本当の資産家は目立つ事を好まない。
なぜなら彼らは、自分が資産家であることが他人に知られることをリスクだと考えているからです。
その理由や構造を説明する前に、まず本記事では本当の資産家を、単に資産総額が大きい人というだけでなく、
元本を減らさずに、不労所得だけで比較的優雅な日常生活を問題なく送ることができる資産規模と構造を持ち、かつそれを数世代にわたって維持している資産家と捉えます。
以下、本記事において「資産家」と表記する場合、特に断りがない限り、本当の資産家を指します。
Contents
資産家にとっては、資産防衛が資産増額と同じくらい重要
前述した規模と構造の資産を持つ資産家が合理的に考えるなら、資産に対する考え方は変わるはずです。
資産家は、資産を増やすことだけではなく、既存の資産を減らさないことも同じくらい重要になります。
しかし、それは実はなかなか困難で、コストがかかる事柄です。
なぜなら、大きな資産額は衆目を集めやすく、その中には羨望や嫉妬、あるいは明らかな悪意が含まれることになり、盗難や詐欺、強盗や略取誘拐などの犯罪を招きかねないからです。
さらに、犯罪被害を補償する保険は、一般的な災害リスクを補償する保険と比較して高額になりやすく、そもそも被害そのものを完全に補填できるとは限りません。
だからこそ、起きてしまった被害を事後的に補填するのではなく、そもそも犯罪を招かないように振る舞うことが資産家には重要になります。
そして、そのイロハのイが、自分が資産家であることを出来るだけ他人に知られないようにすることなのです。
リスクの起点は「資産家であると他人に知られること」
リスクの代表格である不動産や株式の価格変動や景気後退といった外生的な変動については、資産家はポートフォリオや保険によって耐えられる資産構造を構築しているはずです。
これらとは別に、資産家が警戒するのは、盗難、詐欺、裏切り、強盗などの犯罪行為です。
最も安全と思われていた都市銀行貸金庫で、行員による窃盗が、安全と言われる日本で実際に発生した事実は、起こり得る犯罪は起こると想定する必要性を思い起こさせます。
したがって、資産家にとってより恐ろしいのは、こうした犯罪行為による資産毀損となります。
資産は、その存在が他人に知られると、他人の注目を集めます。
その注目の中には、羨望や嫉妬といった感情がこもります。
そして、資産の存在が遵法精神のない他人の知るところとなれば、その中に、窃盗や詐欺や強盗や略取誘拐を試みる者や、詐取の機会をうかがう犯罪者がいないとは限りません。
リスクマネジメントの観点からみれば、「いる」と想定するのが無難でしょう。
したがって、資産家が資産を持っていることが他人に知られる状態は、そうした対象になり得ます。
だから資産家は、できるだけ他人に知られないように振る舞う
以上を踏まえると、資産家の資産防衛のあり方ははっきりします。
重要なのは、防犯技術の巧拙ではなく、そもそもリスクの発生条件をどう扱うかです。
資産が他人に知られることがリスクの前提である以上、資産家の資産防衛は、自分が資産家であることを知る必要のない他人に知られないようにする行動になります。
代々の資産家は、その手法を生活様式に内在化している
この行動は個人の選択にとどまりません。
数代にわたって資産を維持してきた資産家であれば、
- 騙される
- 持ち逃げされる
- 裏切られる
といった経験を通じて、リスクへの対処を蓄積しているはずです。
その結果、資産防衛の手法は親から子へ、子から孫へと継承され、その家庭の流儀というか、立ち居振る舞いのレベルにまで染みこんでいきます。
これが、いわゆる「育ちの良さ」と表現される行動様式なのかもしれません。
その一環として、資産家は、不必要な場で自分が資産家であることを他人に知られないように振る舞います。
相続は資産維持を困難にする
資産維持において大きな障害となるのが相続です。
資産家が警戒する盗難や詐欺といった犯罪行為は確かに重大なリスクですが、本邦において資産維持の観点から、より現実的に問題となるのは相続であると考えられます。
相続では、相続税の支払いによって資産は確実に目減りします。
さらに、資産は分割されることが多く、その結果として資産のまとまりも失われます。
このようにして、資産の規模と構造の両方が変化し、資産は大幅に減少します。
そのため、資産家にとって重要なのは、相続によって減少した資産をどのように回復させるかという点です。
同時に、資産家にとっては、徴税当局から過剰な注意を向けられないことも重要になります。
合理的に考えるなら、本当の資産家は、本当の資産家は、一代で財を成した新興資産家のように富を周囲に顕示して羨望や嫉妬を買う行動で悪目立ちし、結果として徴税当局の興味を引くような行動は避けるはずです。
いわば、痛くもない腹を探られないための振る舞いが、本記事で考察するような本当の資産家たちの行動様式として内在化しているのです。
本物の資産家が富を表現するとき
もっとも、資産家が富を表現する場面がまったく存在しないわけではありません。
富を表現することに明確な意味がある場合、彼らはそれを躊躇いません。
第一に、資産家同士の相互認証の手段として機能する場合です。
第二に、ビジネスの相手から保証力の裏付けとして求められる場合です。
さらに、取引コストを下げるためのシグナリングとして機能する場合や、長期的な関係におけるコミットメントを示す必要がある場合もあります。
また、限定的な投資機会への参加条件を満たすためや、寄付において他の資金を呼び込むために機能する場合もあります。
加えて、ガバナンスや与信の実務上、開示が求められる場面も存在します。
これらに共通するのは、富の表現そのものが目的ではなく、特定の機能を果たすための手段として用いられている点です。その意味で、「誇示する」こととは本質的に違います。
したがって、その範囲は限定され、知る必要のない他人に広がることはありません。
資産拡大を志向する資産家の行動は分岐する
資産をさらに増やしたいと考える資産家の行動には分岐が見られます。
不労所得で日常生活を送ることができる水準の資産をすでに持つ資産家は、自分が資産家であるという事実については一定の周知を受け入れる場合があります。
ただし、その資産家であっても、家族や生活圏といった周辺情報については、他人に対して秘匿するように振る舞います。
一方で、その水準に達していない者は、成功者であるというラベリングを積極的に用いて、資産構築を進める行動を取りやすくなります。
財力を示す行動の意味
以上を踏まえると、財力を示す行動は資産防衛とは別の文脈で理解できます。
その行動は、承認、信用の演出、収入の獲得といった目的に基づく場合があります。
収入の獲得という観点では、自分が資産家であることを表明し、「その方法に従えば同様の状態に到達できる」と示すことで情報商材を販売する手法も見られます。
また、それとは別に、資産を持つことに不慣れな者による虚栄として説明できる場合もあります。
結論
資産は、それが他人に知られることで、盗難、詐欺、裏切りといったリスクを呼び寄せます。
そのため、資産家が資産を守ろうとする場合、自分が資産家であることを出来るだけ他人に知られないように振る舞うことになります。
そして、数代にわたって資産を維持してきた資産家であれば、この行動は経験の蓄積として共有されていると考えられます。
そういうわけで、本物の資産家を見つけることは容易ではありません。
彼らは、目立たず、自分が資産家であることを他人に知られないように生活しているからです。
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