RR(リアエンジン・後輪駆動)は、発進時のトラクションに優れた駆動方式です。
その理由は、エンジンを後輪車軸より後方に配置することで、駆動輪である後輪に大きな荷重をかけられることにあります。
さらに、加速時には後輪への荷重移動が生じ、トラクションを確保しやすくなります。
この2つの作用を、発進の瞬間から順に考えます。
1.RRは発進前から後輪荷重が大きい
RRでは、エンジンや変速機などの重量物が車両後方に集中しているため、静止状態でも後輪に大きな荷重がかかります。
タイヤが路面へ伝えられる駆動力には、タイヤと路面の間の摩擦による限界があります。
その限界は、主にタイヤの摩擦特性と接地荷重によって決まります。
したがって、RRはクルマが動き始める前から、駆動輪である後輪に大きな駆動力を発生させやすい条件が整っています。
2.加速すると後輪荷重がさらに増える
駆動輪が路面へ力を伝えると、車両に加速度が生じます。
加速によって前輪から後輪へ荷重が移動すると、後輪の接地荷重はさらに増加します。
この荷重移動はすべての駆動方式で発生し、その大きさは車両質量、加速度、重心高、ホイールベースによって決まります。
RRの利点は、加速が始まる前から後輪荷重が大きいことです。
例えば、静的後輪荷重が車重の50%のクルマと60%のクルマを比較します。
同じ加速度によって車重の10%に相当する荷重が後輪へ移動すると、後輪荷重はそれぞれ60%と70%になります。
つまり、静的後輪荷重が大きいRRは、発進時から強い駆動力を伝えやすく、加速が始まると後輪荷重の増加によってトラクションの確保がさらに有利になります。
3.急発進・坂道発進・雪道での利点
強い加速を伴う発進
乾燥路面では、大きな静的後輪荷重に加速時の荷重移動が加わるため、強い駆動力を路面へ伝えやすくなります。
高出力のエンジンを搭載するスポーツカーにとって、有利な特性です。
坂道発進
上り坂では、重力によって後輪側の接地荷重が増える方向に働きます。
RRはもともと後輪荷重が大きいため、駆動輪のトラクションを確保しやすくなります。
ただし、勾配が大きいほど車両を上方へ動かすために必要な駆動力も増加します。坂道発進の成否は、後輪が伝えられる駆動力と、勾配によって必要となる駆動力との関係で決まります。
雪道などの低摩擦路面
雪道や凍結路面では、タイヤと路面の摩擦係数が小さいため、大きな加速度を得にくくなります。
加速度が小さければ、後輪への荷重移動も小さくなります。
そのため、加速前から後輪にかかっている静的荷重が、トラクション確保に大きな意味を持ちます。
RRは、この条件でも駆動輪に大きな荷重を確保しやすい構造です。
実際の雪道走行では、路面に適したタイヤの装着やトラクションコントロールも重要になります。
4.ポルシェ911とリアエンジン
RRを代表するスポーツカーがポルシェ911です。
911は1963年の初代モデル発表以来、リアエンジンという基本構造を受け継いできました。
ポルシェ自身も、リアエンジンの利点として、駆動輪に大きな荷重がかかることによる優れたトラクションを挙げています。特に、冬季や低摩擦路面での利点を説明しています。
この重量配分は制動時にも後輪の摩擦力を活用しやすくする一方、車両の旋回特性にも影響します。
ポルシェは、リアエンジンによるトラクションの利点を維持しながら、タイヤ、サスペンション、電子制御などを進化させてきました。
まとめ|RRは発進前から駆動輪に大きな荷重をかけられる
RRの発進トラクションが強い理由は、エンジンを後輪車軸より後方に配置することで、静的後輪荷重を大きくできることにあります。
その荷重を利用して駆動力を路面へ伝え、車両が加速すると、後輪への荷重移動がさらにトラクションの確保を助けます。
特に低摩擦路面では加速度が小さくなるため、静的後輪荷重の大きさが重要になります。
RRの強みは、加速による荷重移動が生じる前から、駆動輪に大きな荷重を確保できることです。
加速を可能にする最初の条件が、すでに車両の重量配分によって整えられているのです。