Contents
はじめに|老後の生活の質を左右する四つの壁
セカンドライフを豊かに生きるうえで、避けて通れない四つの難問がある。
それは、**退屈・寂寥感・生活資金・健康(および死生観)**である。
この四つは、精神・社会・経済・身体という人間の基盤をそれぞれ揺るがす。
理屈コネ太郎の経験から見ても、この四領域をどう理解し、どう備えるかが、人生後半の幸福度を大きく左右する。
本稿では、退屈と寂寥感については事前に知っておくべきことと、起きたあとの向き合い方を。
そして生活資金・健康については、早いうちから意識すべき現実的な備えと考え方を述べていく。
退屈との戦い|行動の空白が心を蝕む
退屈は、セカンドライフ初期数年で多く現れる敵だ。
退職によって社会的役割を失うと、日々のルーチンが消え、時間が余る。
最初のうちは解放感に満たされるが、やがて「何をしていいのか分からない」という焦燥が生まれる。
この状態が続くと、無気力や軽いうつ状態に陥り、心の健康を損なう。
退屈を防ぐ最良の方法は、自由時間が増える前に何かを始める助走をつけておくことだ。
定年前から興味を育て、複数の趣味や挑戦を同時進行的に行って愉しみの芽を見つけておく。
趣味についての記事は別記事「考えて選んだ趣味は趣味じゃない|“好き”は思考の外にある」と「覚醒するほど面白いシニア趣味12選|元医師が実体験で厳選!」に詳述してあるので、参考にしてほしい。
現役中に始めた小さな試みが、セカンドライフの支えになる。
もしすでに退屈を感じているなら、まず動くことだ。
新しいことを学び、知らない場所に行き、何かを始める。
人は動き出した瞬間に、再び生きる力を取り戻す。
そしてもし、何かに夢中になっているときは感じない体調不良を、何もしていない時だけ感じるようになったら、病気より先に退屈を疑ってほしい。
特に、些細な身体の変化を必要以上に気にするようになったら、それは退屈のサインである。
寂寥感と孤独|尊厳をどう保つか
孤独と寂寥感は似て非なる。
孤独は物理的、あるいは心理的に一人の状態だが、そこには楽しい孤独もある。
私、理屈コネ太郎は一人でボートに乗って魚を追いかけたり、SUP-FOILしたり、無人のビーチに上陸したりしているが、心身ともに一人での行動だが、実に楽しい。
一方、寂寥感は「自分が誰からも必要とされていない」と感じてしまう精神状態である。
寂寥感は、社会的尊厳の喪失と深く関係している。
この感覚が強まると、自己肯定感が低下し、生きる意欲が失われる。
孤独は人と会えば癒せるが、寂寥感は他者といても消えないことがある。
克服の鍵は、他者にとっての自分の価値を再確認することだ。
何もなければボランティアでも地域活動でもよいが、理想はやはり「働くこと」だろう。
働くことで頼られ、社会の一部としての自分の意味と尊厳を感じることができる。
社会的尊厳を持ち続ける人は、たとえ孤独でも寂しくはない。
あくまで理屈コネ太郎の言語感覚だが、寂寥感のない孤独は、孤高と呼ばれる状態だと思う。
生活資金不足|備えは定年前から
生活資金不足は、セカンドライフにおける経済的不安の源である。
だが、この問題に老後から取り組んでも手遅れだ。
唯一の対策は、定年前からの長期的備えである。
現実的な行動は次の四点に尽きる。
コツコツ働き続けて所得を最大化すること。
可処分所得の一定割合を必ず積み立てること。
その積立をインデックス投資などで長期運用すること。
自営業者は、経費を過度に計上しないこと。
過剰な節税は将来の自分を貧しくする。
所得税を納めた後の残りが本当の可処分所得であり、そこからしか貯金や積立資金は生まれない。
経費を増やして所得を圧縮すると、貯金や投資に回せる原資そのものが非常に圧縮される。
税を払えることは健全な利益の証だ。
「税金を払う=稼げている」という感覚を持つ人ほど、長期的に安定した老後を迎えやすい。
健康と死生観|“生き方”を再設計する
健康は確かに重要だが、過度なこだわりは生活を窮屈にする。
「健康でなければ価値がない」という発想は、かえって不安を増やす。
サプリや健康食品に依存して体調を崩す人も少なくない。
人間にとって、病と死は避けられない現実だ。
だからこそ、セカンドライフのうちにどう生きて、どう死ぬかを考えることが大切である。
まだ判断力のあるうちに、人生の後半戦に向けて設計を見直しておきたい。
この点については別記事「セカンドライフのキホンのキ|それは何歳から始まるのか?」に詳述しているので、参照してほしい。
それは単なる終活ではなく、自分の人生後半の生き方を確かめる作業でもある。
死を恐れるより、死を前提に生を考える。
その覚悟こそが、残された時間を自由に使うための鍵だ。
まとめ|四つの課題を知ることが、豊かさの第一歩
退屈・寂寥感・生活資金・健康と死生観。
この四つの課題をどう受け止めるかで、セカンドライフの質は大きく変わる。
退屈と寂寥感は、心の姿勢と日々の行動で克服できる。
生活資金は、定年前の備えによってしか解決できない。
健康と死生観は、過剰な恐れを手放し、限りある生をどう生きるかという問題に他ならない。
この四大難問を理解し、備え、受け入れること。
それこそが、理屈コネ太郎が考える「成熟したセカンドライフ」への道である。