摩擦円で理解するブレーキと舵角のタイミング ☆ サーキットで速く曲がる操作法

サーキットで旋回する赤いスポーツカーと、ブレーキ・舵角・加速の順番を示した摩擦円の図
摩擦円で理解するブレーキと舵角の順番

はじめに

前の記事「摩擦円とは?減速・旋回・加速の関係をサーキット走行で解説」では、減速・旋回・加速を、タイヤが持つ能力の連続的な配分として考えました。

ストレートではタイヤの能力を主として減速に使い、ターンインでは減速に使う力を減らしながら旋回に使う力を増やします。

コーナー出口では、旋回に使う力を減らしながら、駆動輪で加速に使う力を増やします。

この配分を実際の操作に置き換えると、

一つの操作を減らしながら、次の操作を増やしていく

という形になります。

ターンインでは、ブレーキを緩めながら舵角を増やす。

立ち上がりでは、舵角を戻しながらアクセルを増やす。

本記事では、ストレートエンドからコーナー出口までを時間軸に沿って整理します。


1. 最大減速|必要な制動力を作る

ストレートエンドでは、タイヤが受け持てる範囲に合わせてブレーキ入力を立ち上げ、必要な減速度を作ります。

ブレーキを踏むとタイヤに縦方向の力が発生し、車両が減速します。

同時に前方への荷重移動が起こり、前輪の垂直荷重が増え、後輪では減ります。

タイヤが発生できる力は、垂直荷重、速度、路面状態、タイヤの状態などによって変化します。

そのため最大減速では、

その瞬間に使えるタイヤの能力に合わせて制動力を立ち上げる

ことが重要です。

実践ポイント

  • ブレーキ入力を滑らかに立ち上げる
  • 車両の減速度と姿勢を感じながら必要な制動力まで高める
  • ターンインが近づいたらブレーキを抜く操作へ移る

2. ターンイン|ブレーキを減らしながら舵角を増やす

最大減速付近では、タイヤの能力の大きな部分をブレーキングに使っています。

ターンインでは、ブレーキを徐々に緩めながら舵角を増やします。

ブレーキを緩めると、減速に使っていた縦方向の力が減り、その分だけ旋回に使う横方向の力を増やしやすくなります。

同時に、ある程度ブレーキを残すことで前方への荷重移動も維持され、前後タイヤの能力バランスも変化します。

つまりターンインでは、

ブレーキを減らす操作と、舵角を増やす操作を重ねながら、クルマを減速状態から旋回状態へ移していく

ことになります。

一般的には、舵角を増やすにつれてブレーキ量を減らしていきます。

ブレーキを抜き始める時点や、どの程度残すかは、コーナー形状、速度、車両特性によって変わります。

これが、摩擦円から見たトレイルブレーキングの基本です。

実践ポイント

  • ターンインに向けてブレーキを滑らかに緩める
  • 舵角を増やすにつれてブレーキ量を減らす
  • ブレーキリリースとステアリング操作を一続きの動作として扱う

3. 旋回中|4本のタイヤへの要求を急変させない

旋回中は、タイヤの能力を大きく横方向へ使っています。

この状態でブレーキ、アクセル、ステアリングの入力を急激に変えると、各タイヤに要求する縦方向と横方向の力、さらに前後左右の荷重配分が短時間で大きく変化します。

たとえば、

  • ブレーキを急に強める
  • アクセルを急に戻す
  • 舵角を急に増やす

といった操作では、4本のタイヤが担当している仕事が一気に変わります。

前輪側が先に限界へ近づけば、アンダーステア方向の挙動が強くなります。

後輪側が先に限界へ近づけば、オーバーステア方向の挙動が強くなります。

旋回中に意識したいのは、

その操作によって、どのタイヤに、どの方向の力を、どれだけ要求しているのか

ということです。

実践ポイント

  • 入力の大きさだけでなく、入力を変える速さも意識する
  • ブレーキ、アクセル、舵角を滑らかに変化させる
  • 車両の向きが出口へ整うにつれて、立ち上がりの操作へ移る

4. コーナー出口|舵角を戻しながらアクセルを増やす

コーナー出口では、旋回から加速へ移ります。

車両の向きが出口方向へ整い、ステアリングを戻していくと、必要な横方向の力が減っていきます。

その分、駆動輪では加速に使える縦方向の力を増やせるようになります。

そこで、

舵角を戻しながらアクセルを増やします。

駆動輪が大きな横方向の力を使っている間は、加速に使える余裕も限られます。

ステアリングを戻して横方向への要求を減らすほど、より大きな駆動力を使えるようになります。

このため、

アクセルを使い始める時点

と、

大きなアクセル開度を使える時点

は分けて考える必要があります。

早い段階から小さくアクセルを使えるコーナーでも、大きなアクセル開度へ移れるのは、車両の向きが整い、横方向への要求が十分に減ってからです。

また、加速に使う縦方向の力をどのタイヤが担当するかは駆動方式によって変わります。

FFでは前輪が旋回と駆動を担当します。

FRでは前輪が主として旋回を担い、後輪が旋回しながら駆動力も発生します。

4WDでは前後輪へ駆動力を分配できます。

実践ポイント

  • 車両の向きが出口方向へ整い始めたらアクセルを使い始める
  • 舵角を戻す量に合わせてアクセルを増やす
  • 横方向への要求が減るほど大きなアクセル開度へ移る

5. 急操作がタイムを失いやすい理由

タイヤを限界近くまで使っている状態では、使える余裕は小さくなっています。

そこで急な操作によって前後どちらかのタイヤが限界に達すると、アンダーステアやオーバーステアが生じます。

するとドライバーは、

  • アクセルを戻す
  • 舵角を修正する
  • 加速開始を遅らせる

といった修正を行うことになります。

修正に使う時間と距離は、狙った走行ラインや加速へ使えません。

そのため、急操作によって一度タイヤの限界を越えてから修正するより、

最初からタイヤの能力に合わせて入力を滑らかにつなぐ方が、速いコーナリングにつながります。


まとめ|速いコーナリングは操作を重ねてつなぐ

ストレートエンドからコーナー出口までを整理すると、

強く減速する
→ ブレーキを減らしながら舵角を増やす
→ 旋回を中心とした状態へ移る
→ 舵角を戻しながらアクセルを増やす
→ 大きな加速へ移る

という流れになります。

ブレーキ、ステアリング、アクセルは、時間軸上で互いに重なりながら役割を受け渡していきます。

そのとき重要になるのが、

ブレーキを抜く速さ、舵角を増やす速さ、舵角を戻す速さ、アクセルを増やす速さ

です。

これらを車両の姿勢とタイヤの状態に合わせてつなぐことで、タイヤの能力を減速・旋回・加速へ連続的に配分できます。

摩擦円は、その関係を理解するための地図です。

速いコーナリングとは、タイヤの能力を使い切る一点を探すことよりも、減速から旋回、旋回から加速へ、その能力を滑らかにつないでいくことです。


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作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

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