理屈コネ太郎は、ドライバーが自らのスキル発揮を最大化するという観点において、合理的な順序が存在すると考えています。
本記事の目的は、改造項目を網羅的に列挙することではありません。
本記事の目的は、ドライバーのスキル発揮を最大化するための優先順位を、ひとつの考え方として整理することにあります。そのため、ドレスアップ目的のカスタム・チューニングについては言及しません。
Contents
第1章|操作系と接地系を基盤とする理由
定義
操作系カスタム・チューニングとは、ドライバーの身体が直接接触し、車両へ操作を与える装置群を整えることを指します。具体的には、ステアリング、シフトレバーとノブ、シート、ペダル類などです。これらの配置とドライバーの体型との関係性を改善することを目指します。
接地系カスタム・チューニングとは、路面と車両の間で機能する部品を変更・調整することで、車両の走行性能の上限を引き上げることを目指す取り組みです。
接地系カスタム・チューニングの具体像
接地系カスタム・チューニングは多岐にわたりますが、ここではドライバーが走行現場で比較的調整や変更が可能な内容に限って述べます。
クルマの挙動をさまざまな変数によって変化させることは、非常に興味深い体験です。
減衰装置(ダンパー、ショックアブソーバー、あるいは単にショック)の減衰力を調整するだけでも、クルマの挙動は大きく変わります。
さらに、車高を上げたり下げたり、あるいは前後別々に高さを変えたりすることで、ロールセンターやピッチング挙動、左右の荷重移動特性にも影響を与えることができます。こうした調整が可能になると、スポーツドライビングはより奥深いものになります。
スプリング交換まで行えるようになると、挙動変化はさらに明確になります。
そうした要望に応える商品が、俗に車高調(シャコチョー)と呼ばれるパーツです。車高調については別記事車高調とは何か|減衰・ジオメトリー・ロールセンターまで分解する本質解説で詳述しました。
実際の車高調は、ダンパーとスプリングがセットになって販売されており、どの製品を選ぶかによって付属するスプリングはほぼ一種類(多くても数種類)に限定されます。
構造上、スプリング交換は比較的手間がかかるため、サーキットなどの走行現場で現実的に調整できるのは、①減衰、②車高に限られることが多いでしょう。
ただし、車高を変更するとサスペンションジオメトリーが変化します。
ジオメトリーが変化すると、アライメントの再調整が必要になります。
アライメントの再調整は、走行現場では容易ではありません。
そのため、現実的にドライバーが走行現場で安全に調整できるのは、主として減衰になる場合が多いと考えられます。
接地系カスタム・チューニングの領域は非常に奥深いものです。
そして接地系カスタム・チューニングは、基本的にドライバーオリエンテッドな取り組みといえるでしょう。
プロに依頼する場合でも、大規模加工や内部破壊を伴うものではないケースが一般的です。
変更は比較的可逆的であることが多いといえます。
接地系カスタム・チューニングにおいて、車高調と同等かそれ以上に重要なのがタイヤです。
タイヤは地面に接する唯一の部位です。タイヤの状態に注意を払えるようになると、スポーツドライビングの質は大きく向上すると言われています。
理屈コネ太郎の経験でも、その傾向は概ね妥当だと感じています。
そしてタイヤは消耗品です。
少し本気で走るだけでも摩耗は進みます。そのため、頻繁に走るドライバーは、グリップ性能と耐久性、価格のバランスが取れたタイヤの情報を常に探しています。
操作系と接地系がもたらす効果
操作系を整えると、ドライバーの操作再現性が高まります。
接地系を整備すると、路面との摩擦限界や車両姿勢が安定します。
操作系と接地系が適切に整えられた車両は、ドライバーにとって扱いやすく、結果として速さにもつながりやすい状態になります。
ドライバーのスキル発揮を目的とするのであれば、この二系統の整備だけでも十分な面白さや充実感が得られる場合が多いと考えています。
費用と心理的境界
車両や部品を自費で購入している一般ドライバーにとって、操作系と接地系の変更は比較的現実的な費用範囲に収まることが多いでしょう。
電子制御変更や動力系内部変更と比較すると、金額規模や不可逆性、心理的ハードルはいずれも低い傾向があります。
そのため理屈コネ太郎は、接地系までを「ドライバー視点における合理的な上限」と位置づけています。
第3章|駆動系は長い歴史で実績あり
変速機やLSDのカスタム・チューニングは、メカニズムとしての歴史も長く、成熟した領域にあるといえます。
操作系と接地系のチューニングに一定の経験を積んだうえで、変速比率やLSDの強度変更を検討することは、ひとつの選択肢でしょう。
駆動系のカスタム・チューニングは、比較的明確な変化をもたらす変更であるため、体感的な手応えも得やすい領域です。
第4章|吸排気系は可逆性の最終段階
吸排気系のカスタム・チューニングは、出力効率系に属します。
理屈コネ太郎は、吸排気系の変更を「ノーマルに戻せる最終地点」と位置づけています。電子制御や内部変更へ進む前であれば、原状回復は比較的容易です。
ただし、現代車では純正吸排気の完成度は非常に高いものがあります。
メーカーが行う膨大な実証実験に匹敵するデータを提示できる社外メーカーは限られているでしょう。
そのため、吸排気変更による体感効果は限定的である場合も少なくありません。
第5章|電子制御変更の境界
現代車の電子制御には、誤作動予防プロテクトが組み込まれています。それは内発的なバグだけでなく、悪意ある乗っ取りへの対策も意識して設計されているはずです。
日々膨大な台数の電子制御車両が走行しています。ドライブアシスト機能や自動運転機能を備えた車両も増えています。これらが悪意をもって乗っ取られた場合の影響は、決して小さくありません。
そのため、電子制御は各メーカーによってブラックボックス化されていると考えられます。
自動車は組込み製品です。
組込み製品とは、特定の目的を果たす機械や装置の中に専用コンピュータが組み込まれている製品を指します。
組込み製品は外部信号による機能乗っ取りを想定して設計されます。自動車も高いレベルで乗っ取り防止が意識されているはずです。
そのため、制御系が不測の信号を検知した場合、性能を制限する設計思想が採用されていると考えられます。
目的がチューニングであっても、電子制御変更は制御体系への意図的な介入です。
純正マネジメントを撤廃し、社外エンジンマネジメントへ換装するという選択肢も存在します。
しかし理屈コネ太郎は、対象車種での十分な実績が確認できない場合、その信頼性を純正と同等には評価しません。
評価可能な実例数は限られています。
流通する情報には一定のフィルターがかかっている可能性もあります。
電子制御変更は、ドライバー視点というよりも、エンジニアやメカニック視点の行為といえるでしょう。
メーカー視点から見れば、チューニング目的であっても設計思想から逸脱する行為と評価される可能性があります。
この点は十分に意識しておくべきです。
第6章|動力系内部変更は最終段階
結論
理屈コネ太郎は、現代車のカスタム・チューニングを次のような順序で捉えています。
操作系
接地系
駆動系
吸排気系
電子制御変更
物理的動力変更
ドライバーのスキル発揮を目的とするのであれば、まずは操作系と接地系の整備だけでも十分な成果が得られる場合が多いと考えています。
その先へ進む場合は、目的適合性とリスクを十分に理解したうえで、段階的に検討することが望ましいでしょう。
