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はじめに|「〇〇関数」に出会った瞬間に起きていること
経済学、心理学、行動科学、AI、医療、政策分析。
こうした領域をまたいで学習や研究を進めていくと、
効用関数、評価関数、価値関数、報酬関数といった
「〇〇関数」という言葉に、繰り返し出会います。
そのたびに、学習者の頭の中では次のような反応が起きます。
これは自分の知らない新しい話ではないか
重要な前提を見落としているのではないか
一から学ばなければならないのではないか
この反応は自然です。
問題は、そのまま「新規学習が必要だ」と決め打ちしてしまうことです。
この決め打ちが、不要な学習コストを発生させます。
本記事の目的は明確です。
初見の「〇〇関数」に出会ったとき、
それにどう対応すべきかを、即座に判断できるようになること。
初見の「〇〇関数」は三つに分けられる
新しく出会った「〇〇関数」は、
ほぼ例外なく次の三つのどれかに分類できます。
① 知っていることを、少し操作すればよいもの
考え方の骨格はすでに知っており、
見る対象が少し違う
整理の仕方が少し違う
といった理由で、
既存の理解に軽い調整が加えられているケースです。
この場合、
既存の理解を土台にして差分だけを確認すれば十分です。
② 知っていることを、そのまま用いればよいもの
中身や構造は既に知っている概念と同じで、
名前だけが変わっているケースです。
分野や文脈の違いによって、
別の呼び方が選ばれているだけで、
新しく学ぶべき内容はほとんどありません。
この場合、
既存の知識をそのまま対応づけて処理すれば足ります。
③ 自分にとって、本当に新しく学ぶ必要があるもの
これまで自分が身につけてきた枠組みでは扱えず、
新しい考え方として学ぶ必要があるケースです。
重要なのは、
ここでいう「新しい」とは、
その分野で新しいかどうか
理論史的に新しいかどうか
ではない、という点です。
あくまで「自分の中に対応する理解の土台があるかどうか」
が判断基準です。
問題は、①や②まで新しく学ぶ対象として扱ってしまうこと
ここが、本記事の核心です。
学習者が意図して立ち止まらない限り、
①や②に該当するものまで、
「新しく学ばなければならない対象」として
まとめて扱ってしまいます。
理由は単純です。
新しい名前が付いている
分野が違う
この二点だけで、人は
「これは新しい概念だ」
「一から学ばなければならない」
と判断してしまいます。
その結果、
既存の知識をそのまま使えば済む②
少し手直しすれば理解できる①
までが、
新規学習対象として処理され、
膨大な無駄な認知負荷を引き受けることになります。
判別のためにやることは一つだけ
初見の「〇〇関数」に出会ったとき、
やるべきことは多くありません。
重要なのは、
自分の頭の中だけで抱え込まないことです。
この段階で必要なのは、
深い理解でも、厳密な定義でもありません。
どの箱に入るかを決めることだけです。
わかっている誰かに尋ねる
そのために有効なのが、
わかっている誰かに尋ねることです。
ただし、人間相手の場合、
相手を選ぶのが面倒
気を遣う
文脈の違いで話が噛み合わない
最悪の場合、誤った説明を受け取る
といった問題が生じることもあります。
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そこで、現代では
AIに虚心坦懐に質問する方法が、
非常に扱いやすい手段になります。
AIに説明させてみる
具体的には、その「〇〇関数」について、
「私は○○という分野の基礎知識を持っています。
この〇〇関数が指している内容を、
その前提で説明してください。」
と、AIに投げてみます。
ポイントは、
自分がすでに知っている範囲を前提条件として与えることです。
応答を見れば、分類はほぼ決まる
AIの説明を見たとき、
次のどれに当たるかを確認します。
「それなら知っている話だ」
→ ② 知っていることをそのまま使えばよい「なるほど、そこを少し調整すればよいのか」
→ ① 知っていることを少し操作すればよい「前提となる考え方自体が抜けている」
→ ③ 新しく学ぶ必要がある
この時点では、
正確に理解できている必要はありません。
分類できれば十分です。
①や②が多く生じるのは、人間の営みとして自然である
①や②が頻発するのは、
誰かが不誠実だからでも、
知的に怠慢だからでもありません。
分野が変われば、言葉も変わる
境界を引くために名称が変わる
新しい名前は、新しく見える
こうした振る舞いは、
学術に限らず、人間社会全体で普通に見られます。
重要なのは、どう受け止めるか
①や②だと判断できたときに重要なのは、
認知負荷や学習コストを下げられてラッキーだと受け止め、
素直に幸福になることです。
②なら、既存の理解がそのまま使える。
①なら、最小限の調整で済む。
それは、時間と知的体力を節約できたという意味での成功です。
一方で、ここで
再ラベリングした人たちに対して、
「その名称変更にどんな意義や有効性があるのかを明示してほしい」
という気持ちが湧いてくるのも、自然な反応です。
もし再ラベリングという現象がこの世に存在しないのであれば、
そもそも
「これは再ラベリングかもしれない」
という可能性を、最初から検討する必要はありません。
しかし現実には、再ラベリングは頻繁に起きます。
だからこそ学習者側は、
その意義や有効性が明示されていない場合に備えて、
自分自身で①②③を判別し、
学習コストを制御する必要があります。
その意味で、
ここで感じる小さな違和感や要求は、
不当なものではありません。
おわりに|「どう対応するか」を決めるための記事として
本記事が伝えたかったことは、ただ一つです。
「〇〇関数」に出会ったら、
まず①②③のどれかを判断する。
それだけで、
不必要な学習負荷を避け
認知資源を適切に配分し
学際的な議論にも健全に関われる
ようになります。
この記事は、
〇〇関数を説明するためのものではありません。
〇〇関数にどう対応するかを決めるための、
判断手順を書いた記事です。
この視点を持っていれば、
これから先、どんな「〇〇関数」に出会っても、
必要以上に振り回されることはありません。
ところで、この記事で触れた考え方は、学習中に遭遇するありとあらゆる「初見の言葉」にも通用します。初見の言葉にであったら、辟易する気持ちを抑えて、AIにその言葉の意味を訪ねてみましょう。殆どの場合、解決してくれるはずですから。
