マジか!? ムーンショット型研究開発制度|2050年を描く10の目標

マジか?Moon Shot &Singylarity
マジか?Moon Shot &Singylarity

日本政府が本気で掲げている「ムーンショット目標」

最初に内閣府のムーンショット型研究開発制度を知ったとき、『理屈コネ太郎』は少々驚きました。

人が身体や空間の制約から解放される。

AIとロボットが人間と共生する。

病気を発症する前に予測して防ぐ。

台風や豪雨を制御する。

フュージョンエネルギーを社会実装する。

なんだかSF小説か、シンギュラリティ以後の未来社会の話を読んでいるようです。

しかし、これは民間の未来予測でもSF作家の構想でもありません。

日本政府が研究開発目標として正式に掲げているものです。

2026年8月現在、内閣府のムーンショット型研究開発制度には10の目標が設定されており、社会・環境・経済という三つの領域から、将来の社会課題を解決し、「人々の幸福(Human Well-being)」を実現することを目指しています。

詳細は内閣府ムーンショット型研究開発制度のWeb


そもそも「ムーンショット」とは何なのか

ここでいうムーンショットとは、

現在の技術の延長だけでは簡単に実現できない、大胆で困難な目標を設定し、そこへ向けて研究開発を進める

という考え方です。

「今できることを少しずつ改善する」というより、

2050年には、こんな社会を実現したい。そのためには何が必要なのか

という未来側から研究開発の方向を決める発想です。

現在設定されている目標は10個あります。


ムーンショット目標1|身体・脳・空間・時間の制約から解放される

2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現

目標1では、サイバネティック・アバターなどを利用し、人間の身体能力や認知能力、活動できる場所などの制約を越えることを目指しています。

2030年には、複数の人が10体以上のアバターやロボットを遠隔操作し、複数のタスクを実行できる技術の社会実装を目標にしています。

いや、いきなり凄い。

1.2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現


ムーンショット目標2|病気になる前に予測・予防する

2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現

病気になってから治療するのではなく、臓器同士のネットワークなどを解析することで、発症する前の段階から予測し、健康な状態へ戻すことを目指しています。

医療の考え方そのものを、

治療から予測・予防へ

大きく動かそうという話です。

2.2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現


ムーンショット目標3|AIとロボットが人間と共生する

2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し、人と共生するロボットを実現

単に命令された作業を繰り返すロボットではありません。

人と同等以上の身体能力を持ち、人の人生に寄り添って成長するAIロボットや、人間が活動することの難しい環境で自律的に判断・行動するロボットなどが想定されています。

このあたりまで来ると、私が最初に「Singularity」という言葉を連想した理由も分かっていただけるでしょう。

ただし、ムーンショット型研究開発制度そのものが「シンギュラリティを起こすこと」を政策目標にしているわけではありません。

3.2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現


ムーンショット目標4|地球環境を回復させる資源循環

2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現

温室効果ガスや環境汚染物質について、単に排出量を減らすだけではなく、

  • 回収する
  • 資源として利用する
  • 無害化する

といった技術を社会へ実装し、地球温暖化と環境汚染の双方へ対応する構想です。

4.2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現


ムーンショット目標5|持続可能な食料供給を実現する

2050年までに、未利用の生物機能等をフル活用し、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出

食料需要が増えても、環境を破壊しながら生産量だけを増やすのではなく、生物機能や新しい生産技術を利用して、持続可能な食料供給を目指します。

5.2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出


ムーンショット目標6|誤り耐性型汎用量子コンピュータ

2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現

量子コンピュータについても、単なる実験装置ではなく、誤り訂正を備えた汎用的な計算機として利用できるところまで持っていこうという目標です。

6.2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現


ムーンショット目標7|100歳まで健康不安なく人生を楽しむ

2040年までに、主要な疾患を予防・克服し、100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現

この目標だけは2050年ではなく、2040年が大きな目標年になっています。

単純な寿命延長ではなく、

長生きしてしまった結果、長期間病気や介護に苦しむ

という問題へ正面から取り組もうとしている点が重要でしょう。

7.2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現


その後、目標は7個から10個へ増えた

この記事を最初に書いた時点では、ここまでの7目標を紹介していました。

しかし、その後ムーンショット目標は追加されました。

目標8と9が2021年9月28日に、目標10が2023年12月26日に決定され、現在は全部で10目標です。


ムーンショット目標8|台風や豪雨を「制御する」

2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し、極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現

これは個人的には、10目標の中でもかなり「マジか!?」感があります。

天気をより正確に予測する、ではありません。

台風や豪雨を制御するところまで研究目標に入っています。

自然災害を予測して逃げるだけでなく、その被害を能動的に小さくする方向へ技術を進めようというわけです。


ムーンショット目標9|「こころ」に技術から介入する

2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現

これも相当に面白い目標です。

2030年までに、文化・伝統・芸術などを含む「こころ」と結びつく要素の抽出や測定、心の変化が起きる仕組みの解明などを進め、将来的にはこころの安らぎや活力を増大する技術の確立を目指しています。

身体や物質だけでなく、人間の主観的な幸福まで科学技術政策の対象にしているところが興味深い。


ムーンショット目標10|フュージョンエネルギーを社会へ

2050年までに、フュージョンエネルギーの多面的な活用により、地球環境と調和し、資源制約から解き放たれた活力ある社会を実現

いわゆる核融合です。

2050年の社会実装を目指しつつ、2035年までには発電だけに限らない多様なエネルギー源としての活用や、核融合反応で生じる粒子などを利用した応用の実証を目標にしています。


これらは本当に2050年までに実現するのか?

さて。

ここまで読めば当然、

そんなこと、本当にできるの?

と思います。

私も思います。

しかし、ムーンショット型研究開発制度の面白さは、すべての目標が予定通り実現すると約束していることではありません。

そもそも「現在の技術なら確実に実現できる」という課題だけを扱う制度なら、ムーンショットと呼ぶ意味がありません。

重要なのは、

今の延長線上だけを見て研究するのではなく、遠い将来に実現したい社会を先に設定する

という考え方でしょう。

2025年には目標1、2、3、6、7について5年目評価を経た継続決定も行われ、2026年にも各目標の評価や研究開発体制の更新が続いています。制度は現在も進行中です。


Moon ShotとSingularityは同じではない。でも、未来像はかなり大胆だ

元々このページを「Moon Shot & Singularity」と題したのは、政府の掲げる未来像を初めて読んだとき、

「これ、シンギュラリティ後の世界みたいじゃないか」

と思ったからでした。

しかし、改めて整理すると、この二つは分けて考えた方がよいでしょう。

ムーンショット型研究開発制度は、AIだけを対象としたものではありません。

  • 人間能力の拡張
  • 疾病予防
  • AI・ロボット
  • 環境再生
  • 食料
  • 量子コンピュータ
  • 医療・介護
  • 気象制御
  • こころ
  • フュージョンエネルギー

と、対象は極めて広範囲です。

ただし、その一つ一つを眺めると、

現在の常識から見ればSFに思える技術を、数十年後の現実へ変えようとしている

という共通した発想があります。


まとめ|2050年の日本が本気で研究している未来

ムーンショット型研究開発制度には、2026年現在10の目標があります。

最初にこの記事を書いた頃の7目標から、さらに、

  • 台風・豪雨の制御
  • こころの安らぎや活力を増大する技術
  • フュージョンエネルギーの社会実装

が加わりました。

実現可能性については、それぞれの研究成果を見なければ分かりません。

しかし、

「2050年には、こういうことまで可能にしたい」

と日本政府が正式な研究開発目標として掲げていること自体が、なかなか面白い。

マジか!?

と思うような目標だからこそ、Moon Shotなのでしょう。

今後、それぞれの研究がどこまで現実へ近づいていくのか。

『理屈コネ太郎』としては、かなり楽しみにしています。

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作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

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