Viking、Hatteras、Bertram|米国オフショア・ビッグゲームフィッシャーのトップ3を読む

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Viking、Hatteras、Bertram――歴史・船づくり・資本背景から見る三者三様(本記事は2026年6月投稿)

米国製オフショア・ビッグゲームフィッシャーを語るとき、VikingHatterasBertramの3ブランドは避けて通れない。いずれも単なる高級ボートメーカーではなく、米国のスポーツフィッシング文化、外洋航走性能、そして大型フィッシャーマンというジャンルそのものの発展と深く結びついてきた存在である。

このクラスの比較では、単純なスペック表だけを並べても本質は見えにくい。むしろ重要なのは、それぞれのブランドがどのように生まれ、どのような船づくりの思想を持ち、経営危機や資本の変化をどう乗り越えてきたかである。つまり、Viking、Hatteras、Bertramの違いは、船体そのものだけでなく、ブランドの時間軸と事業の継続性に表れる。

三社のブランドの立ち位置を整理する

ブランド起点現在の資本・経営体制ブランドの特徴
Viking1964年、ニュージャージー州Healey家によるファミリー経営。現在も家族所有・垂直統合型の事業体制現代米国スポーツフィッシャーマンの王道。大型コンバーチブル、エンクローズドブリッジ、広いモデルレンジ
Hatteras1959年、ノースカロライナ州2021年にWhite River Marine Groupが取得。Bass Pro Shops系の大手マリングループ傘下大型FRPヨットのパイオニア。堅牢性、外洋性能、ラグジュアリー性の伝統
Bertram1960年代初頭、マイアミ2015年以降、Gavio家/Baglietto Group傘下。米国ブランドとして再構築Deep-V船型の象徴。Moppie、Bertram 31に由来する外洋走破性の神話性

Vikingは現在もHealeyファミリーのもとで運営され、New GretnaとMullicaの生産拠点、サービスヤード、関連会社を含む垂直統合型の体制を築いている。公式資料では、同社は1964年にBill HealeyとBob Healeyが小規模なPeterson-Viking Buildersを買収したことから始まり、現在も2代目・3代目のHealey家によるファミリー経営が続いていると説明されている。

Hatterasは1959年に最初の艇「Knit Wits」を世に出し、40フィート超のFRPボートとして先駆的な存在になった。現在は2021年にブランドを取得したWhite River Marine Group、つまりBass Pro Shops系の大手ボートグループ傘下にある。

BertramはRichard BertramとC. Raymond HuntによるDeep-V船型の物語から始まる。1960年のMiami-Nassau RaceでMoppieが荒天のなか記録的な走りを見せ、その思想がBertram 31へと受け継がれたことが、ブランドの原点として語られている。現在はGavio家が所有し、Baglietto Groupの一部として運営されている。

Viking――継続性と垂直統合で築いた現代の王道

Vikingの強みは、ブランドの継続性にある。1964年の創業以来、同社は一貫してHealeyファミリーの影響下で成長してきた。現在のVikingは、Convertible、Enclosed Bridge、Sky Bridge、Open、Sport Coupe、Sport Tower、Billfishなど、46フィート級から90フィート級まで幅広いモデルを展開する大型スポーツフィッシャーマンメーカーである。

船づくりの面では、Vikingは「内製化」の色が濃い。ヨット本体だけでなく、タワー、電子機器、サービスまでグループ内で統合する体制を整えており、Palm Beach TowersやAtlantic Marine Electronicsなどの関連会社を通じて、注文から艤装、アフターサービスまでを一体的に扱う。これは単なる規模の大きさではなく、品質管理と納期、顧客対応を自社のコントロール下に置くための構造でもある。

ただし、Vikingにも危機はあった。1990年代初頭の景気後退と1991年の米国連邦ラグジュアリー税は、大型ヨット業界に大きな打撃を与えた。Vikingも例外ではなく、従業員数はピーク時の1,500人規模から100人未満へと急減したとされる。同社はこの時期を、創業家による資金投入と業界全体での税制撤廃運動によって乗り越えた。

その後のVikingは、むしろ危機を経て強くなったブランドと見ることができる。現在もファミリー所有を維持しながら、大型コンバーチブルを中心に、Valhalla Boatworksのようなセンターコンソール系ブランドも展開している。米国スポーツフィッシャーマンのトップ3の中で、事業の連続性という観点では、Vikingが最も明確なストーリーを持つ。

Hatteras――FRP大型艇の先駆者から、再出発のブランドへ

Hatterasの原点は、ノースカロライナの荒い海にある。創業者Willis Slaneは、Cape Hatteras沖の厳しい海況に耐えるボートを求め、最初のHatterasであるKnit Witsを生み出した。Hatterasはこの艇を、40フィート超のFRPボートとして重要な存在だったと位置づけている。

Hatterasの魅力は、ラグジュアリーでありながら外洋に強いというイメージにある。BertramがDeep-Vの走りで語られるブランドだとすれば、Hatterasは大型FRPヨットの堅牢性、クラフトマンシップ、そして長距離を安心して走るための設計思想で語られるブランドである。公式サイトも、船体設計、推進系、コネクティビティ、内装を含む総合的な革新を打ち出している。

一方で、資本構成の面では、Hatterasは3ブランドの中でも大きな変遷を経験してきた。2001年にはBrunswickがGenmar IndustriesからHatterasを取得し、2013年にはBrunswickがHatterasとCABOをVersa Capital系の会社へ売却した。その後、HatterasはVersa傘下で再資本化を行い、最終的には2021年にWhite River Marine Groupへ売却されている。

この2021年の売却には、経営再建の意味合いもあった。取引アドバイザーの資料では、当時のHatterasはセミカスタム艇の価格設定や未完成艇のバックログにより、流動性面の課題を抱えていたと説明されている。White River Marine Groupによる取得は、ブランドを大手ボートグループの資金力と生産体制のもとで再出発させる動きだった。

現在のHatterasは、Vikingのような一直線のファミリー企業ではない。むしろ、歴史的な名門ブランドが大手グループ傘下で再構築されている段階と見るべきだろう。公式サイトでは48フィート、77フィート、Legacy GT Seriesなどを掲げており、ブランドとしての再始動を前面に出している。

Bertram――Deep-Vの神話と、ブランド再生の物語

Bertramは、米国スポーツフィッシャーマンの世界で最も象徴的な起源を持つブランドのひとつである。その物語の中心にあるのが、C. Raymond HuntによるDeep-V船型と、Richard BertramのMoppieである。1960年のMiami-Nassau RaceでMoppieが荒れた海を走り切った逸話は、現在でもBertramブランドの核心として語られている。

このDeep-Vの思想は、Bertram 31によって広く知られるようになった。Bertram 31は、単なるクラシックモデルではなく、今日のオフショア・スポーツフィッシャーマンに続く船型思想の出発点のひとつといえる。Hatterasが大型FRPヨットの堅牢性で、Vikingが現代的な大型スポーツフィッシャーマンの完成度で語られるなら、Bertramは外洋を走る船型そのものの記憶で語られるブランドである。

ただし、企業としてのBertramは平坦な道を歩んできたわけではない。1998年にはFerretti Groupの傘下に入り、その後ブランドは苦境に陥った。2015年にはGavio GroupがBertramのブランド名と権利を取得し、Tampaを新たな拠点として再建を進めることになった。Tampa Bay EDCの資料では、旧来の会社が困難に直面し操業停止を余儀なくされた後、Gavio Groupがブランドを取得したと説明されている。

現在のBertramは、Gavio家が所有し、Baglietto Groupの一部として運営されている。Baglietto側は、Bertramを米国ブランドとして維持する姿勢を示しており、欧州市場向けの展開を進めつつも、Made in USAのDNAを保つと説明している。

現行ラインアップを見ると、Bertramは28CC、34CC、39CCといったセンターコンソール系に加え、35 Flybridge、50 Sport、61 Convertibleを展開している。Vikingのように90フィート級まで広く積み上げるというより、現在のBertramは、Deep-Vの伝統を現代的なサイズレンジに再構成している段階と見るのが自然だろう。

トップ3をどう比較するか

Viking、Hatteras、Bertramの比較で面白いのは、3ブランドが同じ市場を見ながら、まったく異なる価値の積み上げ方をしている点である。

Vikingは、現在進行形の生産力とファミリー経営の継続性で際立つ。トップ3の中では、ブランド、工場、経営、サービス網が最も一体化して見える存在だ。顧客にとっては、単に船を買うというより、Vikingというエコシステムに入る感覚に近い。

Hatterasは、歴史的な重みでは非常に強い。大型FRPヨットの先駆者としての存在感は今なお大きく、ブランド名そのものに伝統が宿っている。一方で、近年は所有者の変遷と再建プロセスを経ており、現在はWhite River Marine Groupのもとで新しい章に入ったブランドといえる。

Bertramは、3ブランドの中で最も神話性が強い。Moppie、Deep-V、Bertram 31という物語は、ブランドの核として非常に強力である。ただし、企業体としては再構築の歴史を持ち、現在はGavio/Baglietto Groupのもとで、クラシックなブランド価値を現代の市場へどう再接続するかが問われている。

結論――船ではなく、ブランドの時間軸を見る

米国オフショア・ビッグゲームフィッシャーのトップ3を比較するなら、Vikingは「継続する王道」、Hatterasは「先駆者の再出発」、Bertramは「Deep-Vの伝説を背負う再生ブランド」と整理できる。

Vikingは、ファミリー経営と垂直統合によって、現在の米国スポーツフィッシャーマン市場で最も安定した存在感を示す。Hatterasは、大型FRPヨットの歴史を切り拓いた名門であり、今は大手グループ傘下で再び存在感を高めようとしている。Bertramは、外洋走破性の象徴としてのブランドストーリーを持ち、再構築された現在もその神話性を武器にしている。

この3ブランドを選ぶということは、単に船のサイズや仕様を選ぶことではない。どの歴史に乗るか、どのブランドの継続性を信じるか、そしてどの物語を自分の船に重ねるかという選択でもある。

作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

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