Sanlorenzo Groupとは?歴史・ブランド・経営状況を解説

※本稿は、2026年7月11日時点で確認できる公開情報に基づいています。最新の通期業績は2025年12月期、最新の四半期情報は2026年1~3月期です。

Sanlorenzoは売上指標として、主に**Net Revenues New Yachts(NRNY)**を使用しています。これは、新造艇の顧客契約から認識される収益と中古艇の収益を合算し、販売手数料や下取り艇の取得原価を差し引いた独自の指標です。一般的な会計上の単純な売上高とは完全には一致しないため、本稿では「NRNY」と表記します。なお、2026年1~3月期の組み替え財務情報は監査法人による監査対象ではありません。

Contents

単一ブランドの造船所から、総合ラグジュアリーヨットグループへ

**Sanlorenzo Group(サンロレンツォ・グループ)**は、イタリアのSanlorenzo S.p.A.を中核とするラグジュアリーヨット企業グループです。

現在は、モーターヨットとスーパーヨットを展開するSanlorenzo、スポーツユーティリティ艇やマルチハルを手掛けるBluegame、フィンランド発祥のセーリングヨットブランドNautor Swanを主軸としています。これに、チャーター、販売、整備、リフィット、クルー支援などのサービス事業が加わります。

Sanlorenzo S.p.A.はミラノ証券取引所のEuronext STAR Milanに上場していますが、議決権の過半数はMassimo PerottiとPerotti家が支配しています。したがって、資本市場から資金を調達する上場会社でありながら、経営支配権は創業家ではなく、2005年以降のオーナー経営者であるPerotti家が保持する構造です。

2026年時点の事業は、次の4部門で構成されています。

SanlorenzoのYacht Divisionは24~41メートルの複合材製モーターヨット、Superyacht Divisionは44~74メートルのアルミニウムおよび鋼製スーパーヨットを担当します。Bluegame Divisionは13~26メートルの複合材製モーターヨット、Nautor Swan Divisionは13~44メートルのセーリングヨットとモーターヨットを扱っています。

主な生産拠点はラ・スペツィア、アメリア、ヴィアレッジョ、マッサにあり、いずれもイタリアの主要な造船地域に集中しています。グループの従業員数は1,650人を超えています。

発祥――1958年、アルノ川沿いの小さな造船所から始まりました

Sanlorenzoの歴史は、1958年にGianfranco CecchiとGiuliano Pecchiaが、フィレンツェ近郊のLimite sull’Arnoでプレジャーボートの建造を始めたことにさかのぼります。

Sanlorenzoという名称は、事業の書類を正式に作成するために二人が訪れた広場に、聖ロレンツォの名が付けられていたことに由来すると、同社の公式沿革は説明しています。

当初の造船所はアルノ川沿いにありましたが、川の流量低下と建造艇の大型化に対応するため、ヴィアレッジョへ移転しました。1960年には「Cantiere San Lorenzo di Cecchi Gianfranco e C. s.n.c.」が設立されています。

Giovanni Jannettiによるブランドの確立

1972年、Giovanni Jannettiが会社を引き継ぎ、ヴィアレッジョに新しい造船所を開設しました。Jannettiの時代に、Sanlorenzoは端正な外観、細部の仕上げ、居住性、顧客ごとの仕様変更を重視する高級ヨットブランドとしての性格を確立していきます。

ただし、Jannettiによる取得年については、Sanlorenzoの公式資料内でも表記が一致していません。詳細な公式沿革と2023年年次報告書では1972年とされていますが、2026年に公表された一部のIR資料では1974年と記載されています。本稿では、詳細な沿革資料で一貫して使用されている1972年を採用します。

1985年には、同社初のFRP製ヨットであるSL57を発表しました。1995年には30メートルのSL100を投入し、スーパーヨット市場へ進出します。1999年には本拠地を現在のアメリアへ移しました。

Massimo Perottiによる成長路線

現在のSanlorenzoにつながる転換点は2005年です。

Azimut|Benetti Groupで長く経営経験を積んだMassimo Perottiが、Giovanni JannettiからSanlorenzoの過半数株式を取得しました。会社はSanlorenzo S.p.A.へ改称され、国際市場での販売拡大、生産能力の増強、製品ラインの拡張が始まりました。

2007年には、セミディスプレースメント艇のSD92と、同社初の金属製スーパーヨットである40Alloyを発表しました。2016年にはラ・スペツィアに金属製スーパーヨット専用拠点を開設し、2017年にはマッサで複合材部品の生産を開始しています。

2017年に登場したSX88、2018年のSL102 Asymmetric、同年のBluegame買収により、Sanlorenzoは従来型のフライブリッジ艇だけでなく、クロスオーバー艇、非対称レイアウト艇、スポーツユーティリティ艇へと事業領域を広げました。

2019年12月10日にはミラノ証券取引所のEuronext STAR Milanへ上場し、同族的な支配構造を維持しながら、上場企業としての資本基盤と開示体制を整えました。

Sanlorenzoの事業モデル――量産ではなく「限定されたセミカスタム」

Sanlorenzoは、自社のヨットを「made-to-measure」と表現しています。

これは、オーナーごとに船体から完全に新規設計するフルカスタム方式とは異なります。船体、機関、主要構造、技術システムはモデルやシリーズ単位で共通化しながら、室内配置、家具、素材、照明、デッキの使い方などを顧客の希望に合わせて変更するセミカスタム方式です。

共通の工学基盤を使うことで、完全な一品建造よりも品質、原価、納期を管理しやすくする一方、内外装には高い個別性を持たせています。

同社の2026~2028年事業計画では、販売隻数を際限なく増やすのではなく、価格プレミアム、年間供給量の管理、顧客との直接的な関係、ブランドの希少性を重視する方針が示されています。経営戦略を端的に表すと、販売数量よりも1隻あたりの価値と利益を優先するモデルです。

Sanlorenzoブランドの艇の特徴

Sanlorenzoのモーターヨットは、SL、SD、SX、SP、SHEの各ラインで構成されています。大型のスーパーヨットでは、Alloy、Steel、Explorer、X-Spaceの各ラインを展開しています。

ブランド全体に共通するのは、船体そのものの速力や航続距離だけではなく、船内空間を建築として捉えていることです。非対称レイアウト、開閉式テラス、大型ガラス面、海面に近いビーチエリアなどを使い、従来のヨットに存在した船内と船外の境界を小さくしています。

SL110A――左右非対称を空間設計に使う

全長33.5メートルのSL110Aは、Sanlorenzoの「Asymmetric」思想を代表するモデルです。

一般的なモーターヨットでは、左右両側に同じ幅のサイドデッキを設けます。SL110Aでは、デッキの一部を片側に寄せたり、室内空間へ取り込んだりすることで、船内幅を広げ、大型窓、テラス、海面方向への視界を確保しています。

非対称性は外観上の演出ではなく、限られた船幅を室内と屋外のどちらへ配分するかを再設計するための手段です。

SX120――フライブリッジ艇とエクスプローラーの融合

全長36.58メートルのSX120は、通常のフライブリッジ型モーターヨットと、エクスプローラーヨットの要素を組み合わせたモデルです。

船尾には約70平方メートルのビーチエリアがあり、格納式プールも設けられています。上部デッキは周囲360度の視界を確保する設計で、推進装置にはVolvo PentaのIPS Professional Platformを採用しています。

SXシリーズは、船尾を単なるテンダー格納場所として扱わず、海面に近いレジャー空間として利用するSanlorenzoの設計思想を明確に示しています。

SD132――セミディスプレースメント艇で420GTを確保

全長40.7メートルのSD132は、Sanlorenzoの複合材製ヨットとして最大級のモデルです。

総トン数は約420GTで、2層にわたって非対称レイアウトを採用しています。船尾には約70平方メートルのビーチエリアがあり、左右のテラスを開くことで海面方向へ空間を拡張できます。

SDシリーズは、滑走型艇よりも落ち着いた航行特性と大きな船内容積を持つセミディスプレースメント船型を基礎としながら、従来の重厚な長距離艇よりも開放的なデザインを採用している点が特徴です。

50Steel――メタノール燃料電池を船内電源に利用

全長50メートル、499GTの50Steelは、Sanlorenzoの新しい技術開発を代表するモデルです。

同社は50Steelを、グリーンメタノールを利用する燃料電池システムを搭載した世界初のスーパーヨットとしています。システムはメタノールから水素を取り出し、燃料電池で電気へ変換します。主機や発電機を停止した状態でも、空調、照明、厨房設備などのホテルロードへ最大100kWを供給できる設計です。

これは推進力のすべてを燃料電池で賄う方式ではありません。停泊中や低負荷時に発電機の運転時間、騒音、振動、局所排出を減らすことを主な目的としています。

SHE――クラシックな外観とハイブリッド推進

2026年に進水した全長25.5メートルのSHEは、1960年代のイタリアンヨットを思わせる外観と、現代のハイブリッド推進を組み合わせたモデルです。

Sanlorenzoとして初めてVolvo PentaのIPSハイブリッドシステムを採用し、通常の最高速は20ノット、完全電動時の最高速は11ノット、完全電動巡航速は7ノットとされています。

SHEは2026年のカンヌ・ヨッティング・フェスティバルで世界初公開される予定ですが、公式発表によると、正式デビュー前に最初の5隻がすでに販売されています。

Bluegame――スポーツユーティリティ艇からマルチハルへ

Sanlorenzoは2018年にBluegameを買収しました。2026年3月末時点のグループ構成表では、Bluegame S.r.l.はSanlorenzoの100%子会社です。

Bluegameは、Sanlorenzoより小型の13~26メートル級を担当しています。現在はBG、BGX、BGM、BGFの各ラインを展開しています。

BGとBGXでは、広いウォークアラウンドデッキ、開放的な船尾、テンダーやウォータートイを積みやすい構成など、スポーツユーティリティ艇とクルーザーを組み合わせた発想が使われています。BGMとBGFではマルチハルへ進出しており、Bluegameはグループ内の実験的・技術先行型ブランドとしての役割も担っています。

BGM75――居住性を重視したパワーカタマラン

BGM75は、Bluegameが大型マルチハル市場へ参入したモデルです。

3キャビン仕様と4キャビン仕様が用意され、カタマランの船幅を利用した大きな室内空間を持っています。Smartgyroとの共同開発により、左右の船体に2基のジャイロスタビライザーを搭載し、相互に同期させるシステムを採用しています。

Bluegameは、同期制御された2基のスタビライザーを搭載するマルチハルとして世界初と説明しています。

BGF45――America’s Cup艇の技術を市販艇へ展開

全長14.15メートルのBGF45は、船体間にフォイルを配置したフォイルアシスト型カタマランです。

開発には、BluegameがAmerica’s Cup向けに製造した水素燃料電池式チェイスボート「BGH」で得た船体、フォイル、制御技術が応用されています。フォイルで船体を部分的に持ち上げることで抵抗を減らし、30~35ノット級の速度域でも安定性と効率を確保する設計です。

メーカーは、比較条件によって燃料消費量を最大30%削減できると説明しています。船内には2室のキャビンと、用途を変更できるもう1室のスペースが設けられています。

Nautor Swan――グループに加わったフィンランドのセーリングヨットブランド

Nautor Swanは、Pekka Koskenkyläが1966年にフィンランドのPietarsaariで創業したセーリングヨットメーカーです。

最初のモデルはSparkman & Stephens設計のSwan 36でした。レース性能と長距離クルージング能力を同じ艇に持たせるという考え方が、ブランドの出発点です。2026年に創業60周年を迎えました。

初期のSwanはSparkman & Stephensが設計し、Swan 65のSayula IIは1973~1974年の第1回Whitbread Round the World Raceで総合優勝しました。1981年からはGermán Frersが主要デザイナーとなり、性能、快適性、外観の均衡を重視したモデルを多数手掛けています。

現在の製品は、クルージングと性能を両立するSwan、80フィート以上を中心とするSwan Maxi、レース向けのClubSwan、モーターヨットのSwan Shadow、OverShadow、Arrowに分かれています。グローバルサービス、チャーター、ブローカレージ、クルー支援、ClubSwanのレース運営も事業に含まれます。

Swan 128――外洋航海とレースを同じ仕様でこなす

全長約39メートルのSwan 128は、Nautor Swanの大型艇を代表するモデルです。

Germán Frersが設計し、長距離外洋航海に対応する居住性と、国際的なレースへ参加できる帆走性能を両立させています。メーカーは、クルージング仕様からレース仕様へ大幅に改造することなく、両方へ対応できる「スポーティークルーザー」と位置づけています。

カーボンコンポジット船体、セミレイズドサルーン、自然光を取り込む広い室内を備えており、Sanlorenzoのモーターヨットとは異なる形で、高性能と長期滞在能力を組み合わせています。

統合化の推移――ブランドを統一せず、機能を統合しています

Sanlorenzo Groupの統合戦略は、買収したブランドをSanlorenzoへ改名する方式ではありません。

Sanlorenzo、Bluegame、Nautor Swanは、それぞれの名称、製品思想、顧客層を維持しています。その一方で、生産技術、購買、販売網、サービス、研究開発、資本調達などの後方機能をグループ内で共有する方向へ進んでいます。

2018年――Bluegameの買収

Bluegameの取得によって、Sanlorenzoは従来の24メートル以上の市場から、13メートル級まで製品範囲を広げました。

ただし、単純に小型のSanlorenzoを販売したわけではありません。Bluegameにはスポーツユーティリティ、クロスオーバー、マルチハルという別の役割を持たせ、Sanlorenzo本体との商品重複を抑えています。

2019年――株式上場と生産基盤の拡張

2019年の上場後、Sanlorenzoは生産設備、複合材加工、金属船建造、販売会社への投資を進めました。

上場によってPerotti家の支配が失われたわけではありません。株式市場から資金を調達できる体制を整えながら、複数議決権株式と持株会社を利用して、長期的な経営支配権を維持しています。

2022~2023年――サービスと供給網の内部化

2022年には、チャーター事業を手掛けるEquinoxeを100%取得しました。

同時期には、家具・内装を製造するDuerre、船舶用電気・電子システムを扱うSea Energy、Bluegameの生産パートナーであるI.C.Y.などへの出資を進めました。

2026年3月末時点で、SanlorenzoはDuerreの66%、Sea Energyの65%、I.C.Y.の60%を直接または間接的に保有しています。これにより、内装、電装、複合材艇の生産能力など、品質や納期に影響する工程をグループ内へ取り込んでいます。

2026年4月には、ヴィアレッジョの工場および設備とともにPolo Nautico Viareggioの追加持分1.26%を取得し、保有比率を54.26%へ引き上げました。目的は、Superyacht Divisionの生産能力拡大です。

2024年――Simpson Marineによるアジア販売網の直接化

2024年3月、Sanlorenzoはアジアのヨット販売・サービス会社Simpson Marineの95%を取得しました。

取得価格は1,000万米ドルで、2023年度の利益に連動する最大700万米ドルのアーンアウトが設定されました。資金はSanlorenzoの手元資金で賄われています。

Simpson Marineは香港、シンガポール、中国本土、タイ、インドネシア、マレーシア、台湾などに拠点を持っており、買収によってSanlorenzoはアジア太平洋地域の販売とサービスを直接管理できるようになりました。

なお、2026年3月末のグループ構成表では、SanlorenzoによるSimpson Marine Limitedの保有比率は**85%**と記載されています。2024年の取得時点では95%でしたが、この比率変更の具体的な理由は、同構成表には記載されていません。

2024年――Nautor Swanの取得

2024年8月、SanlorenzoはLeonardo Ferragamoが支配するSawaから、Nautor Swanを100%取得する契約を締結しました。

取引は二段階です。2024年8月2日に最初の60%を取得し、対価は4,850万ユーロでした。これは株主価値8,090万ユーロ、企業価値9,000万ユーロを基礎とした金額です。

残る40%は、2027年度の業績を基礎として、2028年4月30日までに取得する予定です。評価額は、当初の株主価値とEBITDAの9倍による評価額のうち、高い方を使用します。各段階の支払いは、原則として3分の2が現金、3分の1がSanlorenzo株式です。

一方、2026年3月末の連結グループ構成表では、Nautor Swan S.r.l.の保有比率が100%と表示されています。したがって、連結上のグループ構成表示と、契約上の二段階の株式取得・決済スケジュールは分けて理解する必要があります。

Nautor Swanの取得によって、Sanlorenzo Groupはモーターヨット中心の企業から、セーリングヨット、ワンデザインレース艇、オーナーズクラブ、レガッタ、グローバルサービスまでを持つグループへ変わりました。

商品面でSanlorenzoとNautor Swanの直接的な重複は小さく、Sanlorenzoの金属船、ハイブリッド、燃料電池技術と、Swanのカーボンコンポジット、帆走、レース運営の技術を組み合わせられる構造です。

資本関係――上場会社ですが、Perotti家が支配しています

Sanlorenzo S.p.A.は上場会社ですが、最終的な支配株主はMassimo Perottiです。Massimo Perottiは会長兼CEOも務めています。

2026年3月16日、Perotti家の持株会社**Holding Happy Life(HHL)は、Sanlorenzo株式17,902,553株をOcean S.r.l.**へ現物出資しました。

Oceanは、それ以前から保有していた1,940,000株と合わせて、Sanlorenzoの株式資本の55.653%、議決権の67.631%を保有することになりました。

HHLはOceanの90.223%を保有しています。また、HHLはSanlorenzoの複数議決権株式1,948,552株を直接保有しています。結果として、2026年3月16日時点でHHLが直接・間接に支配する割合は、株式資本の61.118%、議決権の74.734%でした。

Oceanのほかの株主は、Claudio Luti系のFinclamaが5.040%、Sanlorenzo取締役Silvia Merlo系のKibotionが4.737%です。最終的な支配者は引き続きMassimo Perottiであり、この再編によって変更されていません。

2026年6月30日時点のSanlorenzoの発行済み株式数は35,714,409株、総議決権数は54,931,514票です。

このうち19,217,105株が複数議決権株式で、合計38,434,210票を持っています。残る16,497,304株は通常の1株1議決権株式です。3月の持株比率公表後にストックオプション行使による20,143株の新株発行があったため、3月に公表された比率と6月末の株式数では基準時点が異なります。

資本構造をまとめると、Sanlorenzoは一般投資家が株式を売買できる上場会社ですが、複数議決権株式とHHL、Oceanを通じてPerotti家が安定した経営支配権を持っています。

現在の経営状況――2025年は増収増益を維持

2025年12月期のNRNYは9億6,040万ユーロで、前年から3.2%増加しました。

EBITDAは1億8,060万ユーロで2.4%増、EBITDAマージンは18.8%です。EBITは1億3,990万ユーロで0.4%増、グループ純利益は1億740万ユーロで4.2%増加しました。純利益率はNRNYに対して11.2%です。

財務面では、2025年末に2,010万ユーロのネットキャッシュを確保しています。この数値には2,800万ユーロのIFRS第16号に基づくリース負債が含まれています。

年間のオーガニック設備投資は4,820万ユーロで、NRNYの5.0%に相当します。その約89%が、生産能力、販売網、新型艇、製品ラインなどを拡張するための投資でした。

2025年の増収は、すべての部門が伸びた結果ではありません

部門別に見ると、Yacht DivisionのNRNYは4億9,141万ユーロで5.4%減少しました。Superyacht Divisionは2億8,152万ユーロで0.5%増、Bluegame Divisionは8,546万ユーロで7.4%減でした。

Nautor Swan Divisionは1億197万ユーロで、前年から166.6%増加しています。ただし、2024年は8月の取得後のみが連結対象だったのに対し、2025年は通年で連結されています。したがって、この伸び率をそのまま事業の実質的な年間成長率と見ることはできません。

2025年のグループ全体の増収は、Nautor Swanの通年連結と、北中南米での35.5%増が大きく寄与しています。既存のYachtとBluegameは減収であり、成長は部門間で均一ではありませんでした。

Nautor Swanの収益性は、2025年時点ではSanlorenzo Groupの平均を下回っています。その影響を受けながらも、グループのEBITDAマージンは18.8%を維持しました。一方、Nautor Swanの取得前投資に伴う減価償却費が増えたため、EBITマージンは2024年の15.0%から14.6%へ低下しています。

受注残――約20億ユーロと約10億ユーロの違い

2025年末のOrder Backlogは19億6,280万ユーロでした。このうち88%は最終顧客へ販売済みで、残りにはブランド代理店向けの契約などが含まれます。

一方、Net Backlogは10億250万ユーロです。内訳は2026年分が6億1,810万ユーロ、2027年以降が3億8,440万ユーロでした。

Order Backlogは、対象年度中に引き渡す艇や建造中の艇を含む契約残高をSanlorenzo独自の方法で集計した数値です。Net Backlogは、既存契約のうち、将来の会計期間にまだ収益として認識されていない部分です。このため、約20億ユーロと約10億ユーロは同じものを異なる時点で表した数字ではなく、定義が異なります。

2025年の年間受注額は9億4,310万ユーロで、前年から16.0%増加しました。受注額がNRNYとほぼ同水準であるため、2025年末時点では、売上計上によって減少した受注残を新規受注がおおむね補充した状態です。

2026年1~3月期――SuperyachtとNautor Swanが成長を牽引

2026年1~3月期のNRNYは2億2,210万ユーロで、前年同期から4.0%増加しました。

EBITDAは3,850万ユーロで4.0%増、EBITDAマージンは17.3%です。EBITは2,790万ユーロで4.0%増、グループ純利益は2,230万ユーロで5.1%増加しました。

部門別では、Yacht Divisionが1億460万ユーロでほぼ横ばい、Superyacht Divisionが7,420万ユーロで14.1%増、Bluegame Divisionが1,830万ユーロで8.0%減、Nautor Swan Divisionが2,500万ユーロで5.0%増でした。

地域別では、北中南米が18.7%増、中東・アフリカが24.0%増となった一方、アジア太平洋地域は11.0%減少しました。欧州はほぼ横ばいです。

受注額は2億2,320万ユーロで25.4%増加し、7四半期連続の増加となりました。2026年3月末のOrder Backlogは12億2,570万ユーロで2.3%増、その90%が最終顧客向けです。

Net Backlogは10億360万ユーロで、2025年末とほぼ同じ水準を維持しています。2026年分の受注残は7億2,470万ユーロ、2027年以降の受注残は5億100万ユーロでした。

2026年3月末のネットキャッシュは2,290万ユーロで、2025年末の2,010万ユーロから増加しました。前年同期は2,810万ユーロのネットデットだったため、1年間で財務状態は大きく改善しています。

運転資本と在庫

2026年3月末の運転資本は1億1,890万ユーロ、在庫は1億7,700万ユーロでした。

在庫は前年同期の1億5,680万ユーロから増えています。会社は、需要の多いモデルの納期短縮に向けた生産の先行と、従来は外部ディーラーが担当していた販売枠を直接販売拠点へ移したことを主な理由として挙げています。

在庫増加だけで資金繰り悪化と判断する状況ではありませんが、直接販売網の拡大によって、完成艇や仕掛品をグループ自身が保有する期間が長くなり、運転資本の管理が以前より重要になっています。

2026年の業績予想と2028年までの計画

Sanlorenzoは2026年のNRNYを9億8,000万~10億2,000万ユーロと予想しています。

EBITDAは1億8,000万~1億9,200万ユーロ、EBITは1億4,000万~1億4,700万ユーロ、グループ純利益は1億800万~1億1,400万ユーロを見込んでいます。設備投資計画は5,000万~5,500万ユーロです。

2028年に向けては、NRNYの年平均成長率を6%以上、EBITDAマージンを19%以上、EBITマージンを14.5%以上とする目標を掲げています。

計画の中心は、大量生産ではありません。大型艇への製品構成の移行、Nautor Swanの新型艇、SanlorenzoとBluegameのモデル更新、直販地域の拡大、リフィットや高付加価値サービスの強化によって、平均販売価格と収益性を引き上げる方針です。

現在の経営状態をどう評価できるか

公開情報から見る限り、Sanlorenzo Groupの現在の財務状態は堅調です。

2025年のEBITDAマージンは18.8%、純利益は1億ユーロを超え、2026年3月末もネットキャッシュを維持しています。Net Backlogは約10億ユーロあり、その大部分が最終顧客向けです。資金繰りの逼迫、大規模な債務再編、生産停止などを示す材料はありません。

一方、事業の伸びは一様ではありません。2025年のYacht DivisionとBluegame Divisionは減収で、2026年1~3月期もBluegameは8.0%減少しました。成長の中心は、Superyacht、Nautor Swan、北中南米市場へ移っています。

したがって、2025年の3.2%増収をSanlorenzo既存事業全体の強い成長と見るより、Nautor Swanの通年連結と地域・製品構成の変化を伴う、緩やかなグループ拡大と捉えるのが正確です。

今後の重要項目は、Nautor Swanの利益率をグループ平均へ近づけられるか、2028年までに残る40%の取得を予定どおり完了できるか、Bluegameの24メートル未満市場の減速に対応できるか、直販化に伴う在庫と運転資本を適切に管理できるかです。

また、同社は米ドル建て販売に伴う為替変動、金利、サプライヤー、生産拠点の操業、地政学的要因、規制変更などを主要なリスクとして挙げています。

総評

Sanlorenzo Groupの起点は、1958年にアルノ川沿いで始まった小規模な造船所です。

Giovanni Jannettiの時代に、少数の顧客へ高度にカスタマイズされたヨットを提供するブランドとしての基礎を築き、2005年にMassimo Perottiが過半数を取得してから、国際的な企業グループへ発展しました。

Sanlorenzoブランドは、非対称レイアウト、セミディスプレースメント艇、クロスオーバー艇、金属製スーパーヨットを通じて、船内空間を建築的に再構成することを特徴としています。Bluegameは、スポーツユーティリティ艇、マルチハル、フォイルなどの実験的な領域を担当します。Nautor Swanは、外洋航海、レース、セーリングヨット、ClubSwanのオーナーコミュニティをグループへ加えました。

統合の方法も明確です。買収したブランドの名称や製品思想をSanlorenzoへ統一するのではなく、各ブランドの顧客層を維持しながら、生産技術、部品供給、販売網、サービス、資本をグループ内で結び付けています。

資本面では、上場企業でありながらPerotti家が株式資本の約6割と議決権の約4分の3を支配しています。外部株主の資金と市場規律を取り込みつつ、長期的なブランド戦略の決定権はPerotti家が保持しています。

現在の経営状態は、高い利益率、ネットキャッシュ、約10億ユーロのNet Backlogを持つ、財務的に安定した状態です。ただし、成長の内訳を見ると、既存の全ブランドが一様に伸びているわけではありません。

Sanlorenzo Groupは現在、単一の高級モーターヨットメーカーから、モーターヨット、スーパーヨット、スポーツユーティリティ艇、マルチハル、セーリングヨット、販売、チャーター、リフィット、オーナーサービスを持つ総合ラグジュアリーヨットグループへ移行している段階にあります。


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▶筆者紹介は『理屈コネ太郎の知ったか自慢|35歳で医師となり定年後は趣味と学びに邁進』

作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

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