海上のギア論・腕時計編|正確な時刻で次の一手を決める

人間の時間感覚は、何かに真剣に取り組んだり夢中になるほど不正確になります。

楽しいことに集中していると、時間は短く感じられます。機材の不具合や難しい作業に没頭すると、経過時間を把握する余裕がなくなります。短時間のつもりで始めたことに、予想以上の時間を使っている場合もあります。

一方、時刻は社会で共有されています。電車やバスの発車時刻、タクシーの配車、施設の営業時間、待ち合わせ、気象予報など、社会の多くの仕組みが同じ時刻を基準に動いています。

必要な場面で正確な時刻を確認できれば、まだ実行できる選択肢と、すでに諦めるべき選択肢を切り分けられます。

続行しても間に合うのか。
少し短縮すれば間に合うのか。
すぐに撤収する必要があるのか。

正確な時刻は、その後の選択肢の実現可能性を判断するための基準です。

そこで問題になるのが、海でどのような腕時計を使うかです。

海上では、時刻が航行と遊びの判断に直結する

ボートやヨットで海へ出ると、気象予報、自船位置、現在時刻を関連づけて判断する必要があります。

気象予報は時間とともに変化し、自船位置も航行によって変わります。現在時刻を取り違えると、予報された風、雨、波、気温の変化を、現在の状況へ正しく重ねられません。

風が強まるのはまだ先だと思っていたら、すでにその時間帯に入っていた。雨雲が通過するまで余裕があると思っていたら、帰港中に遭遇した。そのような判断のずれは避けたいものです。

正確な時刻が必要になるのは、気象判断だけではありません。

機材や艤装に問題が起きると、目の前の作業に集中します。一息ついた時点で正確な時刻が分かれば、その場で解決を続けるのか、応急処置にとどめて帰港するのかを判断できます。

海水浴、シュノーケリング、カヤック、水中スクーターなどの遊びでも同じです。夢中になっている間は、自分の時間感覚を判断基準にできません。

現在時刻を確認し、遊びを続けるのか、短縮するのか、船へ戻るのかを決めます。

海での時間管理は、帰港後まで続く

海で使える時間は、帰港時刻だけでは決まりません。

帰港後には、係留、荷下ろし、洗艇、道具の真水洗い、着替えなどの作業が続きます。その後に公共交通機関を利用するなら、電車やバスの発車時刻があります。タクシーを利用する場合には、配車を依頼する時刻も考える必要があります。

海上で長く遊んだ分だけ、帰港後の作業時間は圧迫されます。少し早く切り上げれば、片付けを急がずに済み、予定していた交通機関にも間に合います。

海上での航行や遊びと、帰港後の予定は、同じ一日の中にあります。

腕時計で正確な時刻を確認すれば、その日の行程が現在どこまで進んでいるのかを把握できます。海上の安全だけでなく、帰港後に残された選択肢を守るためにも、現在時刻は重要です。

船を離れても、正確な時刻を確認できる

私は錨泊中に海水浴やシュノーケリングを行い、目的地によってはカヤックや水中スクーターも使います。

その間は船上の計器から離れ、スマートフォンも船に残します。水中ではスマートフォンの通信や測位が実用にならず、時刻確認のためだけに海中へ持ち込む意味もありません。

防水腕時計を着けていれば、水中や海面でも、船を離れてからの経過時間、帰船予定時刻、帰港を始める時刻までの残り時間、予報された気象変化までの残り時間を確認できます。

安全に帰港する時刻から逆算して遊ぶには、現在時刻を把握する必要があります。

必要な瞬間に、腕を見るだけで正確な時刻が分かる。この単純さが、腕時計を使う理由です。

海上用腕時計に求める条件

以上の使用環境から、私が海上用腕時計に求める条件は次のようになります。

  • 正確な時刻を表示する
  • 日付と曜日を常時表示する
  • デジタルかアナログかを問わず、老眼でも裸眼で一目で読み取れる
  • 強い日差しの下でも、夕方や薄暗い船内でも読める
  • 画面切り替えやボタン操作をしなくても、必要な情報を確認できる
  • 太陽光充電式である
  • 電波受信によって時刻を補正する
  • 表示は十分に大きく、本体は薄く軽く、傷に強い風防を備える
  • 海水浴や素潜りに対応できる防水性がある
  • 船上で多少ぶつけても使い続けられる耐衝撃性と耐傷性がある
  • 信頼できるメーカーの製品である
  • 海中で紛失したり、船上で壊したりしても、心理的・経済的に長く引きずらず、同等品へ買い替えられる価格帯である

華美な装飾性や、スマートウォッチ的な多機能性は、この条件に入りません。

通知、通話、決済、歩数、心拍数、音楽再生などは、必要に応じて別のデバイスに任せます。気象予報は気象情報を扱う機器で確認し、自船位置は航海用の機器で確認します。

腕時計で確認したいのは、正確な時刻、日付、曜日です。

理想は、出港後に一度も操作する必要がない時計です。腕を上げれば必要な情報が見え、遊びや作業に集中していても、すぐに続行、短縮、撤収を判断できます。

太陽光充電と電波受信は、表示項目を増やすための機能ではありません。正確な時刻表示を維持し、充電や時刻合わせに関する管理の手間を減らすための機能です。

電波を受信できる環境では、時刻が自動的に補正されます。沖合などで受信できない間も、通常のクオーツ時計として動き続けます。海上で常時電波を受信することより、出港前を含む日常の中で時刻が補正され、正確な状態で使用を始められることに価値があります。

表示には十分な大きさが必要ですが、時計全体が大きく厚くなることは望んでいません。厚い時計はレインウェア、防寒着、ジャケット、シャツの着脱時に引っかかります。重い時計は、長時間装着したときに手首への負担となり、シュノーケリングや海水浴では腕の動きにも影響します。

材質は、できればチタンを選びます。金属製のケースとバンドを備えながら、時計全体を軽くできるからです。船上では腕時計を艇体、手すり、クリート、金具、ラダーなどへぶつけるため、表面硬化処理されたケースとバンド、傷に強い風防も役立ちます。

海中で紛失した場合には、安全を優先して諦められることも重要です。時計を惜しんで危険な回収行動を選びたくなる製品は、海上用には選びません。衝突や浸水で故障した場合にも、心理的なダメージが大きすぎず、必要なら同等品へ買い替えられる価格帯が適しています。

光発電時計も永続するわけではありません。二次電池、機械部品、潤滑油、防水用パッキンは経年変化し、いずれ修理や更新の時期が来ます。

そのため、海上用腕時計に「一生モノ」としての価値は求めません。その時代に入手できる製品の中から、自分の用途に最も合うものを選びます。技術が進歩し、より適した製品が登場すれば、必要に応じて更新します。

現在の主時計はCITIZEN PROMASTER AT6085-50E

現在、私が主時計として使っているのは、CITIZEN PROMASTER LANDシリーズのAT6085-50Eです。

船上のベストウオッチ

ソーラー充電式の電波時計で、ケースとバンドはチタン製です。表面硬化処理とサファイアガラスを備え、比較的薄く、軽量で、傷にも強い構成です。

日付と曜日の表示、20気圧防水、夜光も備えています。

海上で使う時計を、海向けのシリーズから選ぶ必要はありません。必要な条件を整理し、それに合う製品を探した結果、LANDシリーズのAT6085-50Eを使っています。

AT6085-50Eは20気圧防水です。メーカーの区分では、一般水泳、素潜り、マリンスポーツに使用できます。私が行う海水浴、シュノーケリング、水深数メートルでの船底観察も、この範囲に入ります。スクーバ潜水には使いません。

防水性能は時間とともに低下します。海中で継続的に使用するなら、定期的な防水検査も必要です。水中では、りゅうずやボタンを操作しません。

私が使用している個体では、水深5メートル程度のスキンダイビングを含め、これまで浸水は起きていません。今後もメーカーの使用範囲を守り、必要な点検を行いながら使用します。

ダイバーズウォッチより薄さと軽さを優先した

本格的なダイバーズウォッチには、耐圧構造、大型ケース、回転ベゼルを備えた製品が多くあります。私の細い腕には、大きく重く感じる製品も少なくありません。

私が腕時計を使用する時間の大部分は、海中ではなく、操船中とデッキ作業中です。

そのため、現在の使用状況では、高い潜水性能を備えた大型時計より、一日中装着できる薄さと軽さを優先しています。

AT6085-50Eは、本格的なダイバーズウォッチではありません。一方で、私が行う海水浴、シュノーケリング、数メートル程度の素潜りには対応でき、操船中やデッキ作業中にも邪魔になりにくい時計です。

現時点では、視認性、正確さ、軽さ、薄さ、防水性をこれほど高い水準で両立した時計を、ほかに見つけられていません。

故障や紛失によって買い替えることになっても、現在の商品ラインナップのままなら、再び同じ時計を選ぶと思います。

サブ時計はバッグの取っ手に着けている

サブ時計には、カシオのフルメタルG-SHOCKを使っています。

主時計の表示に疑問が生じた場合に、時刻を照合するためのバックアップです。

私が使っているフルメタルG-SHOCKは、頑健さという点では申し分ありません。一方で、私には大きく、厚く、重いため、長時間腕に装着する時計としては向きませんでした。

加えて、風防が平面で、液晶表示が文字盤の奥まった位置にあるため、光の当たり方や見る角度によって表示を読み取りにくい点にも不満がありました。

そこで、耐衝撃性を生かし、バッグの取っ手に固定しています。

バッグに着ける場合、手首への重さや袖口との干渉は問題になりません。船上で多少ぶつけても気にならず、必要なときに主時計や船内計器の時刻と照合できます。

腕には、薄く軽く、裸眼で読みやすい時計を着けます。バッグには、大きく重くても頑健な時計を取り付けます。

二本の時計は、使用場所と役割が異なります。

現時点ではAT6085-50Eが最も用途に合っている

人間の時間感覚は、遊びや作業に集中するほど当てにならなくなります。

正確な時刻を確認すれば、現在の気象、海況、自船位置と照合し、行動の続行、短縮、撤収を決められます。帰港後の片付け、公共交通機関の利用、タクシーの配車まで含めて、その日の残り時間も組み立てられます。

私の使用環境では、時刻、日付、曜日を裸眼ですぐ確認でき、操作を必要とせず、軽く薄く、海水浴や素潜りにも対応できる腕時計が適しています。

その条件を現時点で最もよく満たしているのが、CITIZEN PROMASTER AT6085-50Eです。

海上用腕時計は、装飾品や多機能端末としてではなく、自分の時間感覚を正確な時刻で補正し、その後の行動を決めるための道具として選んでいます。


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▶筆者紹介は『理屈コネ太郎の知ったか自慢|35歳で医師となり定年後は趣味と学びに邁進』

作成者: 理屈コネ太郎

元消化器内視鏡医・産業医。現在は社会・人間行動・構造分析をテーマに執筆活動を行う。定年退職後はヨット・ボート・クルマなど趣味と構造研究の日々を過ごす。

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