キャリーとビッグの歴史|何度も別れたのに結婚した理由

キャリーとビッグの歴史|何度も別れたのに結婚した理由
キャリーとビッグの歴史|何度も別れたのに結婚した理由

HBOの伝説的ドラマ『Sex and the City』において、キャリー・ブラッドショーと“Mr.Big”ことジョン・プレストンは、2人の恋の行方を見守り続けた視聴者の心を揺さぶり続けた特別なカップルだ。彼らは出会い、惹かれ合い、別れ、また戻る――そんな愛のラリーゲームを繰り返しながら、最終的には結婚に至る。長く、紆余曲折の絶え間がないキャリーとビッグの関係の歴史。

この複雑でときに視聴者をウンザリさせるような長く紆余曲折に満ちた恋愛関係は、なぜ続いたのか?そしてなぜ、結婚というひとつの終着点に辿り着いたのか?

こうしたキャリーとビッグの関係の経緯とその結末の理由は、大きく4つに整理できると理屈コネ太郎は考えている。以下、私見を述べたい。


Contents

① キャリーは「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」の信奉者だった

キャリーは、一見モダンで独立した女性に見えるが、実は“運命の人”や“一生に一度の恋”を信じてやまない、いわばロマンティック・ラブ・イデオロギーの信奉者だった。

ロマンティック・ラブ・イデオロギーとは、「恋愛こそ人生の本質であり、個人を完成させるのは真実の愛である」という現代の恋愛観の根底にある思想のことだ。ロマンティックラブイデオロギーについては別のページに詳細に記述しました⇒ココをクリック

キャリーは作中を通じて、この信念に基づいて行動している。どれほど辛い思いをしても、ビッグとの関係を「運命」だと信じていて、諦めることができなかった。(筆者注:AJLT…Season2でキャリーはロマンティックラブイデオロギーの人独特の言葉を口にするが、それはまた別の機会に解説する事にしよう)

この価値観を持つ限り、キャリーにとってビッグとの恋は、傷つけられても終われない「真実の愛」だった。

理屈コネ太郎の目には、キャリーは“最後まで一貫して愛を信じ抜いた稀有な存在”として映った。


② キャリーという女性は、魅力と知性の両方を併せ持つ稀有な存在だった

キャリーは単にファッショナブルで感情豊かな女性というだけではない。彼女は聡明で、深い歴史観と人間観を持つ思索家でもある。読書を愛し、自らの人生経験を繊細な言葉に置き換える力を持ち、それをコラムという表現媒体で昇華できるライターだった。

彼女の文章には、洞察力とユーモア、そして人間の内面描写について彫刻のような精緻さがあった。感情に流されやすいようでいて、その奥には冷静な自己省察が宿っていた。

そんなキャリーは、孤独と虚無を内に抱えるビッグのような男性にとって、知的で情熱的で、刺激と発見を与えてくれる奔放な知性でもあったのだ。


③ ビッグには、壊れてしまった“真実の愛”の過去がある

作中ではビッグの過去の恋愛が詳細に語られることはない。しかし、彼が一度目の離婚を経験しており、その後、ナターシャという若く安定志向の女性と再婚していることは描かれている。

このナターシャとの結婚は、キャリーとの破局直後に選ばれたものであり、感情の置き所を見失ったビッグが、キャリーとは真逆の「予測可能な安定」を求めた逃避行動だったと考えられる。しかし、ナターシャがインテリアをベージュ一色で統一するような「均質性」を象徴する存在であったことからもわかるように、ビッグにとってその関係は空虚なものだった。

ビッグが本当に過去に“真実の愛”を経験していたかどうか、その事実は作中で明示されない。だが、視聴者にとって決定的なヒントとなる場面がある。

それは、シーズン1第1話でキャリーが「あなたは本当の愛を知っているの?」と尋ねたとき、ビッグが一瞬ためらったのち、「abso-f*in’-lutely」と答え、立ち去るシーンだ。

この一言には、かつて深く愛した誰かを、何らかの理由で失った男の愛惜と、それを乗り越えた男の強さが感じられた。
そしてこの瞬間から、キャリーはまるで魔法にかかったように、ビッグを「運命の人」だと思い定めていく。

ビッグが結婚式から逃げたのは、「また愛を失うことへの恐れ」と、三度目の(また失敗するかも知れない)結婚に対する世間(特にビッグ周囲の男性の友人たち)の冷笑にビビった結果だったと見ることができる。

愛とは、ビッグにとって喪失の恐怖の対象でもあった。それでも彼は、最終的にキャリーとの関係に向き合うことを選ぶ。それが、かつての喪失を越える“本当の愛”の再生だったのかもしれない。


④ 最後は、キャリーの想いにビッグが“根負け”した

最終的に二人が結婚した理由は、ロマンティック・ラブを諦めきれないキャリーの一貫した想いに、ビッグが折れたからだと言える。また、キャリーが法的立場に拘った面もある。それは、運命の人と夫婦になるのがロマンティックラブだから。

ビッグは根本的に“自由”と“孤独”を好む性格だったが、キャリーとの繋がりが何度も切れても、なぜか戻ってしまう。ビッグは長いキャリーとの関係で気づかされていたのだ――自分が望んでいたのは「孤高」ではなく、「理解と受容」だったことに。

ロマンティック・ラブを信じ続けたキャリーと、懐疑的で距離を取っていたビッグ。彼女が理想を語り続け、彼が現実と折り合いをつけた結果が、「結婚」だった。


おわりに:これは現代の寓話である

キャリーとビッグの物語は、恋愛における価値観の衝突と折り合いを描いた現代の寓話だ。

夢見がちな理想主義の女と、傷つくことを恐れる現実主義の男が交差したとき、どこに着地するのか――それをこの二人は、何年もかけて見せてくれた。

キャリーが信じた“運命の恋”は、必ずしも完璧ではなかった。だがその不完全さを抱きしめることで、ふたりは「人生の旅を共に歩む」という選択に至った。

恋愛とは、“正しさ”よりも“納得”に至るまでの物語なのだと、このカップルは教えてくれる。

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