はじめに|セカンドライフは「用意された商品」から選ばなくてよい
セカンドライフを充実させるために必要なのは、業者や行政が勧める商品やサービスを次々に取り入れることではありません。
健康、お金、趣味、住まい。どれも重要ですが、誰かが用意した「老後の正解」を鵜呑みにせず、自分に本当に必要なものを自分で選ぶことの方が大切だと私は考えています。
人生100年時代、長寿社会、健康寿命、生涯学習、老後資金、移住――。
セカンドライフを考え始めると、こうした言葉とともに、さまざまな商品やサービスの広告が目に入ってきます。
もちろん、その中には有用なものもあります。
しかし、広告には当然ながら「それを利用してもらいたい側」の事情があります。便利さやメリットが強調される一方で、本当に自分に必要なのか、別のもっと簡単な方法はないのか、どんな制約や不利益があるのかは、自分で考えなければなりません。
本記事では、セカンドライフを考えるうえで重要な健康、資金計画、趣味、生きがい、住まいについて、業者や行政から提示される選択肢を少し離れたところから眺め、自分の頭で選ぶという観点から考えてみます。
健康維持|高価な「シニア向け商品」が必要とは限らない
セカンドライフを楽しむうえで、健康が重要なのは言うまでもありません。
身体が動かなければ、せっかく時間ができても、できることは少なくなります。
そこで、
- シニア向けフィットネス
- 介護予防プログラム
- サプリメント
- 健康器具
- 各種健康サービス
などが盛んに勧められます。
それらを利用すること自体に問題があるわけではありません。
問題は、
「健康を維持するには、何か特別な商品を買わなければならない」
と思い込んでしまうことです。
日々歩く、身体を動かす、ストレッチや柔軟体操をする。
まずは、そうした自分でできることから始めればよいでしょう。
自分に必要性があると判断してから、フィットネスクラブや器具、サービスを利用すればよい。
順番はそちらだと思います。
孤独を恐れすぎる必要もない
心の健康についても、よく「社会とのつながりを持ちましょう」「地域活動に参加しましょう」と言われます。
それが合っている人なら、もちろん参加すればよいでしょう。
しかし、だからといって、無理にコミュニティーへ参加しなければならないわけではありません。
私は別の記事でも書きましたが、退屈さえしなければ、孤独はそれほど大きな問題にならない人もいます。
人と頻繁に交流する生活が心地よい人もいれば、一人で本を読んだり、クルマをいじったり、船に乗ったり、何かを調べたりしている方が楽しい人もいる。
セカンドライフなのですから、そこまで世間の理想像に合わせなくてもよいでしょう。
老後資金|金融商品は「便利そう」に見えるほど仕組みを確認する
老後生活を楽しむためには、資金計画も欠かせません。
ただし、ここでも「老後資金に不安がありますよね」という言葉とともに、さまざまな金融商品や不動産サービスが提案されます。
だからこそ、商品の名前ではなく、その仕組みを理解することが重要になります。
リバースモーゲージとリースバックは別物
ここは元の記事で、私自身が二つの商品を混同していました。
リバースモーゲージは、自宅の所有権を維持したまま、その自宅を担保として融資を受ける仕組みです。一般に自宅に住み続けながら利用し、元本は死亡後などに不動産売却等で返済します。商品によっては変動金利のため、金利上昇によって利息負担が増える場合があります。
一方、
自宅を売却したあと、その家を借りて家賃を払いながら住み続ける
仕組みは、リースバックです。
こちらは売却した時点で自宅の所有権を失い、その後は賃借人になります。国土交通省や国民生活センターも、売却価格、家賃、契約期間などを十分確認する必要があると注意を促しています。
この区別はかなり重要です。
住宅ローンを一生懸命返済して、ようやく自分の家になった。
その家を売り、今度は家賃を支払って住み続ける。
もちろん、それが資金計画上合理的な人もいるでしょう。
しかし私なら、
「なぜ今この取引をする必要があるのか」
をかなり慎重に考えます。
「自宅に住み続けながら現金を得られる」という広告上のメリットだけを見て判断する話ではありません。
特にリースバックは、契約条件によってはずっと住み続けられるとは限らず、家賃の負担も続きます。近年は高齢者を中心とした相談もあり、消費者庁も安易に所有権を手放さないよう注意を呼びかけています。
投資でも「老後だから特別な商品が必要」とは限らない
年金以外の資金を確保するために資産運用を行うことも、一つの選択肢です。
しかし、
- 手数料はいくらか
- どの程度の損失があり得るのか
- いつ現金化できるのか
- 自分がその仕組みを理解しているのか
- そのリスクを取る必要が本当にあるのか
は確認しておいた方がよいでしょう。
「シニア向け」「老後資金向け」と書かれていることと、自分に適した商品であることは別問題です。
セカンドライフでは、資産を増やすことだけでなく、今ある資産をどう使い、どの程度残し、どこまでリスクを取るのかも考える必要があります。
老後破産を恐れるだけではなく、何に使いたいかを考える
「老後破産」という言葉を目にすると、つい支出を減らすことばかり考えてしまいます。
もちろん、収入と支出のバランスを無視すれば問題になります。
しかし、だからといって旅行にも行かず、趣味にも使わず、ひたすらお金を残すことがセカンドライフの目的でもないでしょう。
必要なのは、
何にいくら使えば、自分の生活が楽しくなるのか
を考えることです。
高額な旅行が本当に好きなら、そのために使えばよい。
興味がないなら、広告に煽られて行く必要はありません。
クルマが好きならクルマでもよいし、船でも、カメラでも、本でもよい。
楽しみと節約のバランスは、業者が決めるものではなく自分で決めるものです。
趣味と生きがい|「趣味を与えてもらう」という発想から離れる
セカンドライフについて調べると、「生涯学習」や「趣味を見つけましょう」という話がよく出てきます。
これにも少し違和感があります。
趣味とは、本来、
誰かから与えられるものではなく、自分が面白そうだと思ったものに勝手に手を出すもの
ではないでしょうか。
業者や役所が提供する講座やプログラムに参加するのもよいでしょう。
しかし、それだけが入口ではありません。
本を読む。
動画を見る。
中古の道具を買ってみる。
とりあえず一回やってみる。
合わなければやめる。
そんな始め方でも十分です。
サーフィンでもSUPでも、楽器でも、写真でも、クルマでも、釣りでもよい。
最初から「一生の趣味」を選ぶ必要などありません。
ボランティアも「自発的」でなければ意味が薄い
セカンドライフでは、ボランティア活動もよく勧められます。
しかし、自分が興味を持てない活動に、
「老後は社会貢献をした方がよいらしい」
という理由だけで参加しても、長続きしないでしょう。
ボランティアの根本にあるのは、無償で働くことそのものよりも、自分の意思で参加することです。
興味があるなら参加する。
面白くなければやめる。
最初からフルコミットする必要もありません。
まず短期間のイベントや、小さな活動に参加してみる。
そこで、
「これは面白い」
「これは自分には合わない」
と判断すればよいでしょう。
業者や行政が仕立てたプログラムに乗ることを否定するつもりはありません。
ただ、自分の人生であり、自分の時間です。
自分でやりたいことを見つける。なければ作る。
その工夫も、セカンドライフの面白さではないでしょうか。
住まい|「老後は田舎暮らし」という物語にも注意する
住まいも、セカンドライフで大きなテーマになります。
定年後の田舎暮らしやUターン、地方移住などには確かに魅力があります。
しかし、
- 日常の買い物
- 交通手段
- 医療機関へのアクセス
- 建物の維持
- 地域社会との関係
など、実際に生活を始めてから効いてくる条件もあります。
旅行で訪れて気持ちのよい土地と、毎日生活するのに便利な土地は同じとは限りません。
「自然に囲まれた第二の人生」という美しい広告を見たら、その景色だけではなく、
10年後、20年後にもここで生活できるか
と考えてみた方がよいでしょう。
シニアシェアハウスも「楽しそう」だけでは決めない
シニア同士で暮らすシェアハウスという考え方もあります。
気の合う人と一緒に暮らせれば、楽しそうに見えます。
しかし、人と旅行することと、人と一緒に暮らすことはまったく違います。
- 共有スペースをどう使うか
- 掃除を誰がするか
- 生活時間が違ったらどうするか
- 来客をどうするか
- 金銭負担をどう分けるか
- 一人になりたいときのプライバシーをどう確保するか
こうした細かな違いが、毎日のことになります。
昔から姉妹のように交流してきた友人同士なら、うまくいくこともあるでしょう。
しかし、
「仲がよいから一緒に暮らせる」
とは限りません。
やってみたいのであれば、理想像だけで決めず、ルールや退出方法まで含めて十分に確認しておく必要があると思います。
セカンドライフで最も大切なのは「自分で決めること」
健康、資金、趣味、生きがい、住まい。
セカンドライフについて考えると、さまざまな問題が絡み合います。
そして、その一つ一つについて、
「こうするのが理想的な老後です」
という商品やサービスや社会的な物語が用意されています。
しかし、その中から選ばなければならない理由はありません。
必要なら利用する。
必要なければ利用しない。
面白そうならやってみる。
合わなければやめる。
自分で別の方法を考えてもよい。
それまでの人生で培ってきた知識や経験、判断力は、まさにこういう場面で使うためのものではないでしょうか。
人生100年時代と言われます。
実際には人生の最後の時期には、誰かの助けを必要とする可能性も高くなるでしょう。
だからこそ、その前にある比較的自由に動ける時間を、
誰かが考えた「理想の老後」を実行する時間ではなく、自分自身の智慧と価値観を使う時間にする。
セカンドライフとは、それまでの人生の単なる延長線ではありません。
それまでに培い、磨いてきた智慧と価値観を土台として、自分で選び直すことのできる新しいステージなのだと私は思います。
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