FFがアンダーステアになりやすい理由 ☆ 前後重量配分と加速から解説

FF(前置きエンジン・前輪駆動)がアンダーステアになりやすい理由は、前輪に求められる力が、その前輪の能力に対して大きくなりやすいことにあります。

前寄りの重心によって、前輪は旋回に必要な力の大きな割合を担当します。さらに加速時には、同じ前輪に駆動力も求められます。この要求の重なりを、タイヤが出せる力との関係から考えると、FFの特性が見えてきます。

アンダーステアとは何か

工学的には、平坦な路面で同じ半径の円を安定して走るとき、速度が高いほど大きな舵角を必要とする特性をアンダーステアと呼びます。舵角とは、操舵によって前輪の向きを変える角度です。タイヤの能力に余裕がある範囲では、必要な舵角を与えることで、その円に沿って旋回できます。

一方、限界付近のアンダーステアは、前輪が後輪より先に横方向の力を十分に増やせなくなり、ハンドルを切り足しても思ったほど曲がらず、コーナーの外側へ膨らむ挙動として現れます。

この記事では、主にこの**「前輪が先に旋回の限界へ近づきやすくなる理由」**を説明します。

前寄りの重心は、前輪が担当する横力を増やす

一般的なFFでは、エンジンや変速機が車体前方に集まるため、重心が前寄りになり、前輪が車重の大きな割合を支えます。

この前後重量配分は、旋回に必要な力の分担にも関係します。車が曲がるときには、前輪と後輪の両方が、進行方向を変えるための横方向の力を発生させています。この力を「横力」と呼びます。

平坦な路面を、一定の速度・半径で旋回する状態を考えます。空力などの影響を省いた単純なモデルでは、前後の横力の割合は、静止時の前後重量配分にほぼ対応します。例えば、前輪が車重の60%を支える車なら、旋回に必要な横力も、おおむね60%を前輪が担当します。これは、前後の横力が重心のまわりに及ぼす回転作用を、つり合わせる必要があるためです。

タイヤの能力は、荷重より緩やかに増える

タイヤを路面に押し付ける力を「接地荷重」と呼びます。同じタイヤを同じ条件で比べると、接地荷重が増えるほど、発生できる最大横力も一般に増えます。

ここで、前後に同じ種類・サイズのタイヤを使い、加減速や左右への荷重移動などを省いて考えます。

仮に、タイヤの最大横力が接地荷重に比例するなら、前輪が車重の60%を支える車では、前輪が発生できる最大横力も、前後合計の60%になります。必要な横力も60%なので、最大能力に対して必要な横力が占める割合は、前後で等しくなります。 この仮定の下では、前後のタイヤは同じ割合で能力を使いながら、限界へ近づくと考えられます。

しかし、実際のタイヤでは、最大横力の増え方は荷重の増え方より緩やかです。荷重が大きくなるほど、荷重当たりに発生できる最大横力は小さくなります。これがタイヤの「荷重感度」です。

したがって、先ほどの条件では、前輪は必要な横力に対して能力の余裕が小さくなり、後輪より先に限界へ近づきやすくなります。前寄りの重量配分と、荷重に対するタイヤの能力の増え方。この二つの組み合わせが、ここでの要点です。

加速すると、前輪の旋回余力がさらに小さくなる

ここまでの重心位置とタイヤの性質に、FFでは前輪駆動という条件が加わります。コーナーで強く加速すると、前輪には二つの変化が重なります。

駆動力にも、タイヤの能力を使う

FFの前輪は、旋回のための横力と、加速のための駆動力を同時に発生させます。

タイヤが発生できる縦方向と横方向の力には、組み合わせとしての限界があります。同じ接地荷重で比べれば、大きな駆動力を出すほど、同時に発生できる横力の上限は小さくなります。この限界を円で模式的に表したものが「摩擦円」です。

前輪の接地荷重が減る

加速すると、前輪の接地荷重が減り、後輪の接地荷重が増えます。これが、後方への荷重移動です。前輪荷重の減少は、前輪が発生できる力の上限を下げる方向に働きます。

つまり、旋回に大きな横力が必要な前輪で、駆動力の要求が増える一方、接地荷重は減るのです。すでに前輪が限界に近い状態では、旋回に必要な横力を維持できなくなり、車は外側へ膨らみやすくなります。これが、FFで特に加速中のアンダーステアが強まりやすい仕組みです。

実車では、タイヤと車両設定で旋回性能を高める

前輪に必要な能力を確保する

FFスポーツで前輪の能力を高める方法の一つが、幅広い高性能タイヤの採用です。幅に加えて、構造やゴムの配合も含めて性能を高めます。例えば、2022年発表のシビック TYPE Rでは、タイヤ幅の拡大とミシュランとの専用タイヤ開発によって、旋回性能の向上が図られています。

また、前後同サイズのタイヤには、定期的なローテーションによって、前輪で進みやすい摩耗を4本に分散できる利点があります。こうした使い方を前提にすれば、前輪の性能要求に合わせた幅広いタイヤを後輪にも用いることには、維持管理上の合理性もあります。

前後の限界の迎え方を整える

タイヤの能力を高めることは、旋回限界の向上につながります。一方、前後どちらが先に限界へ達するかは、タイヤと重量配分、サスペンションなどの組み合わせで決まります。旋回限界の高さと、前後の限界の迎え方は、分けて考える必要があります。

例えば、旋回中には内側から外側へ荷重が移ります。他の条件が同じなら、車体の横方向への傾きに抵抗する硬さである「ロール剛性」の割合を前側で高めると、前輪の左右荷重差が大きくなります。すると、タイヤの荷重感度によって、前輪2本を合わせた最大横力が低下する方向に働きます。サスペンションの設定は、こうした前後のバランスを調整する手段です。

さらに、左右の駆動力配分や各輪のブレーキを調整し、加速時のアンダーステアを抑える制御を備えた車両もあります。

前後の余裕は、運転操作によっても変わる

加速とは反対に、減速すると荷重は前方へ移ります。コーナーで急にアクセルを戻して減速した際、後輪荷重が減って必要な横力を維持できなくなると、後部が外側へ流れるオーバーステアに移る場合があります。

FFのアンダーステア傾向を理解する要点は、重心位置によって決まる力の分担と、タイヤの能力、加減速によって変わる余裕を結び付けて考えることです。その関係にタイヤ選定や車両設定が加わり、実際の旋回性能と挙動が決まります。


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作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

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