ラップタイムは、クルマの性能やドライバーの巧拙をすべて決める数字ではありません。
しかし、一定のコースと条件のもとで、どれだけ速く走れたかを測る尺度として、これほど明快なものもありません。
私は後期型GRヤリスDATの完全ノーマル車で、最近通い始めた全長3.5kmのサーキットを1分52秒318で走り、自己ベストを更新しました。
本記事では、このタイムを平均速度とコース特性から筑波サーキットTC2000へ換算し、推定約1分07秒4という数字が、一般のスポーツ走行ではどの程度の位置にあるのかを考えます。
もちろん、異なるコース間の換算には限界があります。TC2000を実際に走らなければ、本当のタイムは分かりません。
それでもラップタイムは、蘊蓄や理屈、年齢や言い訳を排し、現時点の技量を数字として返します。
冷酷ではありますが、ドライバーにとって、これほど正直で頼もしい道標もありません。
ラップタイムの前では蘊蓄も言い訳も通用しない
クルマの運転の巧拙を測る基準は、速さだけではありません。
安全に走る技術、同乗者に不快感を与えない操作、燃費を抑える運転、雨や雪の中でクルマを安定させる能力など、運転技術にはさまざまな側面があります。
しかし、速く走るためには、間違いなく一定以上の技量が必要です。
ラップタイムとは、蘊蓄、理屈、年齢、条件、お気持ちといった周辺情報をすべて取り払い、数字という一次元でドライビングを評価する装置です。
速く走る技量を計測する手段として、これほど明快な尺度は他にありません。
そこには、言い訳の余地がほとんどありません。
語りの巧拙も、背景説明も、外見の秀麗さも、同情も関係ありません。記録として残るのは、刻まれた数字だけです。
だからこそ、ラップタイムには意味があります。
だからこそ、人はそこに没入し、追求する価値を見いだします。
その冷酷さを引き受ける覚悟がある者にとって、ラップタイムは何よりも正直な答えを返してくれる、頼もしい道標です。
後期型GRヤリスDATで自己ベストを更新
本日、最近通い始めたサーキットで自己ベストを更新しました。
タイムは、1分52秒318です。
使用したクルマは、弐号機である後期型GRヤリスDATです。
足回り、ブレーキ、タイヤを含めて、走行に関わる部分は完全なノーマル状態です。
ただし、この数字だけを見ても、どの程度の位置にあるタイムなのかは分かりにくいと思います。
私が走っているのは、ローカル色の強い、いわゆるマイナーコースです。多くのドライバーが共通の基準として理解できるコースではありません。
そこで、この1分52秒318がどの程度のタイムなのかを伝えるために、筑波サーキットTC2000に換算するとどれくらいになるのかを考えてみました。
理想はパーセンタイルによる換算
異なるサーキットのラップタイムを比較する場合、理想的なのは、それぞれのコースにおける走行タイムの分布を調べ、同じパーセンタイル同士を対応させる方法です。
例えば、あるサーキットで上位20%に入るタイムが、筑波TC2000では何秒に相当するのかを比較します。
この方法であれば、コース全長や平均速度だけではなく、それぞれのコースで実際に記録されているタイムの分布を基準にできます。
しかし現実には、今回走行したローカルサーキットについて、車種、改造状態、タイヤ、ドライバーの経験などを整理した十分な統計データが存在しません。
したがって、パーセンタイルを用いた換算は成立しないと判断しました。
次善策として平均速度から換算する
そこで代替案として採用したのが、平均速度を基準にし、コース特性による補正を加える方法です。
まず、今回のラップタイムを平均速度に直します。
コース全長は3.5km、ラップタイムは1分52秒318です。
1分52秒318は、秒に直すと112.318秒です。
したがって、平均速度は次のようになります。
3.5km ÷ 112.318秒 × 3600 ≒ 112.18km/h
今回の走行における平均速度は、約112.18km/hです。
筑波TC2000とのコース特性の違い
次に、この平均速度をそのまま筑波TC2000へ当てはめてよいかを考えます。
筑波TC2000は、比較的短いストレートと複数のコーナーを組み合わせた、テクニカル寄りのレイアウトとして知られています。
一方、私が走行したローカルサーキットには長いストレートがあり、筑波TC2000よりも平均速度が高くなりやすいと推定できます。
そのため、筑波TC2000に換算する際には、平均速度を少し下げる方向の補正が必要です。
どの程度下げるべきかを厳密に確定することはできません。
そこで、AIを補助的に使用して両コースの全長やレイアウトを比較し、コース特性による平均速度低下の妥当な幅として、2~5km/h程度を想定しました。
本記事では、その中間に近いマイナス3km/hを補正値として採用します。
筑波TC2000での推定平均速度は、次のようになります。
112.18-3=109.18km/h
筑波TC2000では推定1分07秒4
筑波TC2000のコース全長は2.045kmです。
このコースを平均速度109.18km/hで走ると仮定すると、推定タイムは次のようになります。
2.045km ÷ 109.18km/h × 3600 ≒ 67.4秒
したがって、筑波TC2000換算では、
推定1分07秒4前後
となります。
もちろん、これはあくまで推定値です。
実際にTC2000を走れば、1分07秒4より速い可能性も、遅い可能性もあります。
コーナーの得意不得意、ブレーキングの習熟度、走行ラインへの適応、路面状態、気温、タイヤの状態などによって、結果は大きく変わります。
今回の換算は、実走タイムを予言するものではなく、現在のタイムがどの程度の位置にあるのかを考えるための参考値です。
筑波TC2000で1分07秒台とはどの程度か
では、筑波TC2000で1分07秒台というタイムは、一般のスポーツ走行ではどの程度の位置なのでしょうか。
AIに参考評価を求めたところ、次のような回答が返ってきました。
一般走行の世界では速い側のドライバーです。走行会では上位グループに入ることが多く、「上手な人」というより「速い人」として扱われる領域です。
AIが示した一般的な目安は、次のようなものでした。
- 1分12秒~1分10秒:初心者、または経験の浅いドライバー
- 1分09秒~1分08秒:一定程度走れるドライバー
- 1分07秒台:速い側、走行会の上位グループ
- 1分06秒台以下:ドライバー、クルマ、タイヤ、走行条件が揃った領域
この分類によれば、1分07秒4前後は、一般のスポーツ走行では「速い側」に入るタイムです。
ただし、これも公式統計に基づく厳密な区分ではありません。車種、改造範囲、タイヤ、気温、路面状態によってタイムの意味は異なります。
あくまで、一般的な位置を把握するための参考評価です。
完全ノーマルという条件
筑波TC2000で1分07秒台という数字自体は、改造された車両であれば、極端に珍しいものではないでしょう。
しかし、今回の条件は次のとおりです。
- 後期型GRヤリスDAT
- 純正サスペンション
- 純正ブレーキ
- 純正電子制御
- 純正タイヤ
- エンジンや駆動系もノーマル
走行会の参加者名簿に、
GRヤリスDAT/1分07秒4/完全ノーマル
と書かれていれば、周囲から「十分に速い」と評価される水準だということです。
クルマの改造によって得た速さではなく、市販状態の車両を操作して得た数字である点には、私にとって一定の意味があります。
どのようなドライバー像なのか
AIによれば、筑波TC2000で純正GRヤリスDATを1分07秒台で走らせるドライバーには、次のような特徴があると推定されるそうです。
- ブレーキングで慌てない
- コーナー進入速度を過度に欲張らない
- 立ち上がりで大きなロスを作らない
- 周回ごとのタイムのばらつきが比較的小さい
派手な操作や一発芸ではなく、再現性のある速さを持つドライバーです。
これはプロや本格的なタイムアタック競技者の領域にはまったく及びません。
しかし、「上手な一般人」や「少し速い人」だけでは表現しきれない水準だという評価でした。
このAIの評価を、以前レッスンを受けたプロレーサーに見せたところ、
ああ、だいたい合っています。理屈コネ太郎さん、そんな感じですよ。
という趣旨の返答をもらいました。
AIの推定と、実際に私の運転を見たプロレーサーの印象が、おおむね一致したことになります。
61歳のドライバーとして喜ぶ
私は現在61歳です。
年齢を理由にタイムが加算されることはありません。シニアだからという理由で、計測器が手加減してくれることもありません。
若いドライバーも、経験豊富なドライバーも、同じコース上では同じ時計によって評価されます。
だからこそ、今回の自己ベスト更新は素直に嬉しい出来事です。
ただし、この評価は、今回の換算方法に大きな瑕疵がないことを前提としています。
実際に筑波TC2000を走らなければ、本当のところは分かりません。
その不確かさを十分に理解したうえで、それでも今回は心から喜ぼうと思います。
ラップタイムが教えてくれたこと
考えてみれば、四輪サーキットでもレンタルカートでも、私がきちんとタイムを計測し始めたのは昨年からです。
昨年末に一度だけ受けたプロレーサーの指導も、確実に効果をもたらしました。
しかし、それ以上に強く感じていることがあります。
それは、これまでストリートやワインディングで積み重ねてきた修練が、ようやくサーキットという場所で、数字として返ってきたという実感です。
もちろん、公道で速さを追求すべきではありません。
それでも、日常の運転やワインディングで身につけてきた操作の丁寧さ、クルマの挙動への注意、荷重移動への感覚、ブレーキやアクセルの扱い方は、サーキットでも無駄にはならなかったのだと思います。
それらが、ラップタイムという数字になって現れました。
ラップタイムは慰めないが、嘘もつかない
ラップタイムは、ドライバーを慰めてくれません。
年齢に配慮することもありません。背景事情を聞いてくれることも、努力を評価して数字を上乗せしてくれることもありません。
忖度は一切ありません。
しかし、嘘もつきません。
速ければ速い数字が残り、遅ければ遅い数字が残ります。
その原因がクルマにあるのか、ドライバーにあるのか、走行条件にあるのかは、数字だけでは分かりません。
それでも、その日、その条件、そのクルマで、自分がどれだけ速く走れたのかだけは正確に記録されます。
だからこそ、ラップタイムには没入する価値があり、追求する意味があります。
蘊蓄も言い訳も通用しない世界で、これまでの修練が一つの数字として返ってきました。
実に、嬉しい出来事です。
理屈コネ太郎のラップタイムの推移は、別記事サーキット走行でのタイム変化の記録に纏めてあります。