船外機を2機掛けにするか、1機掛けにするか。
必要な出力を得られる場合、どちらを選ぶのが自分の使い方に合っているでしょうか。
本記事では、2機掛け船外機艇を実際に使用している当サイト筆者の理屈コネ太郎が、安全上の余裕・低速操船性・走行性能・燃費・コスト・メンテナンス性という観点から比較します。
Contents
要約|30秒でわかる違い
| 観点 | 2機掛け | 1機掛け |
|---|---|---|
| 安全上の余裕 | 片側停止時にも推進力を残せる可能性がある | 構成をシンプルにできる |
| 低速操船 | 左右の推力差を利用できる | 操船支援装置との組み合わせで高められる |
| 加速・プレーニング | プロペラ面積が増え、有利になる場合がある | 軽量・低抵抗を生かせる |
| 最高速・巡航効率 | 重量と水中抵抗が増えやすい | 軽量・低抵抗にまとめやすい |
| 初期費用 | エンジンや艤装が増える | 抑えやすい |
| 維持費 | エンジン固有の整備が2基分 | 整備対象が少ない |
| 船尾重量 | 大きくなりやすい | 軽くまとめやすい |
| 見た目 | 力強く存在感がある | シンプル |
大きく整理すると、
2機掛けの魅力は、安全上の余裕と左右の推力を利用できる低速操船性。
1機掛けの魅力は、軽さ・低抵抗・構成の単純さ・コストの低さです。
1. まず「何と何を比較するのか」を整理する
1機掛けと2機掛けを比較するときには、総出力をそろえた比較なのか、機数を増やして総出力も増やす比較なのかを、最初に分けて考える必要があります。
たとえば、
- 300馬力×1基と150馬力×2基
- 250馬力×1基と250馬力×2基
では、比較の意味が違います。
前者は、どちらも総定格出力300馬力です。
後者では、総定格出力が250馬力から500馬力へ増えます。
同じ船外機を1基から2基へ増やせば総出力も増えるため、大きな船体を動かす力や加速性能も高めやすくなります。
一方、総定格出力をそろえた1機掛けと2機掛けでは、
- エンジン重量
- ロワーユニットによる水中抵抗
- プロペラ径
- ギア比
- プロペラ回転数
- 船尾荷重
- エンジン間隔
- 船底形状
- プロペラセッティング
- トリム
などが走行性能を左右します。
したがって、船外機の台数だけを見るより、船体・エンジン・プロペラを組み合わせた推進システム全体を見る方が実態に合っています。
2. 2機掛けの大きな魅力|安全上の余裕
2機掛けを選ぶ大きな理由のひとつが、一方のエンジンが停止したときにも、もう一方のエンジンで推進力を得られる可能性があることです。
沿岸から離れる航海や、救援まで時間がかかる海域では、この余裕に大きな価値があります。
片側だけになったとき、どこまで走れるか
残った1基で得られる性能は艇によって変わります。
影響する主な要素は、
- 船体重量
- 残ったエンジンの出力
- プロペラ
- 積載量
- 風
- 波
- 潮流
などです。
1基でプレーニングできる艇もあれば、低速での航行継続を想定する艇もあります。
また、推力を発生する位置が船体中心から片側へ移るため、直進時の操舵感も通常時とは変化します。
ここで得られる大きな価値は、自力で動ける可能性を一つ多く持てることです。
3. 安全上の余裕は、艇全体のシステム構成でも変わる
2機の船外機を搭載する艇でも、燃料・電源・操舵などの構成にはさまざまな方式があります。
代表的なのが燃料系です。
1個の燃料タンクから2機へ供給する構成
ツイン船外機艇でも、大きな燃料タンクを1個搭載し、そこから左右それぞれのエンジンへ燃料を供給する構成があります。
左右それぞれに、
- 燃料ピックアップ
- 燃料ライン
- フィルター
などを設ければ、片側の燃料供給系に生じたトラブルの影響を限定しやすくなります。
燃料自体は共通のタンクに貯蔵されているため、タンク内への水混入、燃料汚染、誤給油などは両方のエンジンに影響する可能性があります。
独立した燃料タンクを持つ構成
左右のエンジンに、
- 独立した燃料タンク
- 独立した燃料ライン
- 独立したフィルター
を組み合わせれば、燃料系についても安全上の余裕を高められます。
複数の燃料タンクを持ち、バルブやマニホールドによって供給元を選べる艇もあります。
同じ考え方は、電源や操舵・制御系にも当てはまります。たとえば、共通の電源や制御系を持つ構成では、その共通部分の設計も安全上の余裕に影響します。
2機掛け艇の安全上の余裕を見るときには、
エンジンの台数とともに、燃料・電源・操舵などがどのように構成されているか
まで見ると、その艇の特徴がよりよく分かります。
4. 2機掛けのもうひとつの魅力|低速操船性
私自身が2機掛け艇を使っていて、大きなメリットだと感じるのが低速操船です。
左右のエンジンを独立して操作できる構成では、
- 左舷を前進
- 右舷を後進
といった操作によって、大きな回頭モーメントを作れます。
船速をあまり上げずに船首方向を変えやすく、
- 接岸
- 離岸
- 狭い場所での回頭
- 風を受けながらの姿勢調整
などで非常に便利です。
現在は1機掛けでも、
- バウスラスター
- ジョイスティック操船
- 電子制御ステアリング
などによって低速操船性を高められます。
複数機掛けでは左右の推力を独立して使えるため、横方向への移動やその場に近い回頭を作りやすくなります。1機掛けでは、ジョイスティックやバウスラスターなどを利用して別の方法で艇の姿勢や位置を調整できます。
実際の取り回しは、船外機の台数と操船支援装置を組み合わせた艇全体のシステムとして見るのが実用的です。
5. 走行性能|総出力が同じなら何が違う?
たとえば、
300馬力×1基と150馬力×2基
のように総定格出力をそろえて比較してみます。
それぞれに異なる特徴があります。
1機掛けが有利になりやすい部分
1機掛けでは、
- エンジン重量が小さい
- ロワーユニットが1本
- 水中抵抗が小さい
- 船尾荷重を抑えやすい
という特徴があります。
このため、艇との組み合わせが良ければ、最高速や巡航効率で有利になりやすい構成です。
2機掛けが有利になりやすい部分
2機掛けでは2組のプロペラで水をつかむため、プロペラによって推進力を発生させる面積を大きくできます。
そのため、艇やセッティングによっては、
- 発進加速
- 重い積載状態からの加速
- プレーニングへの移行
などで有利に働く場合があります。
カウンターローテーション
2機掛けでは、左右で逆方向に回転するプロペラを組み合わせる構成も一般的です。
左右のプロペラ回転による影響を釣り合わせやすくなり、直進時の操舵感や船体姿勢を整えやすくなります。
1機と2機の走行性能は、
最高速・加速・巡航効率・操舵感などをまとめて評価する
のが実用的です。
同じ船体で比較した実走データがある場合には、
- 加速
- プレーニング
- 巡航速度
- 燃費
- 最高速
を見ると、構成による違いが分かりやすくなります。
6. 1機掛けの大きな魅力|軽さと効率
必要な出力を1基で得られる場合、1機掛けには大きなメリットがあります。
まず軽さです。
1基になることで、
- エンジン本体
- ロワーユニット
- プロペラ
- ステアリング機構
- リギング
などを減らせます。
船尾重量が小さくなり、静止時の姿勢や走行時のトリムにも影響します。
水中を通るロワーユニットも1本になるため、抵抗も抑えやすくなります。
同程度の総出力で比較した場合、この軽さと低抵抗によって、1機掛けは巡航燃費や高速域の効率で有利になりやすい構成です。
具体的な燃費差は、
- 船体
- 船速
- 積載量
- 海況
- エンジン
- プロペラ
- トリム
によって変わります。
購入候補艇が決まっている場合には、その船体とエンジンの組み合わせによる実走データが有力な判断材料になります。
7. コストとメンテナンス
2機掛けではエンジン本体が2基必要になります。
さらに、
- プロペラ
- リギング
- 燃料系統
- ステアリング機構
- 各種制御装置
なども増えます。
その分、購入時の費用も大きくなります。
維持についても、
- エンジンオイル
- オイルフィルター
- ギアオイル
- スパークプラグ
- アノード
- インペラ
- フラッシング
など、エンジン固有の整備項目は基本的に2基分です。
交換部品や予備品についても、2系統分を考える場面が増えます。
一方、洗艇、係留、出航準備など艇全体に関する作業は共通です。
私自身は、日常的な作業を順番どおりにまとめて行うことで、2機分の作業負担を減らしています。
詳しくは以下の記事でも紹介しています。
船外機の出航前・帰港後メンテナンス|チルト・冷却水洗浄の手順
8. 大きな総出力や船外機化を考える場合
必要な総出力が大きくなるほど、複数の船外機を組み合わせる意味も大きくなります。
船内機艇や船内外機艇から船外機へ換装する場合も、最大搭載出力・トランサム強度・船尾浮力・重量配分など船体側の条件を踏まえて機数を決めることになります。
詳しくは別記事で紹介しています。
9. 見た目も立派な選択理由
ここからは完全に筆者の主観です。
2機掛けはカッコいい。
左右に大きな船外機が並んでいる姿には独特の迫力があります。
左右対称に機械が並ぶ船尾を見ると、
「オレの船、かっけえ~」
となります。
プレジャーボートは、移動や釣りのための道具であると同時に、趣味の対象でもあります。
安全性、性能、燃費、コストを考えたあとに、
自分がどちらを好きか
という判断軸が加わるのも、ボート選びの楽しさだと思います。
10. 1機か2機かを決める3つの判断軸
地域や航行スタイルが変わっても、判断の中心になるのは次の3点です。
① 必要な出力を1基で得られるか
必要な出力を1基で十分に得られる艇では、
- 軽量
- 低抵抗
- 低コスト
- 整備の単純さ
という1機掛けの特徴を生かしやすくなります。
より大きな総出力が必要になれば、2機以上を組み合わせる価値が大きくなります。
② 一方が停止したあと、自力で動けることにどれだけ価値があるか
航行環境によって、この価値は大きく変わります。
たとえば、
- 陸岸からの距離
- 救援までの時間
- 夜間航行
- 季節や海況
- 一人で航行する機会
- 航続距離
などによって、安全上の余裕に求めるものも変わります。
自力で航行を続けられる可能性を重く見るほど、2機掛けの価値は大きくなります。
③ 低速操船性能をどのように得るか
狭い港内で頻繁に離着岸する艇では、低速操船性も重要です。
2機掛けでは左右の推力差を直接利用できます。
1機掛けでは、バウスラスターやジョイスティックなどの操船支援装置を利用できます。
どちらの方法が自分の艇と使い方に合うかを考えることになります。
そして最後に、
その性能に対して、どれだけの購入費・維持費・整備作業を受け入れるか
を重ねれば、かなり判断しやすくなります。
11. まとめ
船外機2機掛けと1機掛けには、それぞれ明確な特徴があります。
1機掛けは、軽量・低抵抗・低コスト・シンプルな整備を生かしやすい構成です。
2機掛けは、一方が停止したときにも推進力を残せる可能性と、左右の推力を独立して利用できる低速操船性に大きな価値があります。
走行性能は、
- 総出力
- 船体
- 重量
- 水中抵抗
- プロペラ
- ギア比
- トリム
- セッティング
の組み合わせによって決まります。
安全上の余裕についても、エンジンの台数に加えて、燃料・電源・操舵など艇全体の構成を見ることで、その艇の特徴がより明確になります。
最終的な選択では、
必要な出力を1基で得られるか。
自力で航行を続けられる余裕にどれだけ価値を感じるか。
低速操船性能をどのように得るか。
この3点を軸にすると、自分の航行スタイルに合った答えを出しやすくなります。
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