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はじめに
常時噛合とは何でしょうか。
ギヤチェンジとは歯車が入れ替わることだ、というイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。理屈コネ太郎もその一人でした。
しかしドライビングテクニックを向上させるためには、変速機の構造をある程度理解しておいた方が有利です。特にブリッピングやヒールアンドトウといった操作は、変速機の内部で何が起きているかを理解すると意味がよく分かります。
そこで本記事では、マニュアルトランスミッションの基本構造である 常時噛合(じょうじかみあい) という概念を整理します。
常時噛合とは、カウンターシャフトの歯車と出力軸と同心円上に配置されたギヤ数相当の歯車が常に噛み合っており、選択された歯車以外は出力軸に固定されず空転している構造を指す。
例えば6速MTであれば、カウンターシャフトと出力軸の間には前進用として6対の歯車が存在します。
以下では、この構造がどのように成り立っているのかを順に見ていきます。
マニュアルトランスミッションの三軸構造
多くの自動車用マニュアルトランスミッションは、次の三つの軸で構成されています。
入力軸
カウンターシャフト(副軸)
出力軸
入力軸はエンジンからの動力をトランスミッションに入力させる軸です。
出力軸はトランスミッションから出てきた動力をデファレンシャルへ伝える軸です。
エンジンの回転は入力軸に伝わり、入力軸にある歯車とカウンターシャフトの歯車の 一対の歯車 によってカウンターシャフトへ伝達されます。
つまり動力の流れは次のようになります。
↓
入力軸
↓
カウンターシャフト
↓
出力軸
↓
デフ
カウンターシャフトの歯車と出力軸の歯車
カウンターシャフトには前進用の動力伝達歯車が段数分固定されています。
たとえば
6速MTなら6枚
5速MTなら5枚
の歯車がカウンターシャフトに固定されています。
これらの歯車は、出力軸と同心円上に配置された 同数の相対する歯車 とそれぞれ噛み合っています。
出力軸側の歯車は固定されていない
ここが常時噛合の理解で最も重要なポイントです。
出力軸側の歯車は
出力軸と同心円上に配置されていますが、出力軸には固定されていません。
つまり、出力軸とは独立して回転することができます。
このため、カウンターシャフトの歯車と出力軸側の歯車は常に噛み合って回転していますが、出力軸には動力が伝わっていない状態が存在します。
ニュートラルでは何が起きているか
ニュートラルでは、出力軸側の歯車はどれも出力軸に固定されていません。
そのため
カウンターシャフトの歯車
出力軸側の歯車
は噛み合ったまま回転していますが、出力軸はそれらと接続されていません。
つまり
歯車は回っているが出力軸には動力が伝わっていない状態
になります。
ギヤチェンジとは何をしているのか
ギヤチェンジとは、
出力軸と同心円上に配置された歯車のうち一つを出力軸に固定する操作
です。
ある歯車が出力軸に固定されると、
↓
歯車対
↓
出力軸
という動力経路が成立します。
これによって車輪にトルクが伝わります。
シンクロとは何か
ここで登場するのが シンクロナイザー(シンクロ) です。
シンクロとは、
出力軸と同心円上で空転している歯車と出力軸の回転数を一致させる仕組み
です。
歯車の回転数と出力軸の回転数が一致していない状態で歯車を固定しようとすると、歯が衝突してギヤ鳴りが起きます。
そこでシンクロは摩擦を利用して両者の回転数を一致させ、その後に歯車を出力軸へ固定できるようにします。
ドッグクラッチとの関係
歯車を出力軸に固定する仕組み自体は ドッグクラッチ と呼ばれます。
ドッグ歯とは歯車の側面の円周上に設けられた突起歯であり、スリーブと噛み合うことで歯車を出力軸に固定します。
一般的なMTでは、このドッグクラッチの前にシンクロナイザーがあり、回転数を一致させてから噛み合う構造になっています。
一方、シンクロを持たずドッグクラッチのみで歯車を固定する変速機は ドッグミッション と呼ばれます。
まとめ
常時噛合とは、
カウンターシャフトの歯車と出力軸側の歯車が常に噛み合っている構造
を指します。
ただし出力軸側の歯車は出力軸には固定されていないため、ニュートラルでは歯車が回転していても出力軸には動力が伝わりません。
ギヤチェンジとは、
出力軸と同心円上にある歯車のうち一つを出力軸に固定する操作
なのです。
この構造を理解すると、ブリッピングやヒールアンドトウといったドライビングテクニックの意味も、単なる操作ではなく 機械的必然性のある操作 として理解できるようになります。
