核兵器廃絶が理想。でもまずは核保有隣国への抑止力を考えよう

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日本は唯一の被爆国――だからこそ問われる「安全保障」

日本は、核攻撃を受けた世界で唯一の国である。しかも二度も核攻撃を受けている。この二度の核攻撃は20万人以上の命を奪い、生存者には深刻な健康被害や社会的困難をもたらした。私は、この経験から日本人が核兵器の非人道性を深く理解している一方で、その戦略的意義については十分に認識していないと考える。

「非核三原則」が生んだ議論の空白

戦後の日本は平和主義を掲げ、1967年に佐藤栄作首相が提唱した「非核三原則」を採用した。「持たず、作らず、持ち込ませず」というこの方針は翌年に国会で承認され、日本の基本政策となった。

しかし、これは冷戦下で日本が米国の「核の傘」に依存しながら、被爆国としての道徳的立場を維持するための妥協にすぎなかった。この政策が、日本社会において核戦略に関する冷静な議論を避ける風潮を生んでしまった点は否定できない。

独裁国家の核リスクは現実に存在する

現在、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。

  • 北朝鮮は核兵器と弾道ミサイルの開発を続け、日本全土を射程に収める能力を持つ。

  • 中国は核戦力の近代化を進め、その規模と精度を高めている。

  • ロシアはウクライナ侵攻を契機に核兵器の使用をほのめかし、核の脅威を外交手段として利用している。

このような状況を見ると、核保有国の中でも独裁的な政権を持つ国々が、核兵器を実際に使用したり、その使用をちらつかせて他国を脅迫したりする可能性が、民主主義国家よりも格段に高いことが分かる。

独裁体制の核決断は「個人の判断」で進む

北朝鮮のような独裁国家はもちろん、中国やロシアのような権威主義体制も、トップの独裁的な判断で核兵器の使用を決断するリスクが高い。民主主義国家では核の使用に至るまで多くの手続きと議論が求められるが、独裁国家では指導者一人の判断で動く危険性がある。

また、核兵器を使用しなくても、その存在をちらつかせて他国を脅迫する戦術を頻繁に用いる。ロシアの核使用を仄めかした発言や、中国が台湾問題を巡って核使用をちらつかせる可能性がこれを如実に示している。

こうした現実に直面する日本が、核廃絶を唱えるだけで自国の安全を守れると考えるのは甘すぎると私は考える。

平和を守るには「抑止力」の現実的理解が不可欠

日本の最優先の課題は、他国に侵略されないこと、そして三度目の核攻撃を受けないことである。そのためには、現実的な抑止力を確立する必要がある。

抑止力とは、相手に「攻撃しても利益がないどころか、自国が壊滅的な被害を受ける」と思わせる力だ。このためには、日米同盟を基盤とした安全保障体制の強化や、自国の防衛力の整備が不可欠である。

また、日本国内で核抑止のメカニズムや核戦略に関する冷静な議論が求められる。

道徳と現実の両立こそ日本の進むべき道

核廃絶は理想として重要だが、それを達成するには、まず自国の安全を確保し、現実の脅威に対応できる手段を整備する必要がある。

核兵器の非人道性を訴えるだけでは、実際の脅威に対応できないどころか、核保有国の恫喝に屈する結果を招きかねない。被爆国である日本には、核廃絶を目指す道徳的な立場があるが、それと同時に、現実的な安全保障政策を追求する責務もある。

核廃絶は理想、でも今は「三度目の被爆を防ぐ」ことが先

私は、日本が平和を訴えるだけでなく、その平和を守るための具体的な手段を講じるべきだと考える。

理想と現実の両面を考慮し、隣国の核の脅威に対抗するための現実的な防衛政策と核抑止を持つ事が、今の日本に必要だ。核廃絶はその先にある目標であり、まずは日本自身が三度目の核攻撃を受けないようにすることが最重要だ。


補足|関連する議論について

核抑止の在り方に関しては、現在もさまざまな立場から議論が行われています。たとえば「核共有(NATO型の仕組み)」「限定的な核武装」「第二撃能力」などの戦略も一部では論点として挙げられます。

ただし、本記事ではそうした軍事専門的な議論に深入りすることは避け、あくまで市井の合理的な目線に立った現実認識と、基本的な防衛姿勢について述べることを主眼としました。興味を持たれた方は、より専門的な情報にもぜひ触れてみてください。


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