子育ては一般に、家庭の問題として理解されています。
子どもは親のものであり、妊娠・出産・育児は基本的に家庭の責任である。
この考え方は、多くの社会で自然なものとして受け入れられています。
しかし少し視点を変えて考えてみると、子どもは単なる家庭の問題にとどまりません。
子どもは成長すると
労働力
納税者
社会保障の担い手
になります。
つまり子どもは
社会全体に利益をもたらす存在
でもあります。
この点から見ると、子育ては単なる私的問題ではなく、社会的な意味を持つ活動とも言えます。
本記事では
子供は私的財なのか
それとも公共財なのか
子育てにはどのような外部性があるのか
という点を整理してみます。
Contents
子育ては本来家庭の活動
まず前提として、子育ては基本的に家庭の活動です。
妊娠・出産・育児は
親の身体
親の時間
親の資源
によって支えられます。
特に幼児期の子どもは、親との強い関係を必要とします。
多くの哺乳類で見られるように、母親と子どもの結びつきは非常に強いものです。
人間社会でもこの傾向は強く、家庭は
子どもにとっての安全基地
として機能します。
このため子育てを完全に社会化する試みは、必ずしも成功していません。
例えばイスラエルのキブツでは、かつて集団育児の実験が行われましたが、最終的には多くの共同体で親子同居型に戻りました。
この事例は、家庭という単位が子育てにおいて依然として重要であることを示しています。
しかし子供には外部性がある
一方で子どもは、家庭だけに影響を与える存在ではありません。
子どもは成長すると
労働者
消費者
納税者
になります。
つまり子どもは
社会の未来を支える存在
でもあります。
ここで問題になるのが
外部性
です。
外部性とは、ある行為の影響が当事者以外にも及ぶことを意味します。
子育ての場合
コストは家庭が負担する
利益は社会全体が受け取る
という構造があります。
つまり子育ては
社会的利益を生む私的活動
と言えます。
子供の外部性を家庭に帰着させる問題
現代社会では、この外部性の問題が制度的にほとんど解決されていません。
子育てに必要な
時間
収入の機会損失
教育費
精神的負担
といったコストは、主に家庭が引き受けています。
特に現代では
共働き社会
教育費の上昇
キャリア機会の損失
などがあり、子育ての負担は決して小さくありません。
しかし子どもが成長した後の利益は
社会全体が享受します。
つまり
親がコストを負担し
社会が利益を得る
という構造です。
これは経済学で言う
外部性とインセンティブのズレ
に当たります。
少子化との関係
この構造は、少子化の原因の一つとも考えられます。
子どもを持つことによって
親は大きなコストを負担する
社会は長期的利益を得る
という状況では、個人レベルでは
子どもを持たない方が合理的
と判断される場合もあります。
その結果として社会全体では
出生率の低下
人口減少
社会保障の不安定化
といった問題が生まれます。
つまり少子化は単に
若者の価値観
結婚観の変化
だけで説明できる問題ではなく、
制度的なインセンティブの問題
でもあります。
社会はどこまで子育てを支えるべきか
この問題に対して、多くの国では
保育制度
教育制度
児童手当
などの政策を整備しています。
これは
子育ての社会化
の一種です。
しかし子育てを完全に社会化することは難しい面もあります。
子どもは単なる社会資源ではなく
感情
愛着
家族関係
の中で育つ存在だからです。
そのため現実の社会では
家庭と社会の役割分担
という形が取られることが多くなっています。
結婚制度との関係
この問題は、結婚制度とも深く関係しています。
歴史的に結婚は
家庭形成
子育て
世代再生産
を支える制度でした。
しかし現代社会では
未婚
晩婚
離婚
が増え、婚姻制度も変化しています。
この点については次の記事で整理しています。
→ 結婚制度は本質を失ったのか|恋愛結婚が生んだ制度の空洞化
まとめ
子育ては本来、家庭の活動です。
しかし子どもは成長すると社会に大きな影響を与える存在でもあります。
そのため子育ては
私的活動
社会的活動
という二つの側面を持っています。
つまり子どもは
完全な私的財でも完全な公共財でもない
存在です。
子育てを理解するためには
家庭
社会
制度
という複数の視点が必要になります。
結婚制度の全体像については、次の記事で整理しています。