GRヤリスのコーナー脱出でアンダーステアを出さない|舵角とアクセル開度の関係

前の記事では、ストレートエンドからクリッピングポイントまでのコーナー前半を扱いました。(前の記事➡GRヤリスのコーナー後半で出るアンダーステア|原因の一つはストレートエンドの減速不足)

必要な減速を直線区間で終え、ターンインではブレーキ踏力を徐々に抜きながら舵角を増やし、四輪を旋回へ参加させてクリッピングポイントを目指すという内容です。

本記事では、その続きとなるクリッピングポイント付近からコーナー出口、つまり次のストレートが始まるまでを扱います。

本記事の内容は、私が2020年型GRヤリスRZ High Performance 6MTと、2024年型GRヤリスRZ High Performance 8ATでサーキット走行した経験、およびプロドライバーから受けた教示をもとに整理したものです。

結論を先に示すと、コーナー後半では、舵角を徐々に戻しながら、アンダーステアが出ない範囲でアクセル開度を増やします。

GRヤリスでは前輪にも駆動力が配分されます。大きな舵角を残したままアクセルを開けすぎると、前輪は旋回と駆動の両方に摩擦力を使ううえ、加速によって前輪荷重も減少します。その結果、前輪が走行ラインを保てなくなり、アンダーステアが現れます。

クリッピングポイントは最低速度・最大舵角の地点

本記事では下の図のような、長い進入ストレートと長い脱出ストレートを、道路中心線の曲率が一定の中高速180度コーナーでつないだ、U字型のレイアウトを想定します。

コーナー自体は一定半径ですが、アウト・イン・アウトを取る走行ラインの曲率は一定ではありません。(アウト・イン・アウトになり理由については別記事アウト・イン・アウトは結果である|トレイルブレーキと舵角で考えるコーナリングの基本に詳述)

このコーナーでは、ストレートエンドで強く短いブレーキングを行い、ターンイン開始後はブレーキ踏力を徐々に抜きながら舵角を増やします。

強いブレーキング中は、タイヤが発揮できる摩擦力の多くを減速に使っています。そこでブレーキ踏力を緩め、制動に使っていた摩擦力の一部を旋回へ振り分けます。その余裕に合わせて舵角を増やし、クリッピングポイントへ向かいます。

この一連の操作がトレイルブレーキです。

本記事で想定するコーナーでは、クリッピングポイント付近で減速が終わるため、ここがコーナリング中の最低速度になります。同時に、舵角は最大付近に達します。

つまり、クリッピングポイント付近では、

  • 車速が最も低い
  • 舵角が最も大きい
  • ブレーキ踏力がほぼゼロになる
  • タイヤの摩擦力の多くが旋回に使われている

という状態になります。

ここが、減速と旋回を中心としたコーナー前半から、旋回と加速を中心としたコーナー後半への切り替え地点です。

ブレーキからアクセルへ素早く踏み替える

クリッピングポイント付近では、右足をブレーキからアクセルへ素早く踏み替えます。

ただし、アクセルへ素早く移ることと、アクセルを深く踏むことは別です。

ブレーキもアクセルも踏んでいない惰性の時間を必要以上に作らず、小さなアクセル開度へ移ります。

この地点では舵角が最大付近にあります。タイヤはクルマを走行ライン上に保つため、摩擦力の多くを横方向へ使っています。そのため、加速のために使える縦方向の摩擦力には、まだ大きな余裕がありません。

したがって、アクセルへ踏み替えた直後の開度は小さくなります。

そこから舵角を徐々に戻し、前輪へ要求する旋回の仕事を減らします。その分だけ駆動へ使える摩擦力の余裕が増えるため、アクセル開度も増やせるようになります。

コーナー後半では、

舵角を戻しながら、アンダーステアが出ない範囲でアクセルを踏み増す

という操作が基本になります。

前輪だけでクルマは旋回しない

ステアリングを操作するのは前輪なので、前輪だけがクルマを曲げているように見えます。

しかし、クルマの旋回は前輪だけでは成立しません。

ごく低速では、前輪は舵角を与えられた方向へ転がり、後輪は車体の前後方向へ転がります。前後輪がともに横滑りせず転がれる条件を同時に満たすように車体が回転するため、クルマは円弧状の軌跡を描きます。

速度が上がると、前輪と後輪の両方が路面を横方向につかみ、車体を走行ライン上に保ちます。後輪は、単に前輪の後ろを受動的についてくるだけではありません。後輪も旋回を成立させる重要な役割を担っています。

旋回中の車内では、クルマや乗員がコーナー外側へ押し出されるように感じます。本記事では、この車内から感じる外向きの作用を、一般的な表現に合わせて「遠心力」と呼びます。

地上から見れば、クルマは慣性によって旋回曲線の接線方向へ進もうとし、前後のタイヤが路面との摩擦によってコーナー内側への力を発生させることで、進行方向を変えています。

タイヤは縦方向と横方向に摩擦力を使う

タイヤと路面の摩擦力は、大きく二つの方向に使われます。

縦方向は、加速と減速のために使う摩擦力です。

横方向は、遠心力によってクルマがコーナー外側へ流れないように、走行ラインを保つために使う摩擦力です。

現実の走行では、路面の勾配や凹凸、横風などにも対応していますが、本記事では、コーナリングに大きく影響する加減速と旋回に絞って考えます。

一本のタイヤが縦方向と横方向へ発揮できる摩擦力には上限があります。

縦方向へ多く使えば、横方向へ使える余裕は小さくなります。反対に、横方向へ多く使っているときは、加速や減速へ使える余裕が小さくなります。

この関係を分かりやすく表したものが摩擦円です。

摩擦円は、四輪の力をすべて合計した一つの円ではありません。四本のタイヤに、それぞれ摩擦力の限界があります。

また、その限界は一定ではありません。タイヤにかかる荷重、路面状態、温度、空気圧、摩耗などによって変化します。

一般には、タイヤにかかる荷重が増えれば、発揮できる摩擦力の絶対量も増えます。ただし、荷重が2倍になっても、使える摩擦力が正確に2倍になるわけではありません。荷重が一輪へ偏りすぎると、四輪全体で使える力はかえって減りやすくなります。

FR車では後輪が駆動と旋回を分担する

FR車の後輪は、コーナー後半で二つの仕事を担います。

一つは、車体後部を走行ライン上に保つことです。

もう一つは、エンジンの駆動力を路面へ伝えることです。

アクセルを踏み増すと、後輪が縦方向の駆動に使う摩擦力が増えます。その分だけ、車体後部を走行ライン上に保つために横方向へ使える摩擦力の余裕は小さくなります。

その限界を超えると、後輪がコーナー外側へ滑り始めます。

テールが外側へ動き、ノーズがコーナー内側へ向くため、車両はパワーオーバーステアへ移ります。後輪の滑りと車体の回転をアクセルとカウンターステアで維持すれば、いわゆるドリフト走行になります。

ただし、FR車でもアクセルを踏み始めた直後は、加速によって前輪荷重が減るため、アンダーステアが強まることがあります。

そこからさらにアクセルを踏み、後輪が先に限界へ達すると、アンダーステアからパワーオーバーステアへ移ります。

GRヤリスでは前輪にも駆動力が加わる

GRヤリスは四輪駆動車です。

アクセルを踏むと、後輪だけでなく前輪にも駆動力が配分されます。

コーナー後半の前輪は、車体前部を走行ライン上に保ちながら、同時に駆動力も路面へ伝えます。

クリッピングポイント付近では舵角が大きく、前輪は横方向に多くの摩擦力を使っています。

その状態でアクセルを大きく開けると、前輪には縦方向の駆動力も強く要求されます。

さらに、加速によって荷重が後方へ移るため、前輪荷重は減少します。

つまり前輪には、

  • 旋回と駆動の両方を強く要求される
  • 使える摩擦力の上限は小さくなる方向へ変化する

という二つのことが同時に起こります。

前輪が縦方向と横方向に使う摩擦力の合計が限界を超えると、車体前部を狙った走行ライン上に保てなくなります。

ステアリングを切っているにもかかわらず、前輪がコーナー外側へ滑り、走行ラインが膨らみます。

これが、私が2020年型6MTと2024年型8ATのGRヤリスRZ High Performanceで経験した、コーナー後半のアンダーステアです。

GR-FOURの駆動力配分やLSD、電子制御があっても、各タイヤの摩擦限界そのものがなくなるわけではありません。

どのタイヤが先に限界へ達するかは、駆動力配分、車速、舵角、アクセル開度、荷重、路面状態などによって変わります。本記事で扱うのは、私の実走条件では前輪が先に余裕を失い、アンダーステアとして現れたという知見です。

舵角を戻した分だけアクセルを増やす

クリッピングポイント以降では、舵角を徐々に戻します。

舵角を戻せば、前輪に要求する旋回の仕事が減り、横方向へ使っていた摩擦力の一部を、縦方向の駆動力へ振り分けられるようになります。

その余裕に合わせて、アクセル開度を増やします。

実際の走行では、その瞬間の舵角、車速、荷重、路面状態で、アンダーステアを出さずに使える最大限のアクセル開度を連続的に探ります。

アクセル開度が小さすぎれば、加速開始が遅れます。

反対に、アクセル開度が大きすぎれば、前輪が横方向と縦方向に使う摩擦力の合計が限界を超え、アンダーステアが出ます。

したがって、コーナー後半では、単にアクセルを早く踏むことが重要なのではありません。

前輪が走行ラインを保てる範囲で、どこまでアクセル開度を増やせるかが重要です。

出てしまったアンダーステアへの対処

コーナー後半でアンダーステアが出た場合、その場でできる根本的な対処は二つです。

一つは、速度を落とすことです。

もう一つは、舵角を減らすことです。

速度を落とせば、クルマを走行ライン上に保つために必要な横方向の力が小さくなります。

舵角を少し戻せば、過大になった前輪のスリップ角を減らし、前輪が有効な横力を発生できる状態へ戻しやすくなります。

したがって、アンダーステアが出たら、まずアクセルをそれ以上踏み増すのをやめます。

必要な分だけアクセルを戻しながら、ステアリングも少し戻します。

それでも速度が高ければ、車両姿勢を乱さない範囲で穏やかにブレーキを使います。

クルマが外側へ膨らんでいるからといって、ステアリングをさらに切り足しても、すでに前輪が限界を超えていれば旋回力は増えません。むしろ前輪の滑りが大きくなります。

左足ブレーキが有効になる場合

低回転域のトルクが薄いクルマや、アクセルを戻した後の再加速に時間がかかるクルマでは、アクセルを大きく戻すことが不利になる場合があります。

エンジン回転や過給状態が落ち、再び駆動力が立ち上がるまでに時間がかかるためです。

そのような車両では、アクセルをある程度維持したまま、左足で軽くブレーキを使い、車速を調整する方法が有効な場合があります。

ただし、これは大きく出てしまったアンダーステアを強引に修正するための基本操作ではありません。

ブレーキが強すぎれば、前輪へ旋回と制動を同時に要求し、かえって前輪の摩擦力の余裕を減らします。アクセルとブレーキの同時操作に対する電子制御の反応も、車種によって異なります。

左足ブレーキは、アンダーステアが大きくなる前の小さな速度調整や姿勢調整に使う、発展的な操作と考えるべきです。

2020年型GRヤリス6MTと2024年型GRヤリス8ATでも、変速、アクセル応答、エンジン回転、電子制御の反応は同一ではありません。それぞれの車両で反応を確認する必要があります。

まとめ

本記事で想定するコーナーでは、クリッピングポイント付近が最低速度・最大舵角の地点になります。

ここで右足をブレーキからアクセルへ素早く踏み替えますが、舵角が大きいため、最初のアクセル開度は小さくします。

そこからステアリングを徐々に戻し、前輪へ要求する旋回の仕事を減らします。その分だけ駆動へ使える摩擦力の余裕が増えるため、アクセル開度も増やせるようになります。

GRヤリスでは、前輪も旋回と駆動の両方を担います。さらに、加速によって前輪荷重は減少します。

そのため、大きな舵角を残したままアクセルを開けすぎると、前輪が縦方向と横方向に使う摩擦力の合計が限界を超え、アンダーステアが発生します。

コーナー後半の基本は、次の一文に集約できます。

舵角を徐々に戻しながら、その瞬間にアンダーステアを出さずに使える最大限のアクセル開度まで踏み増す。

出てしまったアンダーステアには、速度を落とし、舵角を少し戻して対応します。

最も速いのは、修正操作を必要としない走りです。

クリッピングポイントで最大舵角から小さなアクセル開度へ移り、舵角を戻すのに合わせて、タイヤの摩擦力を旋回から加速へ滑らかに移していく。

これが、GRヤリスでコーナー後半を組み立てる基本です。

作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

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