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はじめに|この記事は「関係性」を説明する記事
絞り値、シャッター速度、感度、露光量、露出といった用語の意味そのものについては、すでに
「初心者向け一眼カメラ用語解説|絞り・シャッター速度・ISOを一気に理解」
で詳しく解説している。
本記事は、その次の段階として、
人間が設定する数値(絞り値・シャッター速度・感度)
フィルムや受光素子に実際に起きる物理的結果(露光量)
写真としての評価結果(露出・適正露出)
これらを混同せずに階層化し、
露光量がどのような関係性で決まっているのかを明確に示すことを目的としている。
また、本記事では議論を明確にするため、
被写体に当たる光の条件が同一である
という前提のもとで話を進める。
露光量の決まり方(結論の先出し)
まず、この記事全体の結論を示す。
被写体に関する光の条件が同一であるとき、
フィルムや受光素子に届く光の量(露光量)は、
絞り値の逆数の二乗と、
シャッターが開いている時間の積に比例する。
関係式に記すと以下のようになる
感度は、露光量に対するフィルムや撮像素子の反応のしやすさを表す量であり、
露光量そのものを決める式には含まれない。
本記事では、この関係式が
なぜこの形になるのかを、順を追って説明する。
第1章|操作できる量と、結果として決まる量を切り分ける
まず、撮影に関わる要素を役割ごとに整理する。
撮影者が操作する量(入力条件)
絞り値
シャッター速度
感度
これらはすべて、撮影者がカメラに入力する数値である。
この時点では、写真が明るいか暗いか、適切かどうかはまだ決まらない。
操作の結果として決まること
露光量
露光量は、入力条件の結果として物理的に決まる量である。
結果に対する評価
露出
適正露出
これらは物理量ではなく、
結果をどう評価するかという判断語である。
第2章|露光量という「物理的な中間結果」
露光量とは、
フィルムや撮像素子に、
実際に到達した光の総量
を指す。
露光量は、
明るい/暗い
良い/悪い
といった評価を含まない。
純粋に「どれだけの光がフィルムや素子に届いたか」という結果である。
露光量を決める要素
露光量を決めるのは、
絞り値
シャッター速度
の二つだけである。
感度は、露光量そのものを増減させない。
感度とは、光に対するフィルムや撮像素子の**閾値(反応のしやすさ)**を表す量である。
閾値が低ければ少ない光で反応し、高感度と呼ばれる。
閾値が高ければ強い光でなければ反応せず、低感度と呼ばれる。
フィルムカメラでは不可能だが、デジタルカメラでは感度を任意に設定できる。
第3章|露光量の基本構造
露光量の構造は、決して複雑ではない。
露光量は、
光がどれだけレンズを通過して
どれだけの時間、フィルムや素子に当たるか
この二つで決まる。
言い換えれば、
露光量は、
光が通る断面積 × 光が当たる時間
で決まる。
同じ露光量になる具体例
同じ露光量を実現する、絞り値とシャッター速度の組み合わせはひとつだけではない。
以下は、同じ露光量になる組み合わせ例である。
| 絞り値 | シャッターが開いている時間 |
|---|---|
| 2.8 | 1/250 秒 |
| 4 | 1/125 秒 |
| 5.6 | 1/60 秒 |
| 8 | 1/30 秒 |
| 11 | 1/15 秒 |
絞りを絞って光の通過量を減らしても、
シャッターを長く開けておけば、
フィルムや素子に届く光の総量(露光量)は同じになる。
実際に関係式へ代入した値
関係式
に代入すると、以下のようになる。
| 絞り値 | 時間 | (1/絞り値)² | 積(相対露光量) |
|---|---|---|---|
| 2.8 | 1/250 | 0.1276 | 0.000510 |
| 4 | 1/125 | 0.0625 | 0.000500 |
| 5.6 | 1/60 | 0.0319 | 0.000532 |
| 8 | 1/30 | 0.0156 | 0.000521 |
| 11 | 1/15 | 0.00826 | 0.000551 |
相対露光量にわずかな差があるのは、
絞り値やシャッター速度が実用上の近似値だからである。
概念的には、すべて同じ露光量と考えてよい。
ここで、絞り値が 2.8・4・5.6・8・11 といった
一見すると不規則な数値になる理由にも触れておく。
絞りは光を「面積」で制御している。
光の量をちょうど半分、あるいは2倍にしたい場合、
面積を1/2倍・2倍にする必要がある。
しかし、円の面積は直径の二乗に比例するため、
面積を1/2倍にするには、
直径を 1/√2 倍にしなければならない。
絞り値は直径の逆数として定義されているため、
結果として、絞り値は √2 倍刻みの数列となり、
2.8・5.6・11 といった数値が現れる。
数値が不規則なのではなく、
面積を等比で変化させようとした結果が、
この数列なのである。
第4章|なぜ「絞り値の逆数の2乗」なのか
ここから、関係式の意味を掘り下げる。
逆数の理由は、絞り値がそもそも逆数だから
絞り値は、光が通る幅そのものではない。
円の面積でいえば、半径や直径に相当する量の逆数として定義されている。
そのため、
絞り値が小さいほど明るい
絞り値が大きいほど暗い
という、直感に反する関係が生じる。
言い換えれば、
絞り値は「明るさ」を表す量ではなく、
暗さを表す量と解釈すると実態に近い。
2乗になる理由は「面積」だから
絞りの開口は円形である。
光は「幅」ではなく「面積」で通過する。
円の面積は、半径の二乗に比例する。
そのため、
絞り値が小さく(通貨面積は大きく)なるほど光は増え
絞り値が大きく(通貨面積が小さく)なるほど光は減る
という関係は、
絞り値の逆数の二乗
という形で現れる。
面積だから2乗になる、ただそれだけである。
第5章|シャッター速度は光が当たっている時間
次にシャッター速度について考える。
露光量に影響するのは、
実際にシャッターが開いている時間
すなわち、光がフィルムや素子に当たっている時間である。
開いている時間が長いほど、露光量は増える
開いている時間が短いほど、露光量は減る
これは直感的であり、例外はない。
第6章|感度はどこに位置づくのか
感度は、
光の量を変えない
露光量を変えない
感度が決めるのは、
同じ露光量に対して、
どれだけ強く反応するか
である。
同じ露光量でも、
感度が高ければ明るく写り
感度が低ければ暗く写る
これは光が増えたのではなく、
反応の仕方が変わっただけである。
第7章|露出と適正露出は評価語である
露出は、
入力条件ではない
物理量でもない
結果に対する表現である。
適正露出とは、
露光量
感度
撮影者の意図
撮影状況
これらを踏まえ、
結果として適切かどうかを判断したもの
である。
適正露出は、計算で一意に決まる量ではない。
第8章|関係式に立ち戻る
最後に、冒頭で示した関係式に立ち戻る。
自然言語で表せば
絞り値とシャッター速度が露光量を決め、
露光量に対する感度の反応が写りを決める。
その結果を評価したものが露出であり、
適切かどうかを判断したものが適正露出である。
関係式として表せば
この因果関係は、どんな場面でも成立する。
おわりに|写真が難しく見えていた理由
写真が難しく感じられていた理由は、
光の性質が複雑だったからではない。
逆数や2乗が入った関係性が原因であり、その関係性をきちんと説明できる人が少ないからだろう。
露光量の決まり方を軸に、
概念と因果を整理すれば、
写真は理解可能な体系として立ち上がる。
本記事が、そのための基準点になれば幸いである。
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理屈コネ太郎の知ったか自慢|35歳で医師となり定年後は趣味と学びに邁進
