診察室で「先生、友人から聞いたんですが…」といった質問をした経験はありませんか?
実はこうした何気ない問いかけが、医師を密かに困らせていることがあります。
本記事では、現役医師の視点から、なぜ医師が患者の要望や質問に戸惑うのかを解説します。
その背景には、医学的・法的な制約、診療ガイドライン、そして医療全体の効率性といった現代医療のリアルが横たわっています。
患者と医師がより良い信頼関係を築くために、今私たちが知っておくべき医療現場の事情とは?――
医師の立場や医療制度への理解を深めたいすべての人へ、分かりやすくお届けします。
Contents
医師が患者の質問に困惑する理由
診察室では、医師が患者の質問に対して明確な答えを出さないことがあります。
これには理由があります。医師は、多忙な中でエビデンスレベルの明確なガイドラインに基づく最善の診療を提供することに集中しており、
患者が持ち込む情報源(例えば友人ネットワークやマスメディアの影響)に対応する時間や余裕がないからです。
医師が考慮しているのは、以下の要素に基づいた診療行為です:
医学的合理性(診療ガイドラインその他)
法律的合理性
患者本人の希望
患者の安全性と利益
たとえば、長年続けてきた治療法で患者の状態が安定している場合でも、
患者が「〇〇の方が効くと友人から聞いたのですが?」と尋ねたとします。
この時、医師は「現在の治療が最適かどうか」に基づいて判断しています。
患者の個人的ネットワークやメディア情報は、文脈が異なっていたり、医学的根拠が乏しいことが多く、
それらだけで治療方針を変更することは基本的にありません。
民間療法への対応:医師の立場
多くの患者が民間療法に関する質問を医師に投げかけます。
これもまた医師を困らせる原因の一つです。
医師が民間療法について強く否定したり、逆に肯定したりしないのは、
その効果や安全性について医師自身が責任を負える立場にないからです。
責任は、その療法を提供する側にあるべきであり、医師が軽々しく評価を下すことはできません。
具体例:
ある糖尿病患者が、インスリン治療を受けながら、知人から聞いた民間療法を試したいと相談した場合──
医師の対応は以下のようになります:
医学的には現状の治療が最適であることを説明する
民間療法の効果や安全性に関しては責任を負えないことを明言する
最終的な判断は患者本人が行うべきであると伝える
このように、医師は丁寧に対応しつつも、自らが医学的責任を持てない選択には関与できません。
医師と患者の信頼関係を築くには?
医師と患者がWin-Winの関係を築くためには、双方の理解と協力が不可欠です。
以下のポイントが重要です。
医師の立場を理解する
医師は、診療ガイドラインや医学的エビデンスに基づいて診療を行っています。
これは、患者の安全を第一に考えた上での判断であることを理解しましょう。
質問の適切な相手を見極める
民間療法やテレビ・SNS等の情報についての疑問は、
その情報源や療法の提供者に確認するのが筋です。
医師は「情報の精査者」ではなく「医療行為の実行者」です。
インフォームドコンセントを尊重する
現代医療では、患者の意思を尊重する「インフォームドコンセント」が基本となっています。
患者自身も正確な情報を得て、自ら判断を下す姿勢が求められます。
結論:医師が「困惑する要望や質問」を避けるために
医師が患者の要望や質問に困惑するのは、それらがしばしば医療ガイドラインや科学的根拠の範囲外にあるからです。
医師は、すべての患者に対して最善を尽くしたいと願っていますが、
非医学的な話題や過度な要求に対応する時間は限られており、
それらが医療全体の効率を損なう可能性もあります。
患者としては、医師の立場と医療の枠組みを理解したうえで、
信頼と納得のある医療コミュニケーションを築くことが大切です。
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