Targa・Sargo・Nord Starを比較 ☆ 北欧オールシーズン艇御三家は、結局どれを選ぶべきか

プレジャーボートの世界には、見た目の華やかさよりも、実際に海で使ったときの頼もしさで評価される船があります。

フィンランドの Targa(ターガ)、Sargo(サルゴ)、Nord Star(ノードスター) は、その代表格といえる存在です。

いずれもフィンランド製で、パイロットハウスを中心にウォークアラウンドできるデッキを持ち、雨、風、波、寒さの中でも使うことを前提としたオールシーズン型のボートです。

英国のMotor Boat & Yachtingは2021年、Nord Star 31+をSargo 31、Targa 30.1と比較し、この3艇がフィンランド西岸の約160km圏内で造られ、購入時にも互いが比較対象になりやすい存在だと紹介しています。

本記事では、この3ブランドを便宜上、**「北欧オールシーズン艇の御三家」**として比較します。

これはわたし理屈コネ太郎の表現であり、業界に公式の「御三家」という分類があるという意味ではありません。

むしろ興味深いのは、同じ地域の造船文化と、寒く荒れやすい海を一年を通して使うという似た要求条件から出発しながら、それぞれ少し違う方向へ発展していることです。

では、Targa、Sargo、Nord Starは何が似ていて、どこが違うのでしょうか。

会社の背景、規模、船の性格、推進方式、日本での販売体制、そして最終的な選び方まで整理してみます。


まず結論|違うのは「優劣」より重点配分

この3ブランドを、

「どこが一番高性能か」

「どこが一番高級か」

という一本の物差しで順位づけするのは、あまり適切ではないと思います。

むしろ、

それぞれが船のどこに、より強く価値を置いているのか

を見る方が、違いを理解しやすくなります。

特に30ft前後の同クラスを比べると、その傾向が分かりやすく現れます。

Targa|操船と実用を強く前面に出す

Targaは、3社の中ではプロユース、デッキワーク、移動のための道具としての性格が最も見えやすいブランドです。

TargaではProfessional仕様として、SAR、法執行、消防、医療、タクシー、港湾サービス、国境警備、輸送など、幅広い業務用途の艇も展開されています。

Sargo|実用性とクルージング快適性を組み合わせる

Sargoも全天候性と実用性を重視しています。

そのうえで、ワンレベルのデッキ、両舷のサイドドア、アフトドア、大型パントリー、複数の寝室など、夫婦や家族で過ごすクルーザーとしての使いやすさを強く組み込んでいます。

Sargo 31も公式に、家族や2組のカップルで休暇を過ごすのに適した通年型クルーザーとして説明されています。

Nord Star|ハンドビルド、個別仕様、居住性を強く訴求する

Nord Starも、荒天や通年使用を前提としたフィンランド製パイロットハウス艇です。

一方、メーカー自身はハンドビルド、顧客に合わせた個別仕様、クラフトマンシップ、居住性をブランド価値として強く打ち出しています。

ただし、これは

Targa=仕事船
Sargo=中間
Nord Star=高級艇

という固定的な序列を意味するものではありません。

Nord Star 26+は公式自身が多目的艇として位置づけていますし、Targaでも大型艇になるほど居住性は大きくなります。

したがって、以下の比較は各ブランド全体に見られる傾向として読むのが適切です。


3社比較表

項目TargaSargoNord Star
現在の製造会社Oy Botnia Marin AbSARGO Oy AbLinex-Boat Oy
国フィンランドフィンランドフィンランド
現法人・事業の起点1976年現法人の商業登記は1970年12月現法人は2010年に事業開始
造船・ブランドの系譜Carpelan家、1976年~Sarin家の事業は1967年~。Minorは1976年~、SARGOは2014年~Lindkvist家の造船は1920年代~、Nord Starは1990年代末から展開
現行モデル23.1~46まで複数モデル28、31、33、36、36 Fly、45、45 Flyなど。Explorer、Outboardも展開26+、28+、31+、33+、36+、42+、49+
ブランド全体の傾向操船・実用・デッキワーク実用性+ファミリークルージングハンドビルド・個別仕様・居住性
日本正規窓口ウインクレルオカザキヨットユニマットプレシャス(UNIMAT MARINE)

Sargoの現行通常シリーズには28、31、33、36、36 Fly、45、45 Flyがあり、Explorerや28/31 Outboardも展開されています。

Nord Starは26+から49+までの7モデルを現行フリートとして掲げています。

ここで重要なのは、会社の設立時期と、その家系が船を造り始めた時期を混同しないことです。

Sargoの公式ヒストリーでは、Edy Sarinが1967年にSarins Snickeriを創業し、当初はSwan向けの木製内装を製作していました。

1970年にはGRP製のOKディンギーの製造を開始し、1976年にMinorブランドが誕生、Minor 650が登場します。そして2014年、Minor Offshore 25~36がSARGOへブランド変更されました。

現在のSARGO Oy Abの商業登記日は1970年12月4日です。

Nord Starも同様です。

現在の製造会社Linex-Boat Oyは2010年に事業を開始していますが、Lindkvist家の造船史そのものは1920年代まで遡ります。Nord Starの金型製造は1998年に始まり、2000年には最初のNord Starがスウェーデンへ販売されています。

つまり、

「会社が100年前から存在する」ことと、「造船家系として100年近い歴史を持つ」ことは別です。

ここは区別して見る必要があります。


3社とも、家族経営的な造船文化を背景に持つ

Targaを製造するBotnia Marinは1976年、Johan CarpelanとBrit-Marie Carpelanによって設立されました。

現在もfamily-owned companyであり、Carpelan家の第二世代が事業に参加しています。また、ラミネート、木工、技術設計、艤装、テストまで多くの工程を自社内で行っています。

Sargoは、1967年から続くSarin家の造船事業を背景に持っています。

公式サイトでも、Minorから続く造船ノウハウとSarin家3世代の経験をSARGOが引き継いでいると説明しています。

Nord Starも、Lindkvist家の造船文化を背景に持ちます。

1920年代の木造漁船・作業船から始まり、現在まで4世代にわたり造船技術が継承されています。Nord Star自身もprivately owned family companyと説明しています。

したがってこの3社は、巨大マリングループの一ブランドというより、

フィンランド西岸の地域的な造船文化、家族経営、長期間蓄積された造船技術

を背景に持つメーカーとして見ることができます。

ここも3社がよく似て見える理由の一つでしょう。


会社規模にはかなり差がある

一方、会社の規模は同じではありません。

決算期が完全には一致しないため、ここでは2025年に終了した最新公表決算期で比較します。

製造会社ブランド売上高営業利益従業員数
Oy Botnia Marin AbTarga約6,895万ユーロ約858万ユーロ281名
SARGO Oy AbSargo約1,794万ユーロ約141万ユーロ67名
Linex-Boat OyNord Star約902万ユーロ約31万ユーロ29名

Botnia Marinは2025年7月期で、売上高6,895万4,000ユーロ、営業利益858万1,000ユーロ、従業員281名です。

SARGO Oy Abは2025年8月期で、売上高1,793万7,000ユーロ、営業利益141万4,000ユーロ、従業員67名とされています。

Linex-Boat Oyは2025年7月期で、売上高902万2,000ユーロ、営業利益31万2,000ユーロ、従業員29名です。

したがって、生産企業としての規模はおおむね、

Targa > Sargo > Nord Star

です。

TargaはNord Starの7倍以上の売上規模があります。

ただし、この数字はメーカーとしての規模を示すものであって、船そのものの優劣を示す数字ではありません。

この記事でも、財務数字から船の品質順位を導くつもりはありません。


Targaの特徴|最も「海の道具」感が強い

Targaは、3ブランドの中でもプロユースとの距離が近いことが特徴です。

公式のProfessional部門では、Targaをベースとした仕様として、

  • SAR
  • 法執行
  • 消防
  • 医療
  • タクシー
  • チャーター
  • 港湾サービス
  • 国境警備
  • 輸送

など、多数の業務用途が紹介されています。

つまりTargaでは、

操船する。

移動する。

外へ出る。

係留する。

荷物を扱う。

海況が変わっても帰ってくる。

といった、船を実際に海で使う場面が強く意識されています。

Motor Boat & Yachtingが2021年に30ft級3艇を比較した際にも、Targa 30.1は3艇の中で最も伝統的で箱型のデザインを持ち、組み上げは高く評価される一方、居住空間は3艇の中で最も限られると評されています。

ただし、Targaの実用志向は、居住性を軽視するという意味ではありません。

その分かりやすい例が、新型Targa 3

作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

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