初心者にとって良いボートとは|変わる興味に付き合う一艇の選び方

理屈コネ太郎の経験則から、初心者にとって良いボートとは、持ち主の移り替わる興味に付き合ってくれるボートです。

なぜなら、初めてボートを買おうと考えている段階では、自分がどのようなボート遊びをするか、全く分からないからです。だからボートを使うあらゆるアクティビティーに興味が向く可能性がある。その、可能性に対応できるボートが、初心者にとって良いボート…と言えると私は考えています。

最初は単にただただ漠然と船に乗りたいだけかもしれません。
しかし、実際に所有してみると、船に乗っているだけでは退屈なので釣りをしてみたくなるかもしれません。
近場で遊ぶつもりだったのに、少し遠くの港まで行くボート旅に魅力を感じるかもしれません。
家族や友人を乗せるつもりだったのに、一人で海に出て静かに過ごす時間が一番大切になるかもしれません。

つまり、初心者にとっての良いボートとは、購入前の興味だけに最適化されたボートではありません。

所有し、使い、試していく中で変わっていく興味を受け止めて、思いつきを実現させてくれて、オーナーのボート遊びの愉しみを発見させてくれるボートです。

ボート購入後に起こりやすい後悔のパターンについては、別記事『プレジャーボート購入で後悔しないために|実体験から分かった4つの落とし穴と対策』でも詳しく述べています。

Contents

良いボートとは、遊びを発見するパートナー

明確に「コレをやるために船を買う」場合以外では、初めてのボート選びで重要なのは、ひとつの遊びに特化したボートを選ばないことです。

釣りだけに特化したボートは、釣りには便利です。
しかし、家族や友人とゆっくり過ごしたいと思ったときには、不便を感じるかもしれません。

見た目や快適性だけで選んだボートは、揺れる航行中の快適な居場所や荷物の置き場所がないかもしれません。

初心者にとっての良いボートとは、ひとつの目的にだけ強いボートではありません。

クルージングもできる。
荷物も積める。
少し遠くにも行ける。
一人でも扱える。
釣りもできる。
家族や友人を乗せても安心できる。

このように、複数の遊び方に対応できるボートこそ、初心者にとっての良いボートです。

使って、試していく中で、自分に合った遊び方に付き合ってくれて、実現できるボート。

オーナーの興味の移ろいや変化に付き合ってくれるボートこそ、初めての一艇として「良いボート」なのです。

初めてのマイボート選び全体については、別記事『初めてのマイボートの選び方|全体的な事柄』でも整理しています。

ボート遊びには、いくつもの方向性がある

ボート遊びといっても、その内容は多様です。

まず誰もが考える、釣り。

ボート釣りは、岸からの釣りとは違います。
魚のいる場所を探して自分から移動できるため、人によっては「狩り」の高揚感を味わえるようです。

あるいは、すこし入り組んだ入り江の奥にアンカリングして、落ち着いて寡黙に釣りに集中するのもよいでしょう。舵を任せられるヘルムマンがいる場合、ソルトフライフィッシングを愉しんでいる人も居ます。

また、穏やかな海での快適な速度域でのクルージングもあります。

速く走るのではなく、ゆっくり走る。
海面と船の挙動が程よく馴染む速度で航行する。
風景を眺める。
海の上で考えごとをする。(勿論周囲監視を怠ってはいけません)
陸上の生活から少し距離を置く。

突然、鳥山を発見する場合もある。
気が向けば鳥山に移動して、間に合えば竿を出せば入れ食い状態を味わえます。

これは、ボートならではの楽しみ方です。

そして、陸路では行きにくい場所へ、ボートで行く遊びがあります。

地理的に車では行きにくい海岸、入り江、平水域、港町。
そういう場所へ自分のボートで行けることは、ボート所有の大きな魅力です。

さらに、長距離ボート旅という遊び方もあります。特に少し距離のある島に渡るのは、ボート遊び特権と言えるでしょう。

少し遠くのマリーナへ行く。
離島に渡る、
別の海域へ移動する。
船に泊まる。
車や電車とは違う移動感覚を味わう。

海という自然の中で、自分の身体を守ってくれるボートに強い親しみを覚える遊び方です。

このように、ボート遊びには複数の方向性があります。

そして初心者は、そのうちどれが自分に一番合っているのか、最初から正確には分かりません。

ボートに乗り、実際に楽しんでいく過程で次第に分かってくる、内面から湧いてくる興味や好奇心があるのです。

だから、初めて買うボートには、湧き出る興味や好奇心に付き合えるだけの余裕が必要なのです。

燃料タンク容量の大きいボートは、遊びの自由度が高い

良いボートの条件として、まず重要なのが燃料タンク容量です。

燃料タンクの小さいボートは航続距離が短く、行動範囲が限られます。

もちろん、近場で遊ぶだけなら問題ありません。
しかし、少し遠くのマリーナへ行きたい、別の海域まで走りたい、天候や海況を見ながら余裕を持って速やかに帰りたい、と考えると、燃料の余裕は非常に重要になります。

燃料タンクが大きいと航続距離に余裕が出て、目的地の選択肢が増えます。

少し遠くのポイントまで行ける。
短時間のクルージングだけでなく、日帰り、あるいは船中泊込みのボート旅もできる。
予定変更にも対応しやすくなる。

もうひとつ、燃料タンク容量に着目する理由があります。それは、必要な場面で、燃費を犠牲にしてでも速い速度域を選ぶ余裕が生まれることです。

海上で、急激に天候が変化する気配を感じた場合は勿論、大事な用件を突然思い出したり、船上で急病人が出たりして、とにかくできるだけ短時間で帰港して危険を回避したり、次の一手を打ちたいときがあります。

そういう場面で、残った燃料と燃料消費率を探りながら、速度を抑えて航行せざるを得ないのは、かなりストレスがたまります。

そんな時に燃料タンク容量が大きければ、残った十分な燃料を使って、海況が許す範囲で速い速度域を選ぶことができます。

ですから、燃料タンク容量に余裕があることは、とても大切なのです。

燃料と距離と速度の余裕は、安心感と自由度に直結します。

燃料タンクが大きいボートは、単に速く遠くへ行けるボートではありません。
遊び方と安全マージンを広げられるボートです。

風や日差しから乗員を守れること

次に重要なのは、乗員を風や日差しから守ってくれるボートであることです。

ボートは屋外の乗り物です。

海の上では、風、日差し、雨、波しぶきの影響を強く受けます。

海面がフラットな晴れている日は気持ち良くても、海上の紫外線はかなり強烈です。
走行風は体温を奪います。
波しぶきがかかれば、乗員は疲れます。

ボート遊びは自然の中での遊びです。実際に遊ぶうえでは、紫外線や風や波しぶきから体を守る快適性と防護性が重要になります。

キャビン、ハードトップ、ウインドシールド、日除け、風除け。

こうした装備があるボートは、操船者だけでなく、同乗者の疲労も減らします。

特に家族や友人を乗せる場合、これは重要です。

同乗者が寒い、暑い、濡れる、疲れると感じれば、ボート遊びそのものが続きにくくなります。

良いボートとは、操船者だけが楽しいボートではありません。
乗っている人全体を守れるボートです。

荷物や遊び道具を積めること

ボート遊びでは、想像以上に荷物が増えます。

飲み物。
食べ物。
着替え。
タオル。
掃除道具。
工具。
予備品。
水遊びの道具。

最初は身軽に遊ぶつもりでも、実際にはいろいろな物を積むようになります。

そのため、積載力のあるボートは使いやすいです。

積載が少ないボートや、デッキが狭いボートは、使っているうちに不便が出ます。

荷物を置く場所がない。
釣り道具が邪魔になる。
クーラーボックスの置き場に困る。
ロープやフェンダーが散らかる。
濡れた物と乾いた物を分けにくい。

こうした小さな不便は、実際のボート遊びではかなり大きなストレスになります。

何をして遊ぶかがまだ決まっていない初心者ほど、荷物や遊び道具を無理なく積載できるボートを選ぶのがよいでしょう。

アフトデッキは、広さよりもフラットであることが大切

ボートの使いやすさを考えるうえで、アフトデッキは非常に重要です。

アフトデッキとは、船体後方のデッキ部分です。

ここは、釣り、荷物の積み下ろし、クーラーボックスの置き場、水遊びの準備、ロープ作業、フェンダーの扱い、乗り降り、接岸時の作業など、さまざまな場面で使われます。

つまり、アフトデッキは単なる後方スペースではありません。
ボート遊びの作業場であり、遊び場であり、安全確保のためのスペースでもあります。

ここの造作しだいで、ボート遊びの幅や楽しさがぐっと広がります。

ここで重要なのは、単純な広さではありません。
まず優先すべきなのは、デッキがフラットであることです。

一見広く見えるデッキでも、段差や凹凸が多ければ、海上では危険です。

海上ではボートは揺れるので、陸上の歩行とは全く違う足運びとなり、小さな段差で躓いて転倒するからです。

揺れに対応して足の位置を少しずらすような場合には、通常の歩行する場合と比べて、ほとんど摺り足に近い運動になります。こうした場面で、凹凸のあるデッキは極めて宜しくない。

特に、釣りをしているとき、ロープを扱うとき、接岸作業をするとき、荷物を持って移動するときには、足元の安全性が重要です。

だから、初心者がボートを選ぶときには、アフトデッキの広さだけを見るべきではなく、凹凸が少なく、フラットで、足元を確認しやすく、作業しやすいアフトデッキかどうかを見るべきです。摺り足で問題なく移動できるか…がひとつのポイントでしょう。

もちろん、フラットなうえで広ければ理想的です。
しかし、デッキの広さは船体サイズによって大きく規定されます。

小さなボートには、小さなデッキしかありません。
大きなボートであれば、デッキも広くなりやすいです。

そのため、初心者がまず見るべきポイントは、絶対的な広さではなく、限られた面積の中でどれだけフラットで安全に使えるかです。

フラットなアフトデッキは、釣りにも、クルージングにも、荷物の積み下ろしにも、接岸作業にも使いやすいです。

初心者にとって良いボートとは、広く見えるデッキを持つボートではありません。
海上で安全に立ち、動き、作業できるフラットなアフトデッキを持つボートです。

シングルハンドで扱えること

初めてボートを買う初心者にとって、見落としがちですが非常に重要なのが、シングルハンドで扱えることです。

シングルハンドとは、一人でボートを扱うことです。

離岸する。
航行する。
接岸する。
係留する。

これらを一人で完遂できるボートは、非常に使いやすいです。

ボートは、毎回必ず誰かが手伝ってくれるとは限りません。
友人や家族の予定に合わせていると、自分が海に出たいタイミングで出られないことがあります。

一人で扱えるボートであれば、海に出るハードルが大きく下がります。

もちろん、初心者がいきなり無理をして一人で出ましょう…という意味ではありません。
最初は練習が必要です。

ボートは自動車と違って舵が後方ですから、自動車でいうところの内輪差がありません。外輪差的な挙動、キックとよばれる、が推進形式によってはかなり強くでます。

だから、自動車における縦列駐車や後進駐車のように、接舷や離岸はみっちりと練習する必要がある。その練習を1人で出来るかどうか…がポイントです。

ですから、一人で扱いやすいボートかどうかは、最初のボート選びでかなり重要です。

良いボートとは、誰かに頼らないと使えないボートではありません。
自分一人でも、安全に離岸、航行、接岸を完結できるボートです。

小さいボートが初心者向けとは限らない

初心者向けというと、小さいボートを想像する人もいます。

たしかに、小さいボートには利点があります。

価格が抑えられる。
保管費用も比較的安い。
取り回しが軽い。
燃料消費も少ない。
扱いやすいので気軽に乗れる。

しかし、小さいボートが常に初心者向けとは限りません。

小さいボートは、風や波の影響を受けやすい。
荷物を積む余裕が少ない場合もあります。
乗員を風や日差しから守りにくい場合もあります。
航続距離が短く、行動範囲が狭くなることもあります。

つまり、小さいことは遊びの可能性を狭くする…とも言えます。

初めてボートを買う初心者にはこの点を良く考えてもらいたいです。

そのボートが、自分がこれから発見していく遊び方に対応できるボートなのか?

その意味では、ある程度のサイズ、航続距離、積載力、居住性があるボートの方が、初心者に向いている場合もあります。

もちろん、サイズが大きければ良いわけではありません。

大きなボートは、維持費も高くなります。
離岸や接岸の難易度も上がる場合があります。
保管場所やマリーナの制約も受けます。

大切なのは、購入価格だけで予算を使い切らず、係留費、整備費、修理費、燃料費、練習費用を残したうえで、自分が安全に維持・運用できる範囲内で、できるだけ余裕のあるボートを選ぶことです。

ここでいう予算とは、係留費用とは別に、新艇であれば船の価格の1.5倍、中古船なら船の3倍くらいです。相場に比べて廉価な中古艇は4倍くらいかかるかもしれません。

ボートのサイズや船首形状、室内空間と航行性能の関係については、別記事『初めてのマイボート選び|室内空間と航行性能のトレードオフとは?』で詳しく述べています。

初心者向けの良いボートに必要な条件

ここまでを整理すると、初めてボートを買う初心者にとっての良いボートの要件は次のように整理できます。

まず、多くの用途に使えそうなこと。

一人での運用が容易であること。

アフトデッキがフラットであること。

タンク容量が大きいこと。

乗員を風や日差しから守れる構造があることです。

荷物や遊び道具を積めることです。

予算の範囲内で(予算の捉え方は既述した通り)できるだけ大きな船を購入すること

自分の可能性を広げてくれるのが良いボート

ボート選びでは、スペック、価格、デザインに目が行きます。

もちろん、それらも大切です。

しかし、初めてボートを買う初心者にとって本当に大切なのは、そのボートが自分の興味の変化に付き合ってくれるかどうかです。

まだ自分が何を一番楽しいと感じるのか分からない。
釣りが好きになるかもしれない。
島巡りが好きになるかもしれない。
海の上で静かに考える時間が好きになるかもしれない。
長距離を移動するボート旅に魅力を感じるかもしれない。
外洋に出て大物を狙う釣りをしたくなるかもしれない。

その可能性を最初から狭めないボートが、初心者にとっての良いボートです。

初めてボートを買う初心者にとっての良いボートとは、いろいろな遊びに対応でき、自分のボート遊びを発見させてくれるボートです。

初心者にとって、良いボートとは、移り替わる興味、それはオーナーの成長と言ってもよい、に付き合ってくれるボートなのです。

作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

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