結論から言えば、やや遠方のサーキットに通うならDAT、形式的価値を重視する環境なら6MTが合理的です。
では、なぜそのような結論になるのでしょうか。
その理由を順に整理していきます。
GRヤリスを買うと決めた瞬間、多くの購入検討者が次に迷うのは6MTかDATかです。
議論はたいてい、「どちらが速いか」「どちらが楽しいか」という方向に流れます。
私は、前期型GRヤリス6MTと後期型GRヤリス8速DATの2台で、サーキットとワインディングを実際に走らせている立場からこの記事を書いています。
両方でタイムを計測し、両方で公道も走ってきました。
その経験から言えるのは、サーキットの実走において決定的な優劣は出ないという事実です。
サーキットのタイムは、トランスミッション形式よりもドライバー要因に強く依存します。
楽しさについても同様です。
6MTとDATは体験の質が異なりますが、どちらも十分に面白いと私は感じています。
つまり、速さと楽しさは、購入の判断を確定させる根拠になりにくいと言えます。
しかし、購入の場面ではどちらか一方を選ばなければなりません。
「どちらでもよい」という状態は、決断が完了した状態ではありません。
そのため、性能や楽しさとは別の判断軸が必要になります。
本記事の目的は、6MTとDATの優劣を決めることではなく、購入検討者が判断するための基準を提示することです。
Contents
第1章|6MTとDATの性能差という前提
前期型GRヤリス6MTと後期型GRヤリス8速DATのあいだに、機構差は存在します。
6MTは、変速操作を運転者が直接行う構造です。
DATは、変速制御を車両側が行う構造です。
構造は異なりますが、サーキット走行という条件下では実走性能に決定的な差は現れません。
加減速の精度、ブレーキングの安定性、立ち上がりのトラクション管理は、トランスミッション形式よりもドライバーの入力精度に依存します。
したがって、「どちらが速いか」という問いは、合理的な分岐点になりにくいと言えます。
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第2章|操作感という体験の差
6MTは、クラッチ操作とシフト操作が身体動作として介在します。
この構造では、操作と結果の因果が身体を経由するため、運転感覚はよりダイレクトに感じられます。
DATは、変速タイミングの最適化を制御系が担います。
この構造では、変速操作に関する身体的関与は相対的に減少します。
その結果、6MTに比べれば、操作感はやや間接的に感じられます。
しかしDATでは変速操作から解放された分、
ドライバーは荷重移動やライン取りに集中できる愉しみがあります。
しかし、この差は優劣ではありません。
体験の質が異なるだけです。
そのため、「どちらが楽しいか」という問いも決定的な判断軸にはなりません。
第3章|決断は必ず求められる
速さでも決まらない。
楽しさでも決まらない。
それでも、購入の場面ではどちらか一方を選ばなければなりません。
ディーラーで「どちらにされますか」と問われたとき、「どちらでもよい」という回答では契約は成立しません。
ここで初めて、性能や体験とは別の次元の問題が浮かび上がります。
選択を確定させる軸が不足しているという問題です。
第4章|技能が可視化される環境
サーキットにはタイムという客観的指標が存在します。
タイムという数値は、クルマを速く走らせるという運転技能を外部から検証可能な形で示します。
技能が数値で可視化される環境では、トランスミッション形式は評価の中心になりません。
6MTで速ければ評価されます。
DATで速ければ評価されます。
この環境にいる場合、技能の証明は形式ではなく結果で行われます。
この条件下では、サーキットまでの往復移動や渋滞環境を含む総合負荷を考慮すると、DATは合理的選択となり得ます。
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第5章|技能が可視化されない環境
一方、客観的な指標を共有しない環境も存在します。
その環境では、評価は形式的な記号に依存しやすくなります。
一部の自動車知識層は、スポーツカーにおいてMTを優位な記号とみなす価値観を保持しています。
この価値観の中では、MTは技能や本気度の象徴として扱われます。
この環境にいる場合、DATを選択すると説明が必要になることがあります。
その説明を負担と感じるかどうかは個人差があります。
このような環境では、MTは摩擦の少ない選択になり得ます。
第6章|合理的分岐点
ここまでを整理します。
・速さは決定的な差にならない。
・楽しさも優劣を付けられない。
・それでも購入では選択を確定させる必要がある。
・評価環境によって形式の意味は変化する。
したがって、合理的な問いは次の二つです。
あなたは、自分の運転技能を客観的に可視化できる環境にいますか。
あなたは、形式的記号による評価が支配的な環境にいますか。
前者であれば、DATは合理的選択になり得ます。
後者であれば、MTは摩擦の少ない選択になり得ます。
結論
GRヤリスの6MTとDATの選択は、単純な性能比較では決まりません。
速さでも楽しさでも決定できないからこそ、判断軸が必要になります。
選択を分岐させるのは、あなたが置かれている評価環境です。
どちらが正しいかという問題ではありません。
どの環境にいる自分にとって合理的か、という問題です。
