GRヤリスで富士スピードウェイ初走行|アウェーのコースを始めて走る時の注意点

ピットからスタンドを眺める。
長いピットレーン

本記事は、すでにホームサーキットでスポーツ走行を経験し、別のサーキットへ初めて遠征する人に向けた記事です。

サーキット走行を始めるための準備、装備、走行会の選び方などは、別記事「シニア向け、初心者のサーキット走行の始め方|走る前に知っておく注意点」にまとめています。これから初めてサーキットを走る方は、まずそちらをご覧ください。

ホームサーキットをある程度走り込むと、ブレーキングポイント、ターンインの位置、使用するギア、アクセルを踏み始めるタイミングなどに、自分なりの工夫が生まれます。

その工夫がタイム短縮につながると、一連の操作が自分の得意な走り方として定着していきます。

ところが、初めて走るアウェーのサーキットでは、コースレイアウト、舗装、路面のグリップ、勾配、カント、速度域、周囲の風景が異なるので、ホームで機能したオリジナルな工夫もが成立しない事もあります。

今回、GRヤリスで富士スピードウェイを初走行して、初見コースの攻略には、ホームコースで培ったドライビングの基本とオリジナル工夫の融合を、一旦切り分けて再構築する必要があると実感しました。

本記事では、その作業を最初の3周へどのように割り当てたのかを整理します。

  • 1周目は、基本原理に沿ってクルマとコースを観察します
  • 2周目は、アウェー用の暫定基準を作ります
  • 3周目以降は、ホームで成功したオリジナルな工夫を一項目ずつ検証します

    ホームで成功した操作をいったん仮説に戻し、このコースでも成立するかを確かめるための3周です。

今回の富士スピードウェイ遠征の経緯

今回の走行会は日は2月に予定されていた富士スピードウェイへの遠征走行会が大雪のため中止となったリベンジです。その経緯は別記事あの日いけなかった富士スピードウェイ ――1977年の積み残しを回収するためにに詳述しています。

今回の貸し切り走行会で、参加者は普段ホームサーキットで一緒に走っている仲間が中心でした。参加車両にはかなりの性能差がありましたが、互いに譲り合い、目立ったトラブルもなく、多くの参加者が国際格式のサーキットを愉しむことができました。

私にとっては、これが富士スピードウェイ初走行です。

コース図の知識を、運転席から使える基準へ変える

初走行に備えて、事前にコースレイアウトは覚えていました。

どの順番で右コーナーと左コーナーが現れるのか。長いストレートの後にどのようなコーナーが続くのか。コース図を見ながら、おおよその構成を頭に入れていました。

コース図から学べるのは、コーナーの形、順序、全体のつながり、そしてだいたいの走行ラインです。

実走では、そこへ運転席から見える景色と操作のタイミングを加えます。

低い運転席から前方を見ながら、かなりの速度で次のコーナーへ近づきます。その間に、減速開始位置、旋回開始位置、使用ギア、コーナー出口へ視線を移す時期、次のコーナーへ向けた車両位置を判断します。

上空から見た形を、走行中に使える目印と操作へ置き換えるわけです。

この変換作業によって、コース図の知識が、実際のドライビングに使える情報になります。

富士スピードウェイのコースレイアウトと勾配

富士で必要になった「位置」と「速度」の基準

富士を走り始めて、最初に必要になったのは「位置の基準」と「速度の基準」でした。

コース幅の広さは、自分がコース上のどこにいるのかという位置判断に影響します。

長いホームストレートは、速度感覚と減速判断に影響します。

この二つの基準を作ることで、その後の走行ラインと操作を組み立てられるようになります。

広いコースの中で位置の基準を作る

富士スピードウェイへコースインして最初に感じたのは、とにかくコース幅が広いということでした。

幅の狭いコースでは、左右のコース端や縁石が、自分の位置を自然に示してくれます。選べるラインも限られるため、次に向かう方向を決めやすくなります。

富士では選択できる幅が大きく、ターンインする位置やクリッピングポイントを自分で明確に意識する必要があります。

自分はコースの右寄りにいるのか。中央にいるのか。コーナー進入へ向けて十分に外側へ寄れているのか。出口へ向かう余白を残せているのか。

位置の基準が曖昧なまま走ると、コース中央付近を何となく通過しやすくなります。すると、旋回開始位置もコーナー出口への向きも安定しません。

そこで、縁石、看板、路面の継ぎ目、コース脇の構造物などを手掛かりに、自分の現在位置と操作のタイミングを結びつけます。

前を走るクルマのラインも参考情報になります。車両性能、タイヤ、ドライバーの技量や目的によって適したラインは変わるため、自分のGRヤリスと自分のペースに合う位置を確かめながら走ります。

やや高いところから富士スピードウェイを俯瞰した様子
隣接するホテルから眺めた本コース。パナソニックコーナーのあたり

長いホームストレートの後で速度の基準を作る

富士スピードウェイのもう一つの難しさが、長いホームストレートです。

こんなに長い時間アクセルを踏みっぱなしで、エンジンは大丈夫なのだろうか。

初走行では、そんなことを考えてしまうほど長く感じました。

その長い加速区間の直後に、強い減速を必要とするTGRコーナーが現れます。

高速状態が続くと、目と身体がその速度に順応します。その結果、自分が出している速度を実際より低く感じやすくなります。

その感覚のままTGRコーナーへ近づくと、減速開始が後ろへずれます。ブレーキを踏んだ後も想像以上に速度が残り、旋回前に車両姿勢を整える時間が短くなります。

初走行では、十分に余裕のある位置から減速を始めます。直進状態で必要な車速まで落とし、クルマの姿勢を整えてから旋回へ移ります。

そのうえで、周回を重ねながら減速位置を少しずつ調整します。

富士には、ランオフエリアに余裕のある場所も多くあります。コース外には、スピン、グラベルや段差による車両損傷、コースへ復帰する際の接触などの危険が残ります。

走行上の余裕は、ランオフの広さよりも、減速開始位置と車両姿勢の安定によって作ります。

大富豪のオーナードライバーなら話は変わりますが、私のような一般の趣味人にとって、走行会の成功はクルマを無事に自宅へ持ち帰るところまで含みます。

私にとって良いドライバーとは、速さに加えて、マシンをいたわりながら走れる人です。

【画像4挿入位置:ホームストレート、TGRコーナーへの進入、または車載映像の静止画】

画像キャプション例:長いホームストレートの先にあるTGRコーナー。高速状態に身体が順応したところから、強い減速と姿勢作りへ移ります。

走行前に、ホームでの成功体験を二つに分ける

アウェーのサーキットを走るときは、ホームで身につけた走り方を二つに分けて考えます。

一つは、ドライビングの基本原理です。

もう一つは、ホームサーキットに合わせて作ったオリジナルな工夫です。

基本原理には、次のようなものがあります。

  • 視線を進行方向の先へ送る
  • 操作を滑らかにつなぐ
  • タイヤのグリップを縦方向と横方向へ適切に配分する
  • 荷重移動を急変させない
  • 車両姿勢を整えてから次の操作へ移る
  • クルマから返ってくる反応を感じ取る
  • 周囲の車両との速度差を把握する

一方、オリジナルな工夫には、具体的なブレーキングポイント、ターンイン位置、使用ギア、左足ブレーキ、縁石の使い方、アクセルを踏み始める位置、ステアリングを戻すタイミングなどがあります。

ホームサーキットを走り込むと、基本原理とオリジナル工夫は一つの成功体験としてまとまります。

基本原理に沿った操作と、そのコース固有の路面や形状に合わせた工夫が、同時にタイム短縮へつながるためです。

その結果、自分の走り方の中で、どこまでが普遍的な技術で、どこからがホーム専用の工夫なのかが見えにくくなります。

そこで、アウェーでは次のように扱います。

基本原理は走りの土台として使います。
ホームで有効だったオリジナルな工夫は、検証すべき仮説として扱います。

この整理は、ピットアウトする前に頭の中で行います。

実際の走行では、最初の3周を使って、その仮説を現地の条件へ合わせていきます。

最初の3周で、観察・現地基準・検証を進める

サーキット走行では、コースイン後の最初の数周を段階的に使うのが基本です。

一般には、

1周目は温める
2周目は確認する
3周目から攻める

と表現されます。

今回の富士走行では、この3段階を、観察、現地基準の作成、仮説の検証として使いました。

気温、路面状態、タイヤ、ブレーキ、混雑、自分の理解度によって、各段階を4周目、5周目まで延長することもあります。周回数は目安であり、観察から検証へ進む順序が走行の骨格になります。

1周目は、基本原理を使って観察する

1周目は、基本原理を使ってクルマとコースを観察します。

タイヤやブレーキへ徐々に負荷を加えながら、タイヤの感触、ブレーキペダルの踏み応え、異音、振動、警告表示を確認します。

路面の濡れや汚れ、旗や信号の位置、ピット入口、周囲の車両との速度差も見ます。

同時に、コース図で覚えたレイアウトを、運転席から見える景色へ結びつけます。

富士では、コース幅の中で自分がどの位置にいるのかを把握し、次のコーナーがどの角度から近づいてくるのかを観察しました。

この周回で前面に置くのは、視線、滑らかな操作、荷重移動、車両姿勢といった基本原理です。

ホームで覚えた具体的なブレーキ位置やアクセル操作は、後の検証項目として頭の中に置いておきます。

2周目は、富士用の暫定基準を作る

2周目では少しペースを上げ、富士で使う操作の基準を仮決めします。

ブレーキを始める目印はどこにするのか。どの位置からステアリングを切り始めるのか。どのギアを使うのか。コーナー出口はどの時点で見えるのか。

富士では、縁石、看板、路面の継ぎ目を手掛かりに、位置と減速の基準を作りました。

ここで、基本原理とオリジナルな工夫の境界が具体的に見えてきます。

視線を出口へ送ることや、荷重移動を滑らかにつなぐことは、富士でも走りの土台になります。

一方、ホームで使っていたブレーキ開始位置、ターンインのタイミング、アクセルを踏み始める位置は、富士のコース幅、速度域、路面の感触に合わせて設定します。

2周目で作るのは、富士用の暫定解です。

余裕のある位置から減速し、同じ操作を安全に繰り返せる走行ラインを作ります。これによって、次の周回で何を変更し、何を確かめるのかが明確になります。

3周目以降は、オリジナルな工夫を一項目ずつ検証する

3周目以降は、2周目までに作った暫定基準を土台にして、ホームで成功したオリジナルな工夫を一項目ずつ試します。

ホームで成功した操作をいったん仮説に戻し、このコースでも成立するかを確かめます。

富士のTGRコーナーでは、十分手前からの減速を暫定基準とします。

そこから、ブレーキを始める位置を少し調整し、車速と車両姿勢の変化を確かめます。次の周回では走行ラインを見直し、その後に旋回から加速へ移るタイミングを試します。

一度に変更する項目は一つに絞ります。

ブレーキ位置、進入速度、ターンイン位置、アクセル操作を同じ周回でまとめて変更すると、走りが変化した理由を切り分けにくくなります。

一項目ずつ試せば、成功も失敗も再現可能な知識として残ります。

この段階で、ホームの工夫が富士でも成立するのか、富士用の新しい操作へ更新するのかが見えてきます。

コーナー出口で、ホームの工夫を検証する

サーキットごとに、舗装の性質、路面の荒れ、勾配、カント、路面温度、ラバーの乗り方が異なります。天候や気温によっても、タイヤが発揮するグリップは変化します。

こうした違いが表れやすい場所の一つが、コーナー出口です。

コーナー出口では、タイヤは旋回のために横方向のグリップを使いながら、加速のための縦方向のグリップも受け持ちます。

ホームサーキットでは有効だったアクセルを踏み始める位置、アクセルを開ける速さ、ステアリングを戻すタイミングも、アウェーでは成立条件が変わります。

ホームと同じ感覚でアクセルを入れたとき、前輪が予想より早く外へ逃れることがあります。駆動輪が空転することもあります。電子制御が介入することもあります。

こうした反応は、そのサーキットに合わせて操作を組み直すための情報になります。

前輪が外へ逃れる場合は、アクセルを踏み始める位置、ステアリングを戻す速さ、コーナー出口へ向けた車両の角度を見直します。

駆動輪が空転する場合は、アクセルの開け方、使用ギア、旋回から加速へ移るタイミングを調整します。

電子制御が介入した場合は、タイヤへ同時に与えている縦方向と横方向の負担を振り返ります。

ホームで成功した操作を試し、クルマと路面から返ってくる反応を読み取ります。狙った反応が得られれば、その操作を採用します。反応が違えば、現地の条件に合う形へ更新します。

「このサーキットでは、こうなのね」

と納得し、目の前のコースへ順応します。

ホームで積み上げた経験を自信として持ちながら、その中に含まれるコース固有の工夫を柔軟に更新する。

この姿勢が、遠征トラックデーを安全に愉しむ秘訣であり、ドライビングの引き出しを増やすコツなのだと思います。

アウェーを走るほど、ドライビングの引き出しが増える

走るサーキットが増えると、同じクルマを異なる条件に合わせて動かす方法も増えていきます。

幅の狭いコースと広いコース。低速コーナー中心のコースと、高速区間の長いコース。グリップの高い舗装と、滑りやすい舗装。平坦な路面と、勾配やカントのある路面。

条件が変わるたびに、基本原理を土台として使い、ホームで育てたオリジナルな工夫の成立条件を確かめます。

その過程で、何が普遍的な技術で、何が特定のコースに最適化された工夫なのかが見えるようになります。

ホームでタイムを縮めることは、自分の走りを深く掘り下げる作業です。

アウェーを走ることは、その走りを分解し、別の条件で組み直す作業です。

この二つを繰り返すことで、単に操作の種類が増えるだけでなく、状況に応じて操作を選び直す力も育っていきます。

富士スピードウェイは、その分解と再構成の大切さをはっきり教えてくれました。

ホームで積み上げた成功体験を持って富士へ行き、それを基本原理とオリジナルな工夫に分け、富士に合う走り方へ組み直す。

その過程そのものが、とても良い勉強になりました。

あー、楽しかった!


関連記事

シニア向け、初心者のサーキット走行の始め方|走る前に知っておく注意点

初めてサーキットを走る人に向けて、準備、装備、走行会の選び方、走行前に知っておきたい注意点をまとめています。

あの日いけなかった富士スピードウェイ――1977年の積み残しを回収するために

2月の大雪によって遠征走行会が中止となった経緯と、私にとって富士スピードウェイがどのような場所だったのかをまとめています。

Radicalに試乗して分かったレーシングカーと市販スポーツカーの決定的な違い

今回の走行会で体験したRadicalについて、独立した記事にまとめています。

➡ サーキット走行でのタイム変化の記録【閲覧用】

ホームサーキットでのタイム短縮の経過を記録しています。


他の記事への移動は下記をクリック

作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です