成を若い段階で成し遂げた人は、
一般の人生モデルを大きく先んじている。
それは成果であり、価値であり、賞賛されるべき事柄である。

しかしそこで仕事を離れ、負荷の少ない生活に入ってしまうと、
人生の成熟をもたらす重要な過程を逃す可能性がある。

リタイアは自由をもたらすが、
自由は「何もしない状態」から生まれるものではない。
自分という存在が深まり、厚みを持って初めて、本物の自由を味わうことができる。


■ 第2章 人間の生活史的ピークは50〜60代にある

人間の精神的ピークは、若い頃ではない。
経験が蓄積し、判断が洗練され、世界観が成熟し、
「人としての完成形」に近づく年代は、一般に50〜60代である。

この年代には次のような力が大きく伸びる。

  • 練り上げられた世界観

  • 幅の広い人間理解

  • 誤解しない力(認知の精度)

  • 社会や歴史を見る眼

  • 自分の限界と可能性の把握

  • 本質を見る判断力

  • 人生を俯瞰する視点

現役として負荷を引き受け、責任を果たし、挑戦と摩擦の中で鍛えられた人だけが到達できる地点である。

50〜60代での“高さ”が、その後の30年の人生の豊かさを決める。


■ 第3章 仕事は“収入源”ではなく“鍛錬装置”である

働くことには、単に収入を得る以上の意味がある。

  • 責任を負う

  • 人間関係を調整する

  • 困難に向き合う

  • 認知の精度を上げる

  • 判断力を鍛える

  • 忍耐力を磨く

  • 他者と協働する

これらはすべて、人間を深くする負荷である。
この負荷を50〜60代まで受け続けることで、

  • 精神の安定

  • 観察眼

  • 社会観

  • 歴史観

  • 自己理解

といった「自由を支える基礎体力」が形成される。

若くして負荷から離れると、この成長のプロセスを自ら閉ざしてしまう。


■ 第4章 資産は働き続けることで自然と倍化する

若くして経済的自由を得た人が、
50〜60代まで働き続けることには実利的な意味もある。

年率5〜6%の運用が続けば、
20年〜30年で資産は数倍に成長する。
これは資産形成の世界では当たり前の計算である。

  • 若くしてFIREできるほどの資産 → 50〜60代で“数倍の資産”へと進化

  • 積み上げた人的資本 → 成熟した判断力・世界観を形成

この二つが揃ったとき、
自由の質は飛躍的に高まる。


■ 第5章 50〜60代の自由は“若年FIREの自由”とは質が違う

若くして手に入る自由は、

  • 時間がある

  • 働かなくてよい

  • 場所に縛られない

という 外側の自由である。

一方、50〜60代で獲得できる自由は、

  • 深い世界観

  • 誤解しない力

  • 人間への洞察

  • 長期視点

  • 落ち着いた精神

  • 数倍に膨れ上がった資産

  • 自分の人生を自分で選び取ってきたという確かな手応え

という 内側から湧き上がる“成熟した自由” である。

若年期の自由と比べ、
その質は圧倒的に高い。


■ 結び

FIREできるほどの資産を若くして築いたことは立派であり、その事実は称賛されるべきである。
しかし、そこをゴールにしてすぐに負荷から離れることは、
その後の人生で得られる“自由の質”を低めてしまう可能性がある。

人間の生活史的ピークである50〜60代まで、
負荷の中で自分を鍛え続けること。

そうすることで、

  • 成熟した世界観

  • 深い人間理解

  • 誤解しない力

  • 豊かな社会観・歴史観

  • そして数倍に増えた資産

という、人生の後半を圧倒的に豊かにする力が揃う。

若い頃のFIREでは得られない、
“成熟した自由” がそこに存在する。

FIREは終着点ではない。
本当の自由を手に入れるための、ひとつの通過点にすぎない。


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