プレジャーボートの燃費と巡航速度 ☆ 燃費の良い速度の見つけ方と使い分け

私は巡航中、燃費の良い速度を探すためにエンジン回転数を見ません。

見るのは、

  • 対地速度(SOG:Speed Over Ground)
  • 燃料流量(L/h)

の2つです。

計算も単純です。

対地速度 ÷ 燃料流量

これで、その時点でのNM/Lが分かります。

私が知りたいのは「何rpmで走っているか」ではありません。

今この海で、この燃料消費量によって実際にどれだけ対地移動できているか。

それを見ながら巡航速度を決めています。

なぜ対地速度を見るのか

私が使う速度は、GPSが表示する対地速度です。

潮流や風、波などの影響を受けた結果として、艇が地球上を実際にどれだけの速度で移動しているかがSOGとして表示されます。

したがって私は、SOGをさらに潮流で補正しません。

追潮ならSOGは上がりますし、向潮なら下がります。

それも含めて、その時の航海で実際に起きていることだからです。

ここで求めているのは、船体やエンジン単体の実験的な効率ではありません。

その時の条件で、使った燃料が実際の対地移動にどれだけつながっているか。

私はそれを見ています。

私の艇には燃費の良い速度域が2つある

私の艇はJeanneau Merry Fisher 895 Sportです。

愛艇については別記事愛艇紹介 Jeanneau社製 Merry Fisher 895 Sportに詳述しています。

航海中にSOGと燃料流量を見続けているうちに、自艇には燃費の良い速度域が二つあることに気付きました。

一つは低速域です。

ごく低速では、私が見ている燃費指標が約1.0NM/Lになることがあります。

もう一つは23kt前後です。

このあたりでは約0.67NM/Lになることが多くあります。

一方、その間にある12~20kt付近では、約0.5~0.6NM/Lまで悪化します。

なお、私の艇は250hpの船外機を2基搭載した双発艇ですが、ここで示している燃費は、私が航海中に確認している片側1基の燃料流量を基準にした値です。

艇全体の燃料消費量から求めた燃費ではありません。

この記事では、艇そのものの性能試験をしているのではなく、私が実際の航海中に何を見ているのかを、そのまま記しています。

おそらくハンプの影響

12~20kt付近では、スロットルを開けてエンジンが仕事をしている割に、速度が思ったほど伸びません。

操船していても、

「エンジンは唸っているのに、あまり進まない」

という感覚があります。

おそらく、この速度域では艇がプレーニングへ移行する途中、いわゆるハンプ付近にいるのでしょう。

ところが23kt前後まで速度を上げると、艇は明確にプレーニング状態に入り、SOG÷燃料流量の値が再び良くなります。

私の艇にはSeakeeper Rideが装着されています。

そのため、ハンプ付近でも船首が大きく持ち上がるような姿勢変化はあまり目立ちません。

しかし燃費を見ると、この速度域で艇の走り方が変わっていることはよく分かります。

急がない時は低速で走る

私は急がない時には、低速で巡航することが多くあります。

この速度域では燃費が良く、艇の動きも比較的穏やかです。

波を強く叩くことも少なく、海面の動きに艇がある程度合わせながら進んでいきます。

もちろん目的地までの時間はかかります。

しかし、プレジャーボートなのですから、海の上をゆっくり移動する時間そのものを楽しんでもよい。

時間に余裕がある時には、私はこの速度域を好みます。

急ぐ時は23kt前後で走る

一方、目的地へ早く到着したい時には、23kt前後で巡航します。

この速度域では明確にプレーニングしています。

私の艇では燃費も比較的良く、低速航行に比べて到着時間を大きく短縮できます。

そして私にとって、もう一つ重要なのが操船する人間側の余裕です。

23kt前後なら、

  • 海面の状態を見る
  • 浮遊物を探す
  • 他船の動きを読む
  • 航路を確認する
  • 必要な操作を行う

といったことを、十分な余裕を持って行えます。

海況が良く、自分自身も十分に元気な時には、この速度域をよく使います。

30ktを超える速度域はあまり使わない

30ktを超えると、周囲の景色の流れ方が大きく変わります。

私には、通常の映像から早回しの映像へ切り替わったように感じられます。

速度が上がれば、同じ距離を通過するまでの時間は短くなります。

そのぶん、海面の変化を見つけ、他船の動きを読み、状況を判断し、操作するまでに使える時間も短くなります。

また、このくらいの大きさの艇では、ちょっとした波でも強く叩くことがあります。

艇そのものは30ktを超えて走ることができます。

しかし私の場合、

  • 海況が良い
  • 自分自身の体調が良い
  • 本当に急ぐ理由がある

といった条件が揃わない限り、この速度域を巡航にはほとんど使いません。

燃費も低下します。

私にとって23kt前後は、速度、燃費、艇の動き、そして自分自身の認知・操作能力のバランスが取りやすい速度なのです。

時々フルスロットルまで回す

巡航速度を決めるためにはRPMをほとんど見ません。

ただし、艇やエンジンの状態を確認する時には別です。

エンジンが十分に暖まり、

  • 海況が良い
  • 周囲に他船や障害物がない
  • 十分な水域がある

という条件が揃った時には、短時間だけフルスロットルまで開けることがあります。

目的は高速で移動することではありません。

  • 普段どおり最高回転数まで回るか
  • 左右のエンジンに不自然な差がないか
  • 最高速度に大きな変化がないか

などを確認するためです。

以前より回転数や最高速度が明らかに落ちていれば、船底の汚れ、プロペラ、積載状態、エンジンなど、何か条件が変わっている可能性があります。

東京湾では長時間全開で走れる場所も限られます。

私の場合、全開にしても長くて1分程度です。

巡航速度は一つに決める必要がない

私が巡航速度を決める時に考えているのは、主に次の3つです。

  • 揺れや叩きをどこまで受容するか
  • 燃費
  • 移動時間

そして、

  • 急がないなら低速
  • 急ぐなら23kt前後

という使い分けをしています。

その中間となる12~20kt付近は、私の艇では速度の割に燃料を多く使うため、積極的に選ぶことはあまりありません。

もちろん、いつも同じ数字になるわけではありません。

燃料残量、積載量、気温、海水温、波、風、潮流、船底の状態などによって、SOGも燃料流量も変わります。

だから私は、

「この艇の経済巡航は何rpm」

と固定して考えません。

航海中にSOGと燃料流量を見て、

SOG ÷ 燃料流量

を暗算しながら、その時の条件でより良い数字になるようにスロットルを調整します。

プレジャーボートの燃費の良い速度は、一つの数字として決まっているわけではありません。

少なくとも私の艇では、低速側とプレーニング後の23kt前後という、性格の異なる二つの使いやすい速度域があります。

どちらを選ぶかは、その時に何を優先するかで決まります。

それが、実際にこの艇を使い続けてきて私がたどり着いた巡航速度の決め方です。

作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

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