ボーティングやセイリングでは、何かを切りたい場面が思いのほか頻繁にあります。
太さもさまざまなロープを切る。釣り糸を切る。結束バンドを切る。梱包材を開ける。テープを切る。シートやビニールを加工する。ちょっとした艤装作業をする。
そのため、船には何らかの刃物を載せておくと非常に便利です。
私自身、いくつかのナイフやハサミを船に積んでいますが、実際に使う機会が多いのは、意外にもマリン用品として売られている特殊なナイフではありません。
引っ越し業者や現場作業の人が使っているような、握りが太く、少々乱暴に扱っても平気なカッターナイフです。
研ぎながら使い続けることを前提とした刃物や、出刃包丁のように先端が大きく尖った刃物は、私は船上には持ち込みません。
カッターナイフの強みは、切れ味を簡単に取り戻せること
船で使う刃物には、どうしても切れ味の低下がつきまといます。
ロープだけを丁寧に切っているわけではありません。段ボールを開けたり、ビニールを切ったり、粘着テープを切ったり、ときには汚れたものを相手にしたりします。
こうした用途では、一つの刃物を研ぎながら長く使い続けるより、切れ味が落ちたら刃を交換できる道具のほうが扱いやすいと感じます。
その点、カッターナイフは非常に優秀です。
替え刃は容易に入手でき、刃先が傷んだら折って新しい部分を出すタイプもあれば、刃そのものを交換するタイプもあります。
刃を必要な長さだけ出して使えることも便利です。
薄いものを切るなら刃をわずかに出し、少し厚みのあるものなら必要に応じて長く出す。普通のナイフにはない使い方ができます。
切れ味が悪くなれば、新しい刃にする。
船上では、この単純さがかなり大きな利点になります。
片手で操作できるものと、しっかり固定できるものを使い分ける
カッターナイフにもいろいろな形式があります。
レバーやスライダーを親指で動かし、片手で刃を出し入れできるものがあります。小型の製品では特によく見られる方式です。
一方で、刃の出し入れや固定のためにネジを締めたり緩めたりするタイプもあります。
こちらは操作に両手が必要になることがありますが、刃をしっかり固定して使える製品があります。
船上では、作業対象を押さえるために片手がふさがることも多く、刃の出し入れまで片手でできることには実用上の利点があります。
その一方で、力をかけて切りたい場面では、刃をしっかり固定できる頑丈なものが使いやすい。
そのため私は、一種類ですべてを済ませようとは考えていません。
片手で素早く操作できるもの、太いグリップを持つ頑丈なものなど、性格の異なるカッターナイフを数本船に載せ、作業に応じて使い分けています。
船の場合、「最高の一本」を探すより、それぞれ性格の違う廉価な道具を数本置いておくほうが、実際には役に立つ場面が多いように思います。
海の近くでは、使っていなくても刃が錆びる
船に刃物を置いていて気になるのが錆です。
海水を直接かぶった覚えがなくても、しばらく船内に置いておくと、カッターナイフの刃にうっすら錆が浮いていることがあります。
海上では飛沫だけでなく、塩分を含んだ湿気や細かな塩の粒子が船内へ入り込みます。
そのため、「濡らしていないから大丈夫」とは考えず、刃物についても、ときどき塩抜きをするつもりで扱っています。
私は必要に応じて真水で塩分を落とします。場合によっては桶にためた真水に浸け、その後ブロワーで隙間に残った水分までできるだけ吹き飛ばし、風通しのよい日陰で十分に乾かします。
ところで、ブロワーはボーティングにおいて非常に便利な道具です。これについては、機会を設けて別の記事を書きたいと思います。
船で使うギアについては、海水そのものを避けること以上に、付着した塩分を残さないことが重要だと感じています。
もっとも、カッターナイフの場合、刃そのものは消耗品です。
錆が進んだら無理に復活させようとせず、交換してしまえば済みます。
これも、船上用の刃物として扱いやすい理由の一つです。
ハサミも用途別に何本か置いておく
船では、カッターナイフだけですべてを切る必要もありません。
私は、雑に物を切るためのハサミと、糸や細いものを切るためのハサミも船に積んでいます。
例えば、梱包材やビニール、テープ類なら、多少荒っぽく使えるハサミが便利です。
一方、釣り糸などの細いものを切るときには、刃先の細かなハサミのほうが扱いやすい場合があります。
つまり、
カッターナイフ
頑丈なハサミ
細かなものを切るハサミ
という程度に用途を分けておくだけでも、船上で行う「切る」という作業のかなりの範囲をカバーできます。
刃物は、普段はそれほど意識しないものの、ないと困る場面が突然やってくる道具でもあります。
使用頻度だけを考えると目立たない装備ですが、船に積んでおく価値は高いと思います。
太く硬いロープには波刃のナイフが役立つこともある
通常の船上作業であれば、カッターナイフとハサミでかなりの範囲をこなせます。
ただし、太く硬いロープを切るとなると、少し事情が変わります。
特にテンションの緩い太いロープは、直線的な刃を押し当てるだけでは切りにくいことがあります。
そうした場合には、のこぎりのような波型の刃を持つナイフや、農作業で使われる鎌のように湾曲した刃物が役立つことがあります。
刃を滑らせながら繊維を少しずつ捉えて切れるためです。
とはいえ、私の使い方では常に必要になる道具ではありません。
あれば助かることはありますが、通常の船上作業なら他の刃物でもどうにかなります。
したがって私は、こうした刃物を必須装備というより、用途のはっきりした補助的な道具として考えています。
日常作業用の刃物と、緊急時の刃物は分けて考える
ここまで書いてきたカッターナイフは、基本的には日常的な船上作業に使うための刃物です。
荷物を開ける、艤装品を加工する、ロープを処理する、といった作業を想定しています。
一方、セイリングやボーティングでは、身体や艤装にロープやラインが絡み、それを緊急に切断しなければならない可能性もあります。
これは日常作業とは性格が異なります。
そのため、緊急時に素早く取り出し、安全にラインを切断するための刃物については、普段使いのカッターナイフとは別の装備として考えたほうがよいと思います。
マリンナイフやダイビングナイフには、こうした用途を想定して作られた製品があります。
この記事で「カッターナイフが船に合う」と書いているのは、それらの道具が不要という意味ではありません。
日常的に行う雑多な作業用の刃物として考えると、頑丈なカッターナイフが非常に使いやすい、という話です。
マリン用ナイフより、作業用カッターが合う場面も多い
ボーティングやセイリングでは、スキューバダイビング用品が意外によく役立ちます。
メッシュバッグなどはその典型です。
海水に濡れることを前提として作られ、洗って乾かすことを繰り返す道具には、船上でも使いやすいものがたくさんあります。
しかし、日常作業用の刃物については、私は少し違う印象を持っています。
いわゆるダイビングナイフやマリンナイフには、それぞれ本来の用途があります。
水中で身体や器材に絡んだラインを切る、といった場面を想定した製品もあります。
一方、ボートの上で日常的に行う作業はもっと雑多です。
荷物を開ける。ロープの端を処理する。結束バンドを切る。テープを切る。ビニールを切る。簡単な工作をする。
こうした雑多な仕事を繰り返す道具として考えると、引っ越し業者や現場作業者が使うような、握りの太い頑丈なカッターナイフが実によく働きます。
握りやすく、多少汚れても気にならず、刃が悪くなれば交換できます。
高価な道具として大切に扱う必要もありません。
私は、この「気兼ねなく使える」という性質を、船の道具としてかなり重要視しています。
海に落とすことだってあります。
錆びることもあります。
汚れることもあります。
そうした環境で遠慮なく使い、傷んだら部品を交換し、必要なら本体そのものを入れ替える。
船上の日常作業には、そういう道具のほうが向いている場合があります。
船のギアは、華やかさより仕事をしてくれることが大切
船用品というと、防水、防錆、マリン仕様といった言葉に目が向きます。
もちろん、それらには意味があります。
ただ実際に船を使っていると、船専用品ではない普通の道具のほうが適していることもあります。
カッターナイフは、その典型かもしれません。
頑丈で握りやすい。よく切れる。切れなくなったら刃を交換できる。用途に応じて複数本積んでおいても大きな負担にならない。
そして何より、必要になった瞬間に気兼ねなく使えます。
私はボーティングやセイリングのギアを考えるとき、その道具がどの分野向けの商品なのかよりも、船上で必要な仕事をきちんとこなしてくれるかを重視しています。
メッシュバッグなら、スキューバ用品がよく働きます。
そして日常作業用の刃物なら、引っ越し屋さんや現場作業者が使うような、太いグリップを持つ頑丈なカッターナイフがよく働きます。
船には、そういう少し無骨な道具が案外よく似合います。
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